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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

101・5時間目 非日常に囲まれながら

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 ここはどこだろう。

 僕は辺り一面が暗闇に包まれた場所でいた。

 体が浮遊感に包まれて、どこにいるのかわからない。

 しかし、突然現れた眩しい光に思わず、目をつむり、その残光が消えたのを確認してから、僕は、目を開けた。

 気が付くと、僕は見覚えがある校舎にいた。

 古い木造建築のその場所は、僕らの思い出の場所。

 前の席で行儀悪く座っているのは、友人の睡蓮。

 後ろ姿しか見えないが、背格好は今とあまり変わっていない。

 そして、隣の席に座っているのは、今とは少し髪が短い心結みゆうだった。

 クラスメイトらしき誰かと談笑をしているらしく、横の僕には気が付いていない。

 僕は、違和感を覚え、同時にこれが夢であることをさとった。

 睡蓮は同級生だが、心結はひとつ上の先輩。

 どう考えても、僕らと同じクラスにいるのは不自然だ。

 しかし、彼女の友人は彼女がいることを当たり前のように認識している。

 これは一体なんだろうか。

 何気なく、机を見てみると、そこには謎のマークがあった。

 形としてはなにかの花のような形をしている。

 一体これは。

 僕はその正体を考える前にその意識を手放した。

 なにかが鳴っている音がする。

 その音源に僕は腕を伸ばし、それ──スマホを掴みとった。

 その着信原は、睡蓮。

「……もしもし」

 僕は不機嫌極まりない声でそう言うと、

『よう、おはようさん』

 睡蓮はいつも通りのダルそうな声でそう挨拶をした。

 僕はその声と共に布団からでて、キッチンへ歩き、水を飲む。

『今日は高橋ってヤツの文化祭があるンだよ。お前もどうだ? 来ないか?』

「……高橋? あぁ、バイトの。別に暇だし、いいけど」

 今日はバイトの予定はないし、別に生きていてもやることはないから一日中寝るつもりだった。

『そうか。ならこの住所通りに来てくれ』

 そう睡蓮が言った数秒後、スマホが震えた。

 通話画面からメッセージアプリに切り替えると、睡蓮から高橋君が通っている高校までの道のりと住所が記載されていた。

「分かったよ。ちなみに、何時から?」

『アァ? 今から行け。それなら昼頃には間に合うだろ。……おう、おはよう、舞花』

 睡蓮の言葉に驚きを隠せない。

 ちょっと待て、もう行かなきゃいけないの?

「えっ、ちょっと、嘘でしょ。僕なにも準備してな──」

『わりィ、舞花が起きた。今から朝メシ作るから切るわ。じゃ』

 僕の必死の抵抗もむなしく、通話はそこで終了した。

 あぁ……。嘘でしょ。

 こんなことってある? 僕こんなに急いで準備したの初めてだけど。

 いそいそと年相応の服に着替えて、寝癖でボッサボサの髪を整えて、昨夜の残り物であるポテトサラダを食べてから、僕は急いで家を出た。

 なんでこんなことになったのか、少しばかり焦っているけど、この非日常の現実に少し楽しんでいる自分がいる。

 確かにここ最近はずっとそうだ。

 バイトもそう、疲れもそう、少しばかり気取ったおしゃれもそうだ。

 どれも僕にとって非日常で疲れることがあるけど、やっぱり楽しさがある。

 僕は、この非日常を手がかりに、新たな非日常を求めて、歩きだした。
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