上 下
177 / 244
第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

97・5時間目 配役②

しおりを挟む
 主人公であるオオカミ少年の役は、裕太となった。

 拓也はヒロインを軽蔑するクラスの男子役としてでたいと申し出たが、誰もそれに反論はなかったため、拓也はその役に決定した。

 ちなみに、役決めを終えた瞬間、拓也は恋人である咲希とイチャイチャしてた。バカップルめ。

「次はヒロインだがー、誰にするー? んー、三石ー。お前いっとくかー?」

 担任からの圧力勧誘を受けた遼太郎は、それに応じた。

 あの人、それはよくないな。まぁ、この魔法少女役は男子のなかで中性的な見た目と声をしている遼太郎は適任と言えるだろう。

 ちなみに、魔法少女であるヒロインは、地味な女子高校生。

 ある日、魔法少女になるシャーペンを心優しい人しか見えない妖精からもらったというのが、原作の設定だ。

 しかも、そのシャーペンは変身後に杖になるという中々リアリティーのある設定だ。

「俺がヒロインかー。プリ○ュアみたいな感じだよな! あこがれていたんだよなー!」

 まぁ、分からんでもない。

 俺も昔は、某有名ライダーにあこがれていた時期があったしな。

 ところで、名前ちゃんと伏せててよかった。

 最近のウェブ小説はこういうの厳しいから気を付けないとな。

 まぁ、そんな茶番はとにかく、次は主人公の育て親である祖父役選びだ。

「だれかやりたい人はいるかー? 挙手がなかったら俺が推薦するぞー」

 残念ながら、ヒロイン役に続いていなかった。

 まぁ、誰がじいちゃん役したいんだって話だよな。

 まぁ、俺は戦いに巻き込まれる名も無きサラリーマンA役で──

「高橋ー、どうだー?」

 はぁ!?

 裕太と遼太郎を除いた役者チーム全員が俺を見た。

 二人は、ニヤニヤと俺を見ている。こいつら、最初から俺にこの役をさせる気だったな!

 まぁ、別にじじいの役でも大丈夫だろ。なんで俺なのかは分からないけどさ。

「高橋は、結構貫禄かんろくのある見た目してるからなー」

 藤木は、ニヤニヤと笑いながら、俺にそう言った。

 あー、老け顔ですみませんねぇ? つーか、この担任、結構失礼だな。

「んじゃ、残りのやつらで配役決めてくかー」

 藤木は、推薦で役を全て決めていく。

 中には、それ失礼すぎるだろと思う推薦理由もあったが、さすがは、校内でも指折りの頼りにされる教師。

 観察眼が鋭いのか、生徒ひとりひとりを丁寧に見ている証拠なのか、その生徒の性格を全て知っていた。

 逆にここまでくると保護者のレベルである。

 俺を含めた13人の配役が決まり、放課後までに印刷していたという台本を渡され、明日からの練習スケジュールの説明をされた。

「練習は明日からやっていくぞー、時間がないからよー。とりあえず、小物作成チームが衣装を作るまでは適当なTシャツかなんかを着て練習なー。忘れたら体操服でやらすからなー」

 適当な返事をかえしたあと、俺たちはそこで解散となった。

 ──

「いやぁ、明日からの楽しみだねぇ!」

 遼太郎がいつもよりテンションを高めで言う。

 確かに役が決まったときも喜んでたもんな。魔法少女、絶対に似合いそう。

「明日から練習かー、台本丸覚えしなきゃねー」

 劇をやったことがないけど、20分くらいの長さの劇だから、主人公やヒロインは高校生が覚えるにしては、かなり量はあるのだろう。

 大変だなぁ。

「敦志は終盤頑張らないとね」

「そうだな」

 俺の役は主に終盤がメインだ。

 大事な仕事、きちんとしないとな!

 遼太郎の言う通り、明日の練習が楽しみだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。

夜兎ましろ
青春
 高校入学から約半年が経ったある日。  俺たちのクラスに転入生がやってきたのだが、その転入生は俺――雪村翔(ゆきむら しょう)が幼い頃に結婚を誓い合ったロシア人ハーフの美少女だった……!?

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

かずのこ牧場→三人娘

パピコ吉田
青春
三人娘のドタバタ青春ストーリー。 ・内容 経営不振が続く谷藤牧場を建て直す為に奮闘中の美留來。 ある日、作業中の美留來の元に幼馴染の一人のびす子がやって来る。 びす子が言うには都会で頑張ってるはずのもう一人の幼馴染の花音が帰って来ると連絡が来たとの事だった。 いつも学生時代から三人で集まっていた蔵前カフェで花音と会う為に仕事を終わらせびす子と向かうと・・。

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。 なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。 銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。 時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。 【概要】 主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。 現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。

【完結】僕は君を思い出すことができない

朱村びすりん
青春
「久しぶり!」  高校の入学式当日。隣の席に座る見知らぬ女子に、突然声をかけられた。  どうして君は、僕のことを覚えているの……?  心の中で、たしかに残り続ける幼い頃の思い出。君たちと交わした、大切な約束。海のような、美しいメロディ。  思い出を取り戻すのか。生きることを選ぶのか。迷う必要なんてないはずなのに。  僕はその答えに、悩んでしまっていた── 「いま」を懸命に生きる、少年少女の青春ストーリー。 ■素敵なイラストはみつ葉さまにかいていただきました! ありがとうございます!

アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための10の技

MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。 私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。 すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。 そんな方に言いたいです。 アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。 あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。 アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。 書いたまま放ったらかしではいけません。 自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。

怖い話 が好きなヤマダさん

RERA
ホラー
怖い話集です。上から順番通りに読むのがオススメです。

処理中です...