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第6章 二人の愛と少年の嘆き
87・5時間目 遼太郎にっき②
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──────
【8月22日】
最悪の1日だった。
もう、とっくに忘れていたはずなのに。
俺は、●●●に会ってしまった。
あいつは、敦志たちに俺の過去を全て話した。
友情がまた消え去ってしまう──そう思っていたとき、敦志のあの言葉に救われた。
本当に友情が壊れなくてよかった。
出来ることなら、もう、あいつには会いたくない。
──────
※※※
「寒っ! パーカー着てきてよかった。今日、結構冷えるね」
「だなぁ。どうした? 裕太、俺のことチラチラ見て」
「あー……。その、敦志の格好、黒沢さんみたいだなって思って。紺色のパーカーを見れば、黒沢さんが思い浮かぶんだ」
山内のその言葉に俺たちは同時に飲んでいたお茶を噴いた。
ちょっ……。山内確かに俺もそうだけど!
あの人、年中無休であの格好だもんね!
「ちょっと……。二人とも汚いな。そんなに笑うことじゃないでしょ……」
山内が呆れながら、俺たちを見る。
いやぁ、ごめんて。
ふふっ……!
「まぁ、確かにそれは俺もたまに思う。小春とかに黒沢センパイに間違えられそうだな」
菫さんとか間違えそう。
あの人、おっちょこちょいだからね。
ちなみに、今、俺たちが向かっているのは、最近近くに出来たファミレス。
今まで、敦志の家でゲーム大会をしていた。
もちろん、格闘ゲームで山内に敦志と二人がかりでも敵わず、コテンパンにされた。
山内、チートでも使っているのかな。
「今から行くところだけどね、最近人気なキャラのクーマキングっているでしょ? あのキャラをモチーフにした料理があるんだって」
クーマキングは、ここ数年人気を集めているクマだ。
可愛らしいフィルムと、眠たそうな顔がギャップとなって、若い世代に人気を集めている。
「へぇ……! 南が好きなキャラだから、今度来たときに連れていってやりたいな。今後の俺たちのたまり場になりそうだな」
「なんか、言い方が不良みたいだね」
「敦志は不良だからねー」
「誰が不良じゃゴラ」
俺たちは、いつものように雑談をしながら、そのファミレスに向かう。
そして、目の前の横断歩道を渡れば、すぐに着くというところで、俺の名前が呼ばれた。
「三石か?」
低い、冷たい声。
俺は、その声に振り向く。
そして、本来、いるはずのないやつがそこには、いた。
モノクロのシンプルな服をオシャレに着こなし、耳にチャラチャラと赤いピアスを付けている。
刃のような鋭い目付きはこれまでいじめてきたやつの数が伺えるほど。
そして、ウルフカットの金髪に色黒の肌は威圧感を更に増させる。
「おぉ、やっぱ、三石か」
ニヤリとそいつは、犬歯を見せるように笑うと、俺たちに一言。
「とりあえず、あそこで話しようぜ。割引きしてやるから」
そいつは、俺たちに有無を言わせずに強引に目的地のファミレスへと向かった。
──
どうしてここにこいつがいるのか。
俺は、テーブルに座った瞬間から、顔を伏せた。
こいつの顔すら、これから死んでもみないつもりだったのに。
「……好きなモノ頼め……。あぁ、一応説明しておくが、俺は別に怪しいヤツじゃねぇ。簡単に言うと、こいつと同じ中学のモンだ」
あのな、知ってる?
怪しいやつは、皆自分は怪しくないって言うの。
そんなの敦志たちが信じるわけ──
「そっか。とりあえず、分かった」
いや、信じるの?!
こいつ、ヤバイやつだよ?
「で? なんのために俺たちをここに連れてきた? 用なら、俺たちじゃなくて遼太郎にありそうだけど」
あれ……。敦志、意外ときちんと話している。
「遼太郎、か。よかったじゃねぇか。名前で呼んでもらえて。確かにそいつにも言いたいことはあるが、俺はお前らに忠告をしに来た」
「忠告?」
「お前ら、知ってるだろ? こいつの過去をよォ……?」
聞きたくない。
やめろ、言うな。
お前のせいで、全てが壊れたんだ。
「これは、俺とこいつのクソみたいな話だ」
俺は中学の頃、あいつによって、全てを変えられた。
これは、そんな悲しい話だ。
【8月22日】
最悪の1日だった。
もう、とっくに忘れていたはずなのに。
俺は、●●●に会ってしまった。
あいつは、敦志たちに俺の過去を全て話した。
友情がまた消え去ってしまう──そう思っていたとき、敦志のあの言葉に救われた。
本当に友情が壊れなくてよかった。
出来ることなら、もう、あいつには会いたくない。
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※※※
「寒っ! パーカー着てきてよかった。今日、結構冷えるね」
「だなぁ。どうした? 裕太、俺のことチラチラ見て」
「あー……。その、敦志の格好、黒沢さんみたいだなって思って。紺色のパーカーを見れば、黒沢さんが思い浮かぶんだ」
山内のその言葉に俺たちは同時に飲んでいたお茶を噴いた。
ちょっ……。山内確かに俺もそうだけど!
あの人、年中無休であの格好だもんね!
「ちょっと……。二人とも汚いな。そんなに笑うことじゃないでしょ……」
山内が呆れながら、俺たちを見る。
いやぁ、ごめんて。
ふふっ……!
「まぁ、確かにそれは俺もたまに思う。小春とかに黒沢センパイに間違えられそうだな」
菫さんとか間違えそう。
あの人、おっちょこちょいだからね。
ちなみに、今、俺たちが向かっているのは、最近近くに出来たファミレス。
今まで、敦志の家でゲーム大会をしていた。
もちろん、格闘ゲームで山内に敦志と二人がかりでも敵わず、コテンパンにされた。
山内、チートでも使っているのかな。
「今から行くところだけどね、最近人気なキャラのクーマキングっているでしょ? あのキャラをモチーフにした料理があるんだって」
クーマキングは、ここ数年人気を集めているクマだ。
可愛らしいフィルムと、眠たそうな顔がギャップとなって、若い世代に人気を集めている。
「へぇ……! 南が好きなキャラだから、今度来たときに連れていってやりたいな。今後の俺たちのたまり場になりそうだな」
「なんか、言い方が不良みたいだね」
「敦志は不良だからねー」
「誰が不良じゃゴラ」
俺たちは、いつものように雑談をしながら、そのファミレスに向かう。
そして、目の前の横断歩道を渡れば、すぐに着くというところで、俺の名前が呼ばれた。
「三石か?」
低い、冷たい声。
俺は、その声に振り向く。
そして、本来、いるはずのないやつがそこには、いた。
モノクロのシンプルな服をオシャレに着こなし、耳にチャラチャラと赤いピアスを付けている。
刃のような鋭い目付きはこれまでいじめてきたやつの数が伺えるほど。
そして、ウルフカットの金髪に色黒の肌は威圧感を更に増させる。
「おぉ、やっぱ、三石か」
ニヤリとそいつは、犬歯を見せるように笑うと、俺たちに一言。
「とりあえず、あそこで話しようぜ。割引きしてやるから」
そいつは、俺たちに有無を言わせずに強引に目的地のファミレスへと向かった。
──
どうしてここにこいつがいるのか。
俺は、テーブルに座った瞬間から、顔を伏せた。
こいつの顔すら、これから死んでもみないつもりだったのに。
「……好きなモノ頼め……。あぁ、一応説明しておくが、俺は別に怪しいヤツじゃねぇ。簡単に言うと、こいつと同じ中学のモンだ」
あのな、知ってる?
怪しいやつは、皆自分は怪しくないって言うの。
そんなの敦志たちが信じるわけ──
「そっか。とりあえず、分かった」
いや、信じるの?!
こいつ、ヤバイやつだよ?
「で? なんのために俺たちをここに連れてきた? 用なら、俺たちじゃなくて遼太郎にありそうだけど」
あれ……。敦志、意外ときちんと話している。
「遼太郎、か。よかったじゃねぇか。名前で呼んでもらえて。確かにそいつにも言いたいことはあるが、俺はお前らに忠告をしに来た」
「忠告?」
「お前ら、知ってるだろ? こいつの過去をよォ……?」
聞きたくない。
やめろ、言うな。
お前のせいで、全てが壊れたんだ。
「これは、俺とこいつのクソみたいな話だ」
俺は中学の頃、あいつによって、全てを変えられた。
これは、そんな悲しい話だ。
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