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第2章EX ~高校1年の夏の最後の1日~

30・8時間目 夏休み最後の晩ご飯①

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「へぇ~。 森山さんは、絵を描いているんだね」
「う、うん。 最近は人物画を中心に描いているかな」
森山は少し恥ずかしそうに言った。
今、俺達3人+森山は帽子屋の近くのファミレスに居る。
「絵かぁ・・・。 やっぱり将来の夢とか決まっているのかな?」
席を離れていた三石がオレンジジュースを持ってきて帰ってきて言った。
片手にはもうひとつのグラスがある。
「はい、これ」
「ありがとう、三石君」
「どーいたしまして」
三石は森山にグラスを手渡してから、山内の横に座った。
森山が帽子屋の前で話してくれたこと。
彼女は、中学の時から男性恐怖症に陥ってしまった。
だから、助けたあの日から学校が来れなくなっていた。
今は少しずつそれも回復していき、ある程度は男性と話せるようになったらしい。
だから、俺を見かけて話せたんだなと思ったが、彼女曰く、「目付きが悪くて髪型も特徴的で懐かしいボディソープの匂いがしたから、一発で高橋君だと分かったんだ」らしい。
しっかし、よくボディソープの匂いまで覚えていたなと少し驚いた。
「三石君は何かやってるの? バイトとか?」
メロンソーダを入れて来た森山が三石に話しかけた。
「俺も山内も敦志もバイトやってるよ! 職場はそれぞれ違うけどね」
「へぇ~。 高橋君ってバイトやってたんだ。 どんなバイトやってるの?」
突然振られた会話に少し戸惑うが、
「あー、一応コンビニのバイトをやってる。 結構楽しいぞ?」
コンビニと反復した後、森山は、少し考える仕草をとった。
「どうしたの?」
スープを耐熱カップに入れた山内が来た。
「おう、おかえり。 んじゃ、行ってくるわ」
「了解~」
「んじゃ」
山内と三石に軽く返事をすると、手に、指に暖かい熱が伝わってきた。
「ん?」
俺はその手の主の顔を見る。
森山はガッツリと俺の手を握ったまま、言った。
「そのぉ、私も一緒にいい?」

         ー

「んで、どうしたんだ? さっきも考え込んでいたけど」
トコトコと二人の靴音が店内のBGMに響く。
「えへへ・・・。 なんだか久しぶりに人と関わるから疲れちゃって」
へへっと笑う森山の笑顔には確かに疲労の色が浮かんでいる。
「でもね」
続けて、一度深呼吸をしてから、彼女は立ち止まり、俺の目を見て言った。
「山内君も三石君もいい人だよ。 私、良かったな。 友達が出来て。 あ、もちろん高橋君もだよ。 あ、高橋君は違うかな」
そう言って、1歩前に近づいてきた。
俺は反射的に1歩さがる。
「むぅー。 どうしてかな?」
少し彼女は頬が紅い。
「いやいや・・・。 なんつーの? なんかさ。 友達じゃないってことはあれだろ」
予想以上にテンパってしまった。
「俺と森山は」
「私と高橋君は」
「「親友」」
「だろ?」
「でしょ?」
ハモってしまった。
「・・・」
少しの間沈黙が流れる。
「「プッ・・・」」
その空気に耐えられなくなったのか、それとも可笑しくて二人とも笑ってしまった。
「はははっ! なにそれー。 私のセリフじゃん! ふふっ」
「いやいや、絶対言ってくると思ってさ。 やっぱり変わってねぇな」
「変わってないよー。 私は・・・ありがとうね。 高橋君」
そう言って微笑む森山に対していつしか俺はあの日のような感情を取り戻していた気がする。

         ー

たまには、親友がリア充っぽくなっているのを見るのはいいものだと最近僕は思っている。
敦志はここ最近本当に変わった気がする。
なんだか素直になった気がする。
「ねぇ、山内。 そういえばここのパフェってさ・・・」
「ん? どうしたの? 三石?」
パフェがどうかしたのだろうか。
「いやぁ、実はここのパフェって、恋人で食べると成就するらしいよ」
「それは恋ってことかな?」
「そうだと思う」
「じゃ、敦志達に後で食べさせてあげよう」
「そうしようか」
こうして、僕らの『敦志の恋愛成長期大作戦』が始まった。
楽しみだ。
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