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第6章 二人の愛と少年の嘆き

78時間目 あの日のように

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日曜日はMISHIHANAみしはなを定休日にしている。
基本的に、俺たちはこの日にデートをしたり、買い物に出かけたりしている。
今日、俺と杏は大型ショッピングセンターにきていた。
杏は、昨日泣いていたが、日付が変わると、ケロッとしていた。
本当によかった。
俺は今日、杏には久しぶりに買い物に行くとだけ伝えている。
本当は婚約指輪を買いにきたのだけど、それはサプライズのため言えない。
指輪と言っても、オーダーメイドで世界にひとつだけの指輪を俺が持つ……みたいな想像をしている方には申し訳ないが、そんな時間は俺たちにはないので、既製品で申し訳ないがやらしてくれ。
〝思い立ったら、行動する〟これを、中学の頃から俺は信条としている。
昼頃なので、ファーストフード店によって簡単な昼食を取った。
杏がフィレオフィッシュを頼み、俺はダブルチーズバーガーを頼む。
「俺、だすよ」
俺が奢ることを伝えると、
「ありがとう」
と杏は俺の奢りに感謝の言葉と笑顔を見せてくれる。
付き合った当初は、お互い譲らなかったが今ではすっかりそれもない。
「楓はチーズ好きよね」
クスクスと杏は笑いながら、フィレオフィッシュを頬張る。
「高校生になってからだけどな」
「高校の頃から身長も一気に伸びたじゃない? もしかして、そのおかげじゃない?」
「かもしれないな」
身内ネタで少し盛り上がっていると、杏はなにかを思い出したような顔で、
「そういえば」
と言った。
「なに?」
「そういえば、山崎君が彼女さんにプロポーズしたの知ってる?」
思い出したことは俺にプレッシャーとなって乗っかってくるものだった。
山崎は中学の頃から付き合っていた彼女……名前は曖昧で思い出せないが、その子と別れや付き合いを繰り返して、ついにゴールインをした。
それは、春に聞いたし、式場の招待状も届いている。
心の底から祝福をしている。
次は、俺たちの番なのだ。
俺は、チーズバーガーにかぶり付き、杏とほぼ同じくらいに食べ終える。
「美味しかった。奢ってくれてありがとう」
「ううん。いつも店の掃除とか俺が気が付かない細かいところのフォローとかありがとう。今日はささやかなお返し」
俺の率直な感謝の言葉に照れたのか頬をポリポリと掻きながら、
「えへへ。ありがとうっ!」
とびっきりの笑顔を見せてくれた。
俺はその笑顔だけで、プロポーズも上手く出来そうな気がした。

──

それから、杏は服を選びたいと言うから、別行動をすることにした。
これはチャンスだ。
俺は貴金属店に向かい、指輪をじっくりと見る。
照明に照らされた指輪の輝きが、俺の目に光を与える。
うはぁ……。それなりの覚悟はしていたけど、やっぱり婚約指輪は高いな。
基本的に婚約指輪は結婚指輪よりも高い。
その理由は、歴史を紐解くと分かるらしく、「もしもの時のための備え」としての男性からの愛の証明として渡されるのだとか。
一番安くてこの15万円の指輪か……。
でも、俺はデザイン重視だ。
この15万円の指輪もシンプルなデザインで充分オシャレだがもっといいのがあるはず。
それを探してみると、俺の好みのものがあった。
メレと呼ばれるリングデザインでメレダイヤと呼ばれる小粒ダイヤがメインのダイヤモンドの周りにあしらわれたのが特徴的で華やかな印象を与える。
それなのに、価格は20万円前後……これは18万円だった。
サイズも杏にちょうどいいし、これを買おうかな。
俺は店員さんを呼んで、カードで購入した。
装飾のついたオシャレなリングケースに丁寧に入れられたふたつの指輪は杏を喜ばすには充分だろう。
俺はリングケースをカバンにいれて、杏がいる服屋へ足を進めた。
君との幸せを俺は手に入れてみせる。
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