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第6章 二人の愛と少年の嘆き

82時間目 物足りない時の流れ

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窓を全て閉め終えた俺は、帰宅をするため、部室から荷物を全て取りだして、施錠し、職員室に鍵を返してから校内をでた。
あー……、今日も疲れた。
それにしても、野球部に入ったんだろうな。
最近、そんな事を考えることが多くなる。
練習はキツいが、何度怒られても立ち上がって喰らいつくのが、楽しいから別に不満を感じているわけではないと思うのだが、このモヤモヤとした何かを忘れているような気持ちはなんだろう。
この気持ちが俺には分からない。
「……帰るか」
正門前で突っ立っているわけにもいかないので、家に直帰することにした。
6等星がぼんやりと見える夜空を見上げながら、明日も頑張ろうと意気込んで帰宅するのだった。
次の日、目覚まし時計の大音量で強制的に起床した俺は、寝ぼけなまこになりながらも、顔を洗い、朝メシを食って、身だしなみを整えつつ、歯を磨く。
あー、くっそ。寝癖全然直らねぇ!
俺の前髪は、重力無効バフにでもかかってるのかと思うくらい、跳ねている。
ちなみに、生まれつきこれだ。
なんなのこれ。
どうやったらこの髪サラサラのストレートヘアーになるんだろうな。
一生無理とか言われたら泣く。
……まぁ、そんな冗談は置いておいて、俺は、寝癖を整え(ほとんど直らなかったけど)、家からでるのだった。
あー、すっごくねみぃ。
しょぼしょぼする目をゴシゴシと擦りながら、学校まで歩く。
大会、今度もレギュラーとりたいな。
俺は、春の大会にレギュラーとしてでた。
夏は、3年生の先輩たちの最後の舞台だ。
それに少しでも貢献できるようなプレーがしたいと思っている。
そのために、レギュラーをとっておきたい。
その方が、確実に試合に出れて戦力になるからな。
くわぁと大きなあくびがでる。
それと同時に、汗が体からでた。
今日も太陽がカンカン照りで、容赦なく熱を突きつけてくる。
学校に到着し、俺と同じ時間に来た同期のやつと朝練の準備を進め、先輩たちを待っていた。
数分後、先輩たちが徐々に集まり、朝練を開始。
キャッチボールから始まり、最後にバッティング練習をして、あとは個人での練習となる。

──敦志君。

女性の声がした。
それは、ずっと聞いていた声で、大切な人の声。
柔らかい声が心に響く。
これは、誰なのか分からず、俺は少し困惑する。

──敦志!

今度は、男の声。
これも、聞き覚えのある友人の声だ。
イケメンで、モテモテで、誰からも好意を抱かれるやつ。
声は知っているのに、誰の声なのかが分からない。

「おーい! 起きろ、バカ息子が」

生まれたときから聞いている人の声がした。
俺が視界で捉えていたはずの朝練の風景は一瞬で消え去り、次見たのは朝日が窓に照りつける光と、仁王立ちしている母さんだった。
「ぅ……ん? 野球は……」
「はぁ……。なに寝ぼけてるんだ。あんたは。朝からスマホぶーぶー鳴ってうるせぇな! さっさと確認しろっつーの」
俺は、寝ぼけながらスマホを確認する。
そこには、従妹いとこであるみなみからの着信が入っていた。
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