81 / 244
第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~
44時間目 最低のクソ野郎
しおりを挟む
公園内で制服姿で待っている宮浦加奈に、僕は声をかけた。
彼女は、僕に気付いたのか、後ろを振り向いた。
「来て、くれたんだ」
僕は彼女の言葉を無視して、単刀直入に聞いた。
「で、話って?」
「待って」
早くしろよと心の中で少しイラつきながらも、カナが言葉を発するのを僕は待つ。
「裕太君はさ、なんで高橋達といつも居るの?」
なんでそんな事を聞いてくるのか、真意は今でも分からない。
だけど、彼女が敦志を嫌っている事は知っている。
「普通に友達だから。それ以外に理由なんてないよ」
こうやってカナに対して、普通に接して、《優しい自分》を演じてしまっていることにかなり気が滅入る。
「じゃあさ、なんで私とはいつも居てくれないの?」
この質問に怒りが少し沸き上がった。
今、心に残っている事を全部ぶちまけてやりたい。
だけど、まだその時じゃない。
僕は彼女を怒らせてはいけない。
幸いにもここの公園には、犯罪防止目的のためか防犯カメラが他の公園よりも多い。
過去にここの公園で事件が起きたその年から、防犯カメラが多く設置されたらしい。
「それは、僕にも優先する事ができたからだ」
なるべく、逆鱗にも触れないように言った。
だが、カナはうつむいて、何も言わなかった。
沈黙が流れる。
ここの公園は、この時間帯は遊ぶ子が少ない。
「はぁ」
突然その沈黙を破ったのはカナのため息。
「もう、回りくどい言い方はやめるね」
なにが回りくどいのか、なぜ敦志達と居るのか、なぜ自分に構ってくれないのか。
もう、この時の僕には分かっていた。
カナが結局何が言いたいのか。
「なぜ好きなのに振り向いてくれないの?」
結局、カナは自分自身に興味を持ってくれる人間にしか興味が無かったのだ。
そして、一度狙いを定めた人間にはトコトン、例えそれが少し、いや、法に触れていても、その人を振り向かせるためならなんだってする。
名誉のためなら不必要な感情を繕ったり、欲のためなら自身の身体を犠牲にしたり、もう元には戻れない時のためでさえ、その時と同じように接しようとしたり。
ある意味、彼女は可哀想な人間なのだろう。
幼い頃から親の愛情なんてものは知らず、恋人よりも近すぎた少年を自身の家族のように思ったり。
そして、それが奪われる事を焦って、必死に元の関係に戻そうとする。
例え戻れないと思っていても、戻そうとする。
本当に可哀想だ。
本当に・・・。
本当に・・・。
本当に呆れた。
こんなことで。
他人の幸せを踏みにじりやがってッ!
なにが、なぜ好きになったのに振り向いてくれないのだよッ!
僕は好きじゃない!
お前の事なんて嫌いだッ!
大嫌いだッ!
「・・・なぁ」
「なに?裕太君?」
カナが、こちらを覗き込むように見てくる。
もう、怒りで彼女の顔を見ることなんて出来なかった。
「ふざけるなよ。最低のクソ野郎」
お前のせいで、彼女も信用もぜんぶぜんぶ失ったんだ。
次は、お前の全てを奪ってやる。
彼女は、僕に気付いたのか、後ろを振り向いた。
「来て、くれたんだ」
僕は彼女の言葉を無視して、単刀直入に聞いた。
「で、話って?」
「待って」
早くしろよと心の中で少しイラつきながらも、カナが言葉を発するのを僕は待つ。
「裕太君はさ、なんで高橋達といつも居るの?」
なんでそんな事を聞いてくるのか、真意は今でも分からない。
だけど、彼女が敦志を嫌っている事は知っている。
「普通に友達だから。それ以外に理由なんてないよ」
こうやってカナに対して、普通に接して、《優しい自分》を演じてしまっていることにかなり気が滅入る。
「じゃあさ、なんで私とはいつも居てくれないの?」
この質問に怒りが少し沸き上がった。
今、心に残っている事を全部ぶちまけてやりたい。
だけど、まだその時じゃない。
僕は彼女を怒らせてはいけない。
幸いにもここの公園には、犯罪防止目的のためか防犯カメラが他の公園よりも多い。
過去にここの公園で事件が起きたその年から、防犯カメラが多く設置されたらしい。
「それは、僕にも優先する事ができたからだ」
なるべく、逆鱗にも触れないように言った。
だが、カナはうつむいて、何も言わなかった。
沈黙が流れる。
ここの公園は、この時間帯は遊ぶ子が少ない。
「はぁ」
突然その沈黙を破ったのはカナのため息。
「もう、回りくどい言い方はやめるね」
なにが回りくどいのか、なぜ敦志達と居るのか、なぜ自分に構ってくれないのか。
もう、この時の僕には分かっていた。
カナが結局何が言いたいのか。
「なぜ好きなのに振り向いてくれないの?」
結局、カナは自分自身に興味を持ってくれる人間にしか興味が無かったのだ。
そして、一度狙いを定めた人間にはトコトン、例えそれが少し、いや、法に触れていても、その人を振り向かせるためならなんだってする。
名誉のためなら不必要な感情を繕ったり、欲のためなら自身の身体を犠牲にしたり、もう元には戻れない時のためでさえ、その時と同じように接しようとしたり。
ある意味、彼女は可哀想な人間なのだろう。
幼い頃から親の愛情なんてものは知らず、恋人よりも近すぎた少年を自身の家族のように思ったり。
そして、それが奪われる事を焦って、必死に元の関係に戻そうとする。
例え戻れないと思っていても、戻そうとする。
本当に可哀想だ。
本当に・・・。
本当に・・・。
本当に呆れた。
こんなことで。
他人の幸せを踏みにじりやがってッ!
なにが、なぜ好きになったのに振り向いてくれないのだよッ!
僕は好きじゃない!
お前の事なんて嫌いだッ!
大嫌いだッ!
「・・・なぁ」
「なに?裕太君?」
カナが、こちらを覗き込むように見てくる。
もう、怒りで彼女の顔を見ることなんて出来なかった。
「ふざけるなよ。最低のクソ野郎」
お前のせいで、彼女も信用もぜんぶぜんぶ失ったんだ。
次は、お前の全てを奪ってやる。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。
夜兎ましろ
青春
高校入学から約半年が経ったある日。
俺たちのクラスに転入生がやってきたのだが、その転入生は俺――雪村翔(ゆきむら しょう)が幼い頃に結婚を誓い合ったロシア人ハーフの美少女だった……!?
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?
のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。
両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。
そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった…
本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;)
本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。
ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?
アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための10の技
MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。
私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。
すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。
そんな方に言いたいです。
アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。
あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。
アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。
書いたまま放ったらかしではいけません。
自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。
【完結】ツインクロス
龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。
[1分読書]あたしの実弟の実兄が好きなんだけど・・・血のつながりはありません
無責任
青春
実弟の実兄、だけど義兄。ちょっと複雑な家庭環境だけど・・・
高校1年生の主人公、真田ひかり。
彼女には血のつながっている妹と弟が・・・。
その弟には、父親が別の兄が・・・。
その名は、田中信繁。
野球部のエースだ。
ちょっと複雑な関係・・・。
だから困る・・・。
金色の庭を越えて。
碧野葉菜
青春
大物政治家の娘、才色兼備な岸本あゆら。その輝かしい青春時代は、有名外科医の息子、帝清志郎のショッキングな場面に遭遇したことで砕け散る。
人生の岐路に立たされたあゆらに味方をしたのは、極道の息子、野間口志鬼だった。
親友の無念を晴らすため捜査に乗り出す二人だが、清志郎の背景には恐るべき闇の壁があった——。
軽薄そうに見え一途で逞しい志鬼と、気が強いが品性溢れる優しいあゆら。二人は身分の差を越え強く惹かれ合うが…
親が与える子への影響、思春期の歪み。
汚れた大人に挑む、少年少女の青春サスペンスラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる