上 下
72 / 244
第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

41・5時間目 ライブ開演準備

しおりを挟む
『今から午前の部休憩にはいります。本校生徒の皆さんは、体育館に移動してください。繰り返します、今から午前の部休憩にはいります。本校生徒は・・・』
「お疲れー!!」
遼太郎が、伸びをしながら、叫ぶ。
俺は即座に付け髭とだて眼鏡を外した。
ダセェじゃん。
もう着けなくねぇ・・・。
「あつにいー! マジでおつー! やー、もー、マジでおもろかったわ。その髭と眼鏡・・・。 ブフッ・・・! アハハ・・・」
南はまだツボにハマっているのかゲラゲラと嘲笑っている。
オイオイオイ・・・。
なんかやりにくいな・・・。
「高橋君、本当にお疲れさま。次がライブなのかな?」
森山が疑問符を頭にいっぱい並べて、首をかしげながら言った。
「おう、そうだけど。そういや、なんか黒沢センパイ達も来るって言ってたっけな」
森山が苦笑を少し浮かべた。
その理由はなぜなのか分からない。
「あぁ、だからなのね」
森山が笑みのまま呟く。
その理由を少し知りたかったので、踏み込んでみる。
「ん? だからって?」
「なんで高橋君が黒沢さんと知り合いなのかなって思ってね。すごいね。もう友達になれてて」
「や、友達じゃねぇけど?」
「え? 嘘でしょ? 黒沢さんって中々難しい人だからその人が文化祭来るってなかなかだよ?」
「一応、バイト先の先輩だからな。なんか気が合っただけだと思う」
森山は俺の答えを聞くと、ストローでカフェオレを一気に吸った。
「あ、それおいしい?」
ストローに口をつけながら、
「うん、美味しいよ。山内君すごいね。即興でカフェオレ作っちゃうなんて」
森山が飲んでいるのは裕太が休憩用に買っていたコーヒーを飲み物としてだしていたジュース、もといタピオカミルクティーの素材の余りを森山好みの味にして提供しただとか。
俺はその時、食器を洗っていたから分からなかった。
ちなみに、裕太達は休憩で外にいる。
俺はその時やっていた片付けも掃除も全て終わらしたため、もう撤退するだけなのだが、ライブ準備前まではまだ時間があるので、少しの間ゆっくりしておく。
「あつにいー! ウチトイレ行ってくるわー!」
「おう、気を付けろよ」
「あいよー!」
先程まで森山と話していた南がドベベーとトイレに駆け出していった。
「南ちゃん、やっぱり元気だね」
クスクスと笑う森山を見ながら、俺はテーブルに座り、コーヒーを飲んだ。
「だなぁ。あれでも一応、人見知りなんだが」
小さいときは俺から離れなかったのになと加えて。
「高橋君、結構お兄ちゃんやっているんだね。えらいね」
「いやいや、別に。ありがとうな、南と仲良くしてくれて」
「こっちもだよー。南ちゃんと仲良くできてよかったよ」
森山と向き合い、会話も弾んでいる。
あれ・・・? なんか良い雰囲気じゃねぇ?
つーか、なんでこんな事考えてんだ。
森山は、俺の事、好き、じゃねぇ、よなぁ・・・?

ドクン。ドクン。ドクン。
オイ、心音が痛ぇよ。
ドクン。ドクン。ドクン。
痛い。痛い。痛い。
でも、勘違いでもいい。
初めて持った感覚を無理矢理落とさないために。
これが、恋じゃないなら。
この心音の音が、ただの心音なら。
いや、俺はそんなの認めない。
俺はその時気づいてしまった。
ライブに影響がでるかもなんて考えてなかった。
いや、別にでなかったけど。
ああ・・・。
分かったよ。

     ー俺は、森山の事がー
     ーずっとあの日からー

      好きだったんだな。

ずっと友達だと思っていた。
仲の良い幼馴染みだと思っていた。
確かにそうかも知れない。
けど、その気持ちの中で、お互いを思う気持ちは。
きっとあったんだ。

「はぁ・・・」
「ん? 高橋君? どうしたの? ため息なんかついて? 幸せが逃げちゃうよ?」
森山がこちらを覗きこむように見てくる。
ピンク色のパステルカラーの瞳の中に、恋する乙女のような弱々しい俺が映る。
「お、おう。っし、ライブ頑張る!」
「頑張って!」
そして、俺達はもう一度見つめ合い、微笑んだ。
森山ってこんなに笑顔、可愛かったっけ?
「んじゃ、会場で」
「うん」
俺は食堂からでて、体育館に向かう。
森山と笑いあった後の森山の目の中に居た俺は、希望を抱いていた気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...