上 下
174 / 244
第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

96時間目 阿鼻叫喚と猪突猛進の試験結果

しおりを挟む
 テスト明けの週の初め、朝のホームルームの時間帯にひとつ、またひとつと、教室から阿鼻叫喚あびきょうかんのようなざわめきが聞こえてきた。

 上の階──一年生のクラス──からドンドンと床に地団駄じだんだを踏む音が聞こえてきた。

 結構デカイ音だ。

「……一年生は今年も、元気だなぁ……! さて、次は、お前らの番だー」

 担任である藤木ふじきが、ニヤリと邪悪に笑いながら、教卓からだしたのは、テストの答案用紙。

 もちろん、それらは採点されており、赤で描かれた数字が今後の命運を物語っている。

「んじゃ、さっそくやっていくぞー」

 藤木は、一人ずつ名前を呼んで、答案用紙を返していく。

 ヤバイヤバイと笑いながら話し合うやつもいれば、小さくガッツポーズをし、よい点数なのだろうとひとめで分かるやつもいれば、すべてを諦めて、机に突っ伏しているやつもいる。

「高橋ー! おー……、頑張ったじゃねぇか」

 いちいちコメント付けるんじゃねぇよ!

 好評的なコメントだから、高得点なのは間違いないけど、クラスメイトに点数がバレるのは嫌だった。

 面倒くさいしな。

 ちなみに、俺の点数は、国語が86点、数学が89点、英語が91点、化学が81点、現代社会が79点だった。ちなみに、順位は500人以上いるこの学年の中の34位だった。これより上のやつがいるのかよ。バケモンじゃねぇか。

 しかし、かなりの高得点だったのは間違いない。俺は、自分の目を疑い、二回、解答用紙を見返した。

 努力は結ばれたのだと証明された。

 裕太が呼ばれ、遼太郎も呼ばれたが、裕太はニコニコと、遼太郎は焦った顔で俺の机の前に来た。

「おう、裕太はその調子だと学年一位か」

「そうだね。敦志はもしかして、結構取れた感じ?」

「あぁ、久しぶりにこんな点数を取ったかもな」

 ちなみに、俺がこんな高得点をとったのは、中学一年の頃の一学期の中間テストのときだけだった。

 それ以外?

 言わせんな、ヤバイ点数ばっかりだよ。

 ……それはさておき。

 遼太郎の不安そうな表情は、分かる。

 テストが終わったとき、英語の点数がヤバイと言っていたからな。

「遼太郎、ちなみにいくらだったんだ?」

 俺が聞くと、遼太郎は「はい……」と力なく答案用紙を渡した。

 数学、国語共に俺より点数が高く、化学や現代社会もそれなりの点数をだしていたが、いかんせん、英語だけが、極端な点数だった。

「……ギリギリ赤点じゃなくてよかったな」

「……うん……、ヤバイねぇ……」

 遼太郎は、笑い事じゃないと言わんばかりの顔をしていた。

 ちなみに、俺たちの学校は30点以下を取ると赤点になる。

 長期休暇の際に、補習という恐ろしい時間が待っているのだ。

 うん、ふざけんな。

 まぁ、そんなことはさておき、藤木は、俺たちをなだめて、学級委員長である裕太に会話のバトンを渡した。

 教卓の前に立った裕太は、ニッコリと笑顔で言う。

「さて、みんな、もうすぐ文化祭だね! 今年の催し物を決めたいと思います!」

 とうとう文化祭か。

 俺たちにとって、二年目の文化祭。

 いったいどうなるんだろうか。

 今から、楽しみだな。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」  クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。  だが、みんなは彼と楽しそうに話している。  いや、この人、誰なんですか――っ!?  スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。 「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」 「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」 「同窓会なのに……?」

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

坊主女子:髪フェチ男子短編集【短編集】

S.H.L
青春
髪フェチの男性に影響された女の子のストーリーの短編集

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

檸檬色に染まる泉

鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性” 女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。 雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が…… 手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が…… いま……私の目の前ににいる。 奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……

アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための10の技

MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。 私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。 すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。 そんな方に言いたいです。 アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。 あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。 アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。 書いたまま放ったらかしではいけません。 自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。

処理中です...