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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

44時間目 最低のクソ野郎

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公園内で制服姿で待っている宮浦加奈に、僕は声をかけた。
彼女は、僕に気付いたのか、後ろを振り向いた。
「来て、くれたんだ」
僕は彼女の言葉を無視して、単刀直入に聞いた。
「で、話って?」
「待って」
早くしろよと心の中で少しイラつきながらも、カナが言葉を発するのを僕は待つ。
「裕太君はさ、なんで高橋達といつも居るの?」
なんでそんな事を聞いてくるのか、真意は今でも分からない。
だけど、彼女が敦志を嫌っている事は知っている。
「普通に友達だから。それ以外に理由なんてないよ」
こうやってカナに対して、普通に接して、《優しい自分》を演じてしまっていることにかなり気が滅入る。
「じゃあさ、なんで私とはいつも居てくれないの?」
この質問に怒りが少し沸き上がった。
今、心に残っている事を全部ぶちまけてやりたい。
だけど、まだその時じゃない。
僕は彼女を怒らせてはいけない。
幸いにもここの公園には、犯罪防止目的のためか防犯カメラが他の公園よりも多い。
過去にここの公園で事件が起きたその年から、防犯カメラが多く設置されたらしい。
「それは、僕にも優先する事ができたからだ」
なるべく、逆鱗にも触れないように言った。
だが、カナはうつむいて、何も言わなかった。
沈黙が流れる。
ここの公園は、この時間帯は遊ぶ子が少ない。
「はぁ」
突然その沈黙を破ったのはカナのため息。
「もう、回りくどい言い方はやめるね」
なにが回りくどいのか、なぜ敦志達と居るのか、なぜ自分に構ってくれないのか。
もう、この時の僕には分かっていた。
カナが結局何が言いたいのか。

「なぜ好きなのに振り向いてくれないの?」

結局、カナは自分自身に興味を持ってくれる人間にしか興味が無かったのだ。
そして、一度狙いを定めた人間にはトコトン、例えそれが少し、いや、法に触れていても、その人を振り向かせるためならなんだってする。
名誉のためなら不必要な感情を繕ったり、欲のためなら自身の身体を犠牲にしたり、もう元には戻れない時のためでさえ、その時と同じように接しようとしたり。
ある意味、彼女は可哀想な人間なのだろう。
幼い頃から親の愛情なんてものは知らず、恋人よりも近すぎた少年を自身の家族のように思ったり。
そして、それが奪われる事を焦って、必死に元の関係に戻そうとする。
例え戻れないと思っていても、戻そうとする。
本当に可哀想だ。

        本当に・・・。


        本当に・・・。


        本当に呆れた。

こんなことで。
他人の幸せを踏みにじりやがってッ!
なにが、なぜ好きになったのに振り向いてくれないのだよッ!
僕は好きじゃない!
お前の事なんて嫌いだッ!
大嫌いだッ!

「・・・なぁ」
「なに?裕太君?」
カナが、こちらを覗き込むように見てくる。
もう、怒りで彼女の顔を見ることなんて出来なかった。

「ふざけるなよ。最低のクソ野郎」
お前のせいで、彼女も信用もぜんぶぜんぶ失ったんだ。
次は、お前の全てを奪ってやる。
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