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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

91時間目 夏休み明けの日常

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 まどろみの中、俺はこれまでの日常が、走馬灯そうまとうのように流れていた。

 裕太ゆうたとぶつかって、遼太郎りょうたろうと友達になって、黒沢くろさわセンパイたちと知り合って、バイトして、文化祭で宮浦みやうらと対峙して。

 そういや、宮浦、アイツは今、何をしているんだろう。

 法律とかあんまり分からないけど、もうあれから一年は経つ。

 自由になってもおかしくない。

 さすがに、戻ってこないと思うけど、なんだか、心配だ。

 俺の思考とは裏腹に冬のシーンは楽しくて嬉しい思い出が流れている。

 そっか、俺、このクリスマスツリーの下で告白したんだよな。

 小春こはる、やっぱり、いつ見ても可愛いな。

 今年も、来年も、素敵な笑顔を見せてほしいな。

 それから、正月やMISHIHANAミシハナでのパーティーの記憶がよぎり、季節は二年目の春になった。

 黒沢センパイや神谷かみやさんたちと花見をしたシーンだな。

 あれ、本当に美味かったな。

 花見の記憶は、学校に変わって俺と一人の少年が食堂でメシを食べているシーンが写し出された。

 鷹乃たかのか。

 物静かで感情の起伏が少ない彼だが、その目には確かな信念や勇気、優しさが宿って一人の人間として完成しているようだ。

 なにがあって、彼がそうなったのか、俺は知らない。

 けど、いつか、俺に話してくれたらなと思う。

 先輩面のしすぎか。

 そして、記憶は葉瀬はせとのファミレス、海での対峙の季節となった。

 一番最新で遼太郎は一番辛かったであろう記憶。

 葉瀬は、あれから、どうしているんだろうか。

 昨日のことなのになぜか数年も前のことに思える。

 俺は、考えすぎなんだろうな──

 ──

「ねみぃ……」

 なんか、変な夢見たな……。

 朝起きて、俺は顔を洗う。

 そして、朝メシを食べて、制服に着替え、歯を磨いてから登校する。

 いつもの見慣れた風景だが、昨日より少し寒々しく感じる。

 もうすぐ、文化祭か。

 俺たちの高校の文化祭は一年目はライブ、二年目はクラスでの出し物、三年目は露店と決まっている。

 それゆえ、二年生は年々行うことが違って今年はこれこれがよかった、来年はあれあれに期待など意見が色々ある。

「あれ……、高橋たかはし先輩じゃないですか」

 文化祭について考えていると、俺を呼ぶ声が聞こえた。

 そこにいたのは、自転車にまたがっている鷹乃だった。

 相変わらず、眠そうな目をしている。

「おはよう。久しぶりだな」

「おはようございます。そうですね」

 鷹乃は、自転車から降りて、それを歩いて押しながら、言葉を続けた。

「そういえば、もうすぐ、文化祭ですね。僕らはライブをするんですけど、まだボーカルとドラムが居ないんですよね」

「へぇ、その言い方ならギターとベースは見つかったのか?」

「ギターは僕で、ベースは友人がやるんですけど、あと今年は友人のひとりがピアノが弾けるのでキーボードもつけるつもりです」

 キーボードか。

 俺たちは、ギターにベース、そしてドラムのロックって感じの組み合わせだったからな。

 それにキーボードをつけるのは、いいと思う。

「いいじゃねぇか。練習頑張れよ」

「ええ。頑張ります。ところで、高橋先輩たちはなにをされるんですか?」

「俺たちはどうだろうな。まだ決まってないからな」

「演劇とかどうですか?」

「演劇か……」

 鷹乃の言葉にひとつの案が浮かんだ。

「演劇、やってみるか……」

「意見、通るといいですね」

 俺と鷹乃が話している間にいつのまにか校門前まで着いていて、俺たちはそこで一度別れた。

「演劇か……」

 俺は、廊下で再び呟く。

 今年の文化祭も、楽しめる気がした。
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