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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

43時間目 歯車

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ライブが終わり、文化祭も、もうすぐ終わろうとしている。
僕は心底安心していた。
体育館で、着替えを済ませ、三石と敦志の着替えを待っている。
ふと、喉の渇きを感じた。
なにか飲み物を買おうと校内の自動販売機まで歩く。
この学校では、僕らの教室付近にひとつ、職員室の近くにひとつ、少し離れた所にある高校の図書館の近くにひとつ。
計みっつの場所に自動販売機があるのだけれど、最短距離で行けるのは教室付近の自動販売機だから、そこに向かう。
もうすぐ11月になり、もうすぐ16時くらいだというのに、太陽は昼間や夏場はより少しはマシになったとはいえ、暑い。
トコトコと校内を歩き回っていると、チャイムが鳴った。
ふと、近くに取り付けられていた時計を見ると、16時ちょうどを刺していた。
このチャイムは文化祭終了の合図だと担任から聞いている。
僕は敦志達が待っていると思い、少し早めに歩いた。
数分後、自動販売機に到着し、そこで100円の微糖の缶コーヒーを買う。
コーヒー特有の苦味と匂いの中に砂糖の甘さが口内に行き渡り、喉の渇きを癒す。
『ポイ捨て厳禁!! ※発見次第停学又は退学と処す※』と書かれている紙を横目に、横にチョコンと設置されているゴミ箱にキチンと捨てる。
こんなので退学とかシャレにならないよ。
この高校は微妙に校則がキツい所がある。
なんて事を考えて敦志達の所へ戻ろうと、来た道を戻っていると、死角があって曲がるときに分からなかったのだろう。
だけど、敦志と出会ったときと違って僕はぶつからずに止まった。
「あっ、ごめー・・・」
曲がった先にはカナが居た。
カナはメイドカフェの他にも、確かなにかあった気がする。
たまたま、この教室になにかを取りに来たのだろうか。
それすら疑わしくなるが、そんなしょうもないクソ野郎ストーカーともう会話をする義理も義務もない。
必要最低限の会話だけしておけばいい。
僕は、そのまま黙ってその場を切り抜けようと歩こうとした時、
「ねぇ」
なんでだろうか。
僕はなぜカナの言葉に反応して立ち止まってしまうのだろうか。
「・・・」
僕は無言を貫く。
「あのさ、私の事嫌っているのは知ってる」
唐突に放たれた一言は僕に激しく突き刺さる。
やめろ。もう話すな。耳を塞ぎたいのに手が動かない。
「だけど、少し話がしたい」
足が動いてくれ。今すぐ駆け出して逃げたい。
「1時間後、あの公園に来て」
カナが今、どんな表情をしているのか分からない。
だけど、僕はふと、思った。
これはチャンスなんじゃないかと。
バカな話かも知れないけど、もしかしたら、今のカナは僕にフラレた事によって自身の行いを後悔しているのかもしれないという考えが思い浮かんだ。
あの僕を休ませる原因となった電話の件以来、彼女電話番号はデータの海に沈んでいる。
「あぁ。分かった。そのかわり」
歩こうとしたカナがチラリとこちらを見た気がした。
「もう、僕らにはこれ以上関わるなよ」
僕が再び歩き始めた時にはもう彼女は何も言ってこなかった。
       __________

「あっ、いた!」
突然振りかけられた言葉に前を向いた。
三石が後ろを向いて、敦志を呼んだ。
「どこいってたの? 探したよー!」
「あー、ごめん。喉渇いていて飲み物買ってたんだ」
「そっか、でも言ってからにしてよー! あっ、そういやさ」
「おう、裕太。どこいってたんだ? そういや、黒沢センパイからLINE来てさ、メシ食いに行かないかって言ってるんだけど一緒に行くか?」
ご飯を食べていると確実に行けなくなる。
残念だけど、ここは断ることにした。
「あー、ごめん。実は急用入ってさ。ちょっと行けないんだ。また誘って欲しいな」
「そっか。んじゃ、またな」
「じゃあなー!」
僕らは校門前で別れた。
ごめん。
本当にごめん。
行きたかったよ。
だけど、僕は、これからの事が大事なんだ。
これから、僕らが心の底から笑って生きれるような人生にするためには。
カナ・・・いや、宮浦。
君を、絶対に、僕は、許さない。
約束の時間まで、あと、30分。
決別までの歯車が少しずつ、動き出す。
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