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第6章EX 常夏と蒼い海 ─少年のリスタート─
90・8時間目 最低な人間
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「あのさ、二人とも、本当にわりぃ」
葉瀬は、やんちゃな顔をぐにゃりと歪めて、自身の罪を告白した。
「俺は、二股をしてたんだよ……」
二股。
その言葉を聞いて、葉瀬の彼女である明菜と沙希という女は一瞬、目を見開いて驚きを隠せない表情を浮かべていたが、沙希は葉瀬を睨み付け、明菜はポカンと訳の分からなさそうな顔をしていた。
「え……?」
「……」
明菜はひとこと呟いたあと、その口は開きっぱなしだった。
沙希は、無言で葉瀬と明菜を睨んでいる。
「……智城君。とりあえず、なんでこんなことをしたか教えてくれる?」
沙希は、落ち着いた声色で葉瀬に聞くが、その顔は怒りがにじみ出ていた。そして、目が笑っていなかった。
「……俺は、沙希のことは好きだ。それは今も変わらない。だけど、沙希は最近ずっとつまらなさそうにしているだろ。だから、俺といても楽しくねぇのかって思って、俺は自分の友人関係に力をいれた」
つまらない理由だった。
葉瀬は、人としての優しさが足りていない。
人を物として見ているように俺は感じた。
つまらなさそうにしているなら、寄りそって話くらい聞いてやれよ。
なにかを抱えているかも知れねぇだろ。
きっと、遼太郎がこいつを毛嫌いしている理由はいじめられたということだけじゃないのだろう。
根本的にこいつは腐っている。
話が合うかもと思っていたが、あんまり関わりたくないと俺は思った。
「友達付き合いのため……? だったら、その女はなんであんたと一緒にいるの?」
眉をひそめて考えていた沙希が口を開いた。
もう、彼女は葉瀬の名前を呼ぶことはないだろう。
「明菜は、俺のことを好きに──」
「ふざけんな!」
ビクリと俺と葉瀬の肩が跳ねあがった。
振り返ってみると、明菜が先ほどまでの優しかった目が怒りで鋭角を際立たせていた。
「トモ君、私は遊びだったわけ? 彼女いたなら言えよ! なんで黙ってたの? 人の想いを弄ぶなよ!」
「明菜俺は──」
「知るか!」
明菜は葉瀬に弁解の余地も与えないと言わんばかりの噛みつきだった。
「トモ君は誰に対しても優しくて、誰に対しても笑顔で、誰に対しても平等に接してくれる。私はトモ君のその性格が大好きだったし、それに惚れたよ。でも、そんなの間違いだったよ! 皆に優しくするって、皆をバカにしているのと一緒じゃないの! 私も、この人も!」
葉瀬はそのひとことに目を見開いた。
以前、誰かに言われた、そんなことを想起させる表情だった。
想像以上の怒りに明菜は、体力を使ったからか、肩で息をしていた。
だけど、彼女は最後のひとことと言わんばかりに、
「私は、今まで沢山の人と付き合ってきたけど、トモ君ほどキラキラしていて最低な人間はいなかったよ。本当に最低で哀れな人は初めて見た」
明菜は、葉瀬を蔑むような顔で睨み付けると、そのまま去っていった。
残ったのは、俺と葉瀬と沙希だけ。
この状況にこんなこと言うのは間違っている。
だけど、言わせてくれ。
俺って。
ただ巻き込まれただけだよなぁぁぁ!
葉瀬は、やんちゃな顔をぐにゃりと歪めて、自身の罪を告白した。
「俺は、二股をしてたんだよ……」
二股。
その言葉を聞いて、葉瀬の彼女である明菜と沙希という女は一瞬、目を見開いて驚きを隠せない表情を浮かべていたが、沙希は葉瀬を睨み付け、明菜はポカンと訳の分からなさそうな顔をしていた。
「え……?」
「……」
明菜はひとこと呟いたあと、その口は開きっぱなしだった。
沙希は、無言で葉瀬と明菜を睨んでいる。
「……智城君。とりあえず、なんでこんなことをしたか教えてくれる?」
沙希は、落ち着いた声色で葉瀬に聞くが、その顔は怒りがにじみ出ていた。そして、目が笑っていなかった。
「……俺は、沙希のことは好きだ。それは今も変わらない。だけど、沙希は最近ずっとつまらなさそうにしているだろ。だから、俺といても楽しくねぇのかって思って、俺は自分の友人関係に力をいれた」
つまらない理由だった。
葉瀬は、人としての優しさが足りていない。
人を物として見ているように俺は感じた。
つまらなさそうにしているなら、寄りそって話くらい聞いてやれよ。
なにかを抱えているかも知れねぇだろ。
きっと、遼太郎がこいつを毛嫌いしている理由はいじめられたということだけじゃないのだろう。
根本的にこいつは腐っている。
話が合うかもと思っていたが、あんまり関わりたくないと俺は思った。
「友達付き合いのため……? だったら、その女はなんであんたと一緒にいるの?」
眉をひそめて考えていた沙希が口を開いた。
もう、彼女は葉瀬の名前を呼ぶことはないだろう。
「明菜は、俺のことを好きに──」
「ふざけんな!」
ビクリと俺と葉瀬の肩が跳ねあがった。
振り返ってみると、明菜が先ほどまでの優しかった目が怒りで鋭角を際立たせていた。
「トモ君、私は遊びだったわけ? 彼女いたなら言えよ! なんで黙ってたの? 人の想いを弄ぶなよ!」
「明菜俺は──」
「知るか!」
明菜は葉瀬に弁解の余地も与えないと言わんばかりの噛みつきだった。
「トモ君は誰に対しても優しくて、誰に対しても笑顔で、誰に対しても平等に接してくれる。私はトモ君のその性格が大好きだったし、それに惚れたよ。でも、そんなの間違いだったよ! 皆に優しくするって、皆をバカにしているのと一緒じゃないの! 私も、この人も!」
葉瀬はそのひとことに目を見開いた。
以前、誰かに言われた、そんなことを想起させる表情だった。
想像以上の怒りに明菜は、体力を使ったからか、肩で息をしていた。
だけど、彼女は最後のひとことと言わんばかりに、
「私は、今まで沢山の人と付き合ってきたけど、トモ君ほどキラキラしていて最低な人間はいなかったよ。本当に最低で哀れな人は初めて見た」
明菜は、葉瀬を蔑むような顔で睨み付けると、そのまま去っていった。
残ったのは、俺と葉瀬と沙希だけ。
この状況にこんなこと言うのは間違っている。
だけど、言わせてくれ。
俺って。
ただ巻き込まれただけだよなぁぁぁ!
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