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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─
94・5時間目 少年たちのやり取り
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僕は、すれ違う数々の生徒を見つめながら、自分のクラスまで早足で階段をのぼる。
ワハハと友人たちと談笑しながら、歩く、上級生たちや、テスト期間なんてお構い無しだと言わんばかりの朝練を終えた陸上部の先輩や僕と同じ色の上履きを履いた生徒たちが僕なんかよりも、駆け足で階段をのぼっていった。
僕は、今日の試験のために学年一位の友人や、席替えで席が後ろになったことから、仲良くなった友人たちと勉強をしていた。
特に、学年一位の彼には、かなりお世話になった。
眼鏡を外すと、イケメンな顔が脳内に思い浮かんだ。
この夏は、きっと、僕史上一番充実したと思う。
中学の頃は、部活動や色々なことがあったから、あまり、同級生と外部で遊ぶ時間がなかった。
厳密に言えば、周りが避けていたからかもしれないけど、今は、ちゃんとそれらを反省し、見直したから、こうして、ちゃんとした『普通』の生活を送れるようになっている。
これが、僕が求めていた青春だなと思ったのは、一度や二度だけではなかった。
「おはよう、祐麻。あれ? こないだよりちょっと痩せたんじゃねぇ? ちゃんとメシ食ってるか?」
開閉一番、心配をしてくれたのは、先ほど言った席替えをきっかけに仲良くなった友人だ。
僕と同じくらいの身長に元テニス部の風格を思い出させる短髪。
彼の手には、スマホがあった。
画面には、彼が好きなキャラクターの育成画面がある。
一応、校内でのスマホ使用は特別な許可があるとき以外は禁止である。
「おはよう……。本当? 最近、ゲームのしすぎで付いていた筋肉が衰えたからかも……」
「そういや、野球部にはいってたもんな。ポジションはどこだっけ?」
ニヤニヤしながら、聞いてくる。
以前、彼にポジションを伝えたら、僕が一番弱いポジションについていたことを知っていたようで、それを何回もネタにされている。
ネタだと分かっているので、適当に返しているけど、昔はすべての言葉を真に受けてそれも出来なかったんだから、成長ってすごいと思う。
「ライパチのなにが悪いの……。ギリギリのメンバーだったから仕方ないでしょ……」
ライパチ──八番右翼手の略語だが、僕が所属していた野球部は部員が9人しか居なかったので、本当にギリギリだった。
下手だったが、確定でスタメン入りだったから、やるしかなかったんだ。
「……うるさいよ、バイトを無断欠勤からのバックレた人は誰だろうね……」
「だぁ──! なんだ? 聞こえなかった?」
「無断k──」
「ごめんて」
平謝り炸裂。
調子のいいやつめ。
でも、このやり取りが本当に楽しい。
僕らが、廊下を歩いて、自教室へ行くと、鍵が開いていることに気がつき、そのまま、中に入る。
普段なら、クラスのパリピや騒がしい人たちがいるけど、今日は、一人だけだった。
「おー、やっぱ、学年一位は違うなぁ」
友人が感心したように言う。
「おはよう。さすがだね」
学年一位の彼は、問題集をパタンと閉じてから、僕らに挨拶した。
「おはよ。別に少し早く起きたからちょっと来ただけだよ」
本当に謙虚な人間だと思う。
彼は、大切な友人でありながら、僕が成りたい理想の人物像を持っているのだ。
「祐麻は、いいよね」
彼は、眼鏡の奥に少しの不安と悲愴を混ぜながら、言う。
「確たる信念を持っていてそれを貫こうとしているからさ──」
僕は、この言葉を言われて、どう答えればいいか分からなかった。
信念というか自分のルールみたいなものだが、それは、生きやすくするために必要なもの。
傷つけた人達への償い。
自分のルールである《傷つけない・傷つかない》は今も。
彼の痛みと、彼女の涙と、幼馴染みで彼女の恋人である男の怒りを忘れないためのものだから。
僕は、もう、関わりを持ってくれている人を傷つけない。
「ありがとう」
そう、返した。
ワハハと友人たちと談笑しながら、歩く、上級生たちや、テスト期間なんてお構い無しだと言わんばかりの朝練を終えた陸上部の先輩や僕と同じ色の上履きを履いた生徒たちが僕なんかよりも、駆け足で階段をのぼっていった。
僕は、今日の試験のために学年一位の友人や、席替えで席が後ろになったことから、仲良くなった友人たちと勉強をしていた。
特に、学年一位の彼には、かなりお世話になった。
眼鏡を外すと、イケメンな顔が脳内に思い浮かんだ。
この夏は、きっと、僕史上一番充実したと思う。
中学の頃は、部活動や色々なことがあったから、あまり、同級生と外部で遊ぶ時間がなかった。
厳密に言えば、周りが避けていたからかもしれないけど、今は、ちゃんとそれらを反省し、見直したから、こうして、ちゃんとした『普通』の生活を送れるようになっている。
これが、僕が求めていた青春だなと思ったのは、一度や二度だけではなかった。
「おはよう、祐麻。あれ? こないだよりちょっと痩せたんじゃねぇ? ちゃんとメシ食ってるか?」
開閉一番、心配をしてくれたのは、先ほど言った席替えをきっかけに仲良くなった友人だ。
僕と同じくらいの身長に元テニス部の風格を思い出させる短髪。
彼の手には、スマホがあった。
画面には、彼が好きなキャラクターの育成画面がある。
一応、校内でのスマホ使用は特別な許可があるとき以外は禁止である。
「おはよう……。本当? 最近、ゲームのしすぎで付いていた筋肉が衰えたからかも……」
「そういや、野球部にはいってたもんな。ポジションはどこだっけ?」
ニヤニヤしながら、聞いてくる。
以前、彼にポジションを伝えたら、僕が一番弱いポジションについていたことを知っていたようで、それを何回もネタにされている。
ネタだと分かっているので、適当に返しているけど、昔はすべての言葉を真に受けてそれも出来なかったんだから、成長ってすごいと思う。
「ライパチのなにが悪いの……。ギリギリのメンバーだったから仕方ないでしょ……」
ライパチ──八番右翼手の略語だが、僕が所属していた野球部は部員が9人しか居なかったので、本当にギリギリだった。
下手だったが、確定でスタメン入りだったから、やるしかなかったんだ。
「……うるさいよ、バイトを無断欠勤からのバックレた人は誰だろうね……」
「だぁ──! なんだ? 聞こえなかった?」
「無断k──」
「ごめんて」
平謝り炸裂。
調子のいいやつめ。
でも、このやり取りが本当に楽しい。
僕らが、廊下を歩いて、自教室へ行くと、鍵が開いていることに気がつき、そのまま、中に入る。
普段なら、クラスのパリピや騒がしい人たちがいるけど、今日は、一人だけだった。
「おー、やっぱ、学年一位は違うなぁ」
友人が感心したように言う。
「おはよう。さすがだね」
学年一位の彼は、問題集をパタンと閉じてから、僕らに挨拶した。
「おはよ。別に少し早く起きたからちょっと来ただけだよ」
本当に謙虚な人間だと思う。
彼は、大切な友人でありながら、僕が成りたい理想の人物像を持っているのだ。
「祐麻は、いいよね」
彼は、眼鏡の奥に少しの不安と悲愴を混ぜながら、言う。
「確たる信念を持っていてそれを貫こうとしているからさ──」
僕は、この言葉を言われて、どう答えればいいか分からなかった。
信念というか自分のルールみたいなものだが、それは、生きやすくするために必要なもの。
傷つけた人達への償い。
自分のルールである《傷つけない・傷つかない》は今も。
彼の痛みと、彼女の涙と、幼馴染みで彼女の恋人である男の怒りを忘れないためのものだから。
僕は、もう、関わりを持ってくれている人を傷つけない。
「ありがとう」
そう、返した。
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