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第2章 夏休みと青春 ~バイト尽くしの常夏!職は違えど楽しさは同じ!~

18時間目 始まりのバイト

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『ピロリンピロリン♪』
自動ドアの開閉音と共に、一人の青年が入ってきた。
絹のように綺麗な黒髪のストレートヘアー。
一見、女子と間違えられるような長い前髪。
太陽の下に出たことがないだろうと思えるほどの超絶的に白い肌。
数時間前にも見た、あの紺色のパーカーに、白いTシャツ、黒い長ズボン。
そして、見る者を引き込むような紅い目。
俺はコンビニでバイトをしている。
それはなぜか。
俺は自慢じゃないが目付きが悪い。
だから、不良に絡まれた。
喧嘩はしたことがない。
だから、どうすればいいか分からなかった。
ただ、覚えているのは、殴られそうになったときに、ショーケースに入っている唐揚げをつまみ食いしている人が、俺に笑って話してくれている人が、この顔が別人になったみたいに、その不良達を一掃してくれた、ただ、それだけだった。
「く・・・黒沢くろさわさん、ちょ、勝手にショーケースの中の唐揚げ食べないでください」
「あのなぁ・・・。 今は客が居ねェからいいだろォ? クソマジメ過ぎた。 そんなんだから、不良に絡まれンじゃねェか? 高島ー?」
「ふ、不良に絡まれたのは、俺の目付きのせいですから! それに、俺の名前は高島じゃなくて高橋ですから!」
俺は真っ赤になって口論する。
なんか三石みたいだ。
黒沢さんは唐揚げをパクリと口にほおりこむと、
「・・・ま、またなんかあったら言えやなァ」
と言ってくれた。
この人は、結構カッコイイ。
俺の口からでたのは、
「ありがたいです」
この一言だけだった。
「あ、そうだ。 そういやさっきカフェでお前の友達がバイトしていたぞォ」
「友達ッスか? ソイツ、可愛いッスか?」
「めっちゃ可愛ェェな」
ああ、アイツか。
頑張っているだろうな。
俺は可愛い親友とイケメンの親友の顔を思い浮かべた。
          ー

「ふわわわわわわわ、こ、こ、後輩がぼ、僕に、で、で、で、ですか、・・・」
「ああ、そういう訳で教えてやってくれ。 任せたぞ。薔薇しょくび~。 じゃ、俺は帰るからー!」
「ふぇぇぇぇ?! ちょ、ちょっと、て、店長~? ま、待ってぐださいよー!」
僕は、古本屋でバイトを始めた。
三島さんの紹介だ。
先程、凄い速さで走って帰った人が三島さんの友達・山崎やまざきさんだ。
三島さんに渡された住所を元にある一軒家に行った。
そして、山崎さんが出てきて、バイトをしたいと話したら、なんと、秒でOKしてくれた。
僕は、いくらなんでも軽すぎるだろと思ったが、三島さんが心を許す人だというのも分かる。
あの人は、信用できるオーラを放っているのだ。
誰でも受け入れるという器の大きさ。
僕も見習わないと。
そして、僕の目の前でうろたえている薔薇さんと言われた人。
桃色の可愛らしい髪。
まん丸のうす紫色の目。
結構ブカブカの白Tシャツに普通のジーパン。
普通の高校生くらいの子だ。
「えぇぇぇ! ぼ、僕ど、どうすれば、い、いいの? ああああぁぁ!」
「・・・あ、あの」
「ふ、ひゃい!」
と、驚く薔薇さん。
「え、えーと、僕の名前は山内裕太です。 今日からよろしくお願いします」
僕はスタンダードの話し方で挨拶した。
「・・・っ。 え、えと、ぼ、僕は・・しょ、しょきゅ・・ごめんなさい」
「と、とにかく深呼吸してください。 落ち着きましょう」
「う、うん。 ごめんね」
スーハーと深呼吸する薔薇さん。
僕は大丈夫かなと思いつつも、彼の性格を考えてみた。
彼はきっと自分に自信がないのだろう。
だから、ここまで緊張したり、言葉がつまったり、カミカミだったりしているのだろう。
だから、彼には自信をつける言葉をかける必要がある。
「えーと、薔薇さん。 僕はバイトが分からない事だらけですので教えていただけると嬉しいです。 薔薇さんは、このバイトにやりがいを感じますか? どんなやりがいがありますか?」
「な、な、なんで、名前わか、分かったの? や、やりがい・・・。 やりがい・・・。 お客さんが好きなゲームとか、本とかを買って、喜んでくれることかなぁ・・・」
「こ、こんなので、いいのかなぁ?」
「全然いいですよ。 ありがとうございます」
分かった。
彼は、好きなことはかなり話すタイプの人間だ。
だったら、僕はそれに合わせればいい。
「今日からお世話になります。 薔薇さん」
「こ、こちらこそ、お、お世話になられます・・・」
僕のバイトが始まった。
本棚整備に、在庫補充だ。
空き時間は好きに本を読んだりしていいと薔薇さんに言われた。
さて、頑張るぞ。
三石や敦志は頑張っているかなぁ。

          ー

カランとカフェ特有のベルが鳴ったと同時に一人のお客さんがやって来た。
俺は接客をしようと拭いていたコップを台所に置こうとした。
その時、
「あ、睡蓮! ひさしぶりなのー!」
と、白咲さんの声が聞こえ、彼女は入り口に飛び出して行った。
「おう。 白咲。 お前今日も頑張ってンじゃねェか! 関心、関心」
「睡蓮はバイト今日は行かないの~?」
「ん、いや、今日は行く。 なんか不良に絡まれていたツンツンヘアーのやつがいたからよォ・・・ 助けてやった」
と、言いながらカウンターの端に座る睡蓮さん。
「流石睡蓮なのー! 弱き者を助けるひーろーなの~~!」
「んぁ、ソイツたしか、名前がかっこよかったンだよな。 高山とかいうヤツだったっけなァ?」
俺はお水どうぞといいお冷やを渡す。
まるで高級の布のように綺麗な黒髪のストレートヘアー。
女子と間違えられるような長い前髪。
とても綺麗で不健康にも思えるほどの白い肌。
紺色のパーカーに、白いTシャツ、黒い長ズボン。
そして、何か理由があるのだろうか謎の紅い目。
とにかく、睡蓮さんはかっこよかった。
イケメンとかっこいいの中間ぐらいの人物だ。
「ありがとさんよ」
とお冷やをすすりながら言う。
「あ、あの、その助けた人って、高山じゃなくて高橋じゃありませんか?」
俺の勘が正しければ。
「あ? あ、あー! そうだわ。 高橋だわ。 ソイツ、俺のとこでバイトすることになったからよォー! ありがとうなァ!可愛い赤毛のチビ!」
チビかぁ・・・
と落ち込みたかったが、やめよう。
「あはは・・・ こちらこそ。 彼をよろしくお願いします」
「ハッ・・・。 任せとけ! 白咲! いつものコーヒーよろしく!」
「はいなのー!」
三島さんと花園さんが買い出しから帰ってきて、睡蓮さんと話していた。
彼らは、まるで睡蓮さんを我が子のように接していた。
三島さん達がそういう優しい性格なのかそれとも他に理由があるのか分からないけど俺はこのバイトが好きだなと思った。
今頃、山内と敦志はバイトを頑張っているだろうなと思い、頬をパチンと叩いて気合いをいれた。
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