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第6章EX 常夏と蒼い海 ─少年のリスタート─
90・5時間目 昼、晴れ。そのあと曇り。
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それから、俺たちは談笑をして、ビーチボールを使ってビーチフラッグ風の遊びをやっていた。
その時間は、楽しく、すぐさま過ぎ去っていったのだが、ちょうど、俺が三回目、遼太郎との対戦を終えたあと予想外のことが起きた。
「なー、早くこいよー!」
どこからか、ワイワイと楽しそうな声が聞こえた。
俺はちらりとそちらに目を向け、見てみると、そこには金髪の色黒の男と二人の男子、それに三人の女子の六人グループがあった。
金髪の男を筆頭にワイワイとした声は響く。
「あー、マジで楽しみだったわー。明菜。今日はありがとうな」
「もー、トモ君……。恥ずかしいよぉ。大好きっ!」
「んだよこんな所にバカップルいるじゃんかー」
「爆破しろー!」
などと会話をしながら、こちらに向かって歩いてくる。
あの男、なんか見覚えあるような……。
「……ぁ……」
か細い声にもならない声が聞こえた。
俺は遼太郎の方を見てみると、目を見開き、夏で暑いのに自身の体を腕で必死に抱いている。
その顔は真っ青になっていて、そこにはいるはずのない者を見ているような顔をしていた。
やがて、金髪の男グループは俺たちに気がついたのか、「ゲエッ」と顔をしかめてそんな声をだした。
そんな声に反応した明菜と呼ばれたハデなメイクの黒髪のロングの女子が金髪の男に心配そうに、
「トモ君、どうしたの?」
そう聞いた。
「あー、その、中学の頃の同期がいてさー」
まさかこっちに来るんじゃないだろうなと遼太郎は驚いて更に目を見開いていた。
裕太もこの状況に少し理解が追い付いていないのか、普段、表情など笑顔しかない顔にハッキリと困惑を浮かべている。
金髪の男──トモ君と呼ばれた男──は少し、顔に焦りを見せながらも、
「よっ、三石。お、友達ときてんのかよ。もしよければ、三人もどうだ? お前ら、いいだろ?」
金髪の男──葉瀬はそう言って、強引に俺たちをグループに加入させた。
女子グループは裕太の容姿でヒソヒソとなにかを話し合っている。
「敦志、俺、帰りたい……」
遼太郎が涙目でこっそり告げてくる。
嫌いなヤツと共に時間を過ごすことがどれだけ遼太郎にとって苦痛なことなのだろうか。
俺には到底分かることがない痛みだろう。
正直、断るのは無理だ。
しかし、これでは遼太郎の身がもたないだろう。
どうすれば……。
「あの、葉瀬……さんでしたっけ? 提案があるんですが」
こういうとき、本当に裕太はすごいと思う。
「なんだ?」
「実は友人の敦志は、中学の頃、野球部でして、彼、虎神ファイターズの大ファンなんですよ。お二人で野球のお話、してみてはいかがですか? もちろん、彼女さんもご一緒で」
遼太郎は訳が分からないと言わんばかりにポカンとしていた。
「ほう、そうなのか? 敦志?」
葉瀬は俺の方を見て、キランと瞳を輝かせた。
えっ、名前呼び?
待って、目が怖い。
不良とやり合ってる時の黒沢センパイの顔より怖い。
これ、どうなるんだ。
明日、俺、生きてるか?
その時間は、楽しく、すぐさま過ぎ去っていったのだが、ちょうど、俺が三回目、遼太郎との対戦を終えたあと予想外のことが起きた。
「なー、早くこいよー!」
どこからか、ワイワイと楽しそうな声が聞こえた。
俺はちらりとそちらに目を向け、見てみると、そこには金髪の色黒の男と二人の男子、それに三人の女子の六人グループがあった。
金髪の男を筆頭にワイワイとした声は響く。
「あー、マジで楽しみだったわー。明菜。今日はありがとうな」
「もー、トモ君……。恥ずかしいよぉ。大好きっ!」
「んだよこんな所にバカップルいるじゃんかー」
「爆破しろー!」
などと会話をしながら、こちらに向かって歩いてくる。
あの男、なんか見覚えあるような……。
「……ぁ……」
か細い声にもならない声が聞こえた。
俺は遼太郎の方を見てみると、目を見開き、夏で暑いのに自身の体を腕で必死に抱いている。
その顔は真っ青になっていて、そこにはいるはずのない者を見ているような顔をしていた。
やがて、金髪の男グループは俺たちに気がついたのか、「ゲエッ」と顔をしかめてそんな声をだした。
そんな声に反応した明菜と呼ばれたハデなメイクの黒髪のロングの女子が金髪の男に心配そうに、
「トモ君、どうしたの?」
そう聞いた。
「あー、その、中学の頃の同期がいてさー」
まさかこっちに来るんじゃないだろうなと遼太郎は驚いて更に目を見開いていた。
裕太もこの状況に少し理解が追い付いていないのか、普段、表情など笑顔しかない顔にハッキリと困惑を浮かべている。
金髪の男──トモ君と呼ばれた男──は少し、顔に焦りを見せながらも、
「よっ、三石。お、友達ときてんのかよ。もしよければ、三人もどうだ? お前ら、いいだろ?」
金髪の男──葉瀬はそう言って、強引に俺たちをグループに加入させた。
女子グループは裕太の容姿でヒソヒソとなにかを話し合っている。
「敦志、俺、帰りたい……」
遼太郎が涙目でこっそり告げてくる。
嫌いなヤツと共に時間を過ごすことがどれだけ遼太郎にとって苦痛なことなのだろうか。
俺には到底分かることがない痛みだろう。
正直、断るのは無理だ。
しかし、これでは遼太郎の身がもたないだろう。
どうすれば……。
「あの、葉瀬……さんでしたっけ? 提案があるんですが」
こういうとき、本当に裕太はすごいと思う。
「なんだ?」
「実は友人の敦志は、中学の頃、野球部でして、彼、虎神ファイターズの大ファンなんですよ。お二人で野球のお話、してみてはいかがですか? もちろん、彼女さんもご一緒で」
遼太郎は訳が分からないと言わんばかりにポカンとしていた。
「ほう、そうなのか? 敦志?」
葉瀬は俺の方を見て、キランと瞳を輝かせた。
えっ、名前呼び?
待って、目が怖い。
不良とやり合ってる時の黒沢センパイの顔より怖い。
これ、どうなるんだ。
明日、俺、生きてるか?
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