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第1章 無人島篇

第1話 只今漂流中

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side:桜井美智瑠



もう何時間こうして居るのか分からないけど、ずっと座っているのにもさすがに限界がある

もしかしたら時間の感覚がマヒしてしまって、まだ30分くらいしか経っていないのかもしれない

そう思うとウンザリしてくる、だけど今はそんな事を言ってられる状況じゃない。

私達の乗っている船は波に揺られて確実に何処かに向かって流れ続けているけど、今の私達にそれを止める術は無い


私の隣に座っている、なっちゃんを見ると相変わらず暗闇を見つめていた。



ーーーーーーーーーーーーーーー




私の名前は桜井美智瑠(さくらいみちる)17歳、県立武庫川東高校の2年生

私の隣に座っているのは同じ高校のクラスメイトで加藤菜穂(かとうなほ)17歳、なっちゃんとは同じクラスで、毎日一緒にお弁当を食べるくらいには仲が良い


私となっちゃんは中学からの友達で、私がアニメや漫画が好きなのに対して

なっちゃんは運動神経抜群のスポーツ少女だ

中学の時は部活でバスケをしていたけど、ほぼ毎週末試合で遠征するのが面倒という理由で高校では帰宅部をしている。

なっちゃんと私では共通の話題が無いように思えるけど

ある時、私が読んでいた漫画になっちゃんが興味を示したので貸したのがきっかけだと思う

その漫画は女子高生がキャンプをするという内容だったけど、なっちゃんもキャンプに興味を持ったらしく

それから一緒にお弁当を食べながら色々話すようになった、料理を作る漫画は無いの?とか、釣り漫画は?とか

主にキャンプに必要な知識を得られる漫画やアニメの話だったけど(笑)

高校に入ると、なっちゃんはキャンプ道具を購入する為にバイトまで始めた

今年の夏はソロキャンプにも行ったみたい。

バスケはチームメイトとの連携が大事だから、今から考えるとそういうのに疲れていて

その反動でなっちゃんはソロキャンプにハマったのかもしれない


そんな私達が何故2人きりで船に乗っているのかと言うと。



事の発端は数時間前に遡る。



私達は高校の修学旅行の行き先である鹿児島にフェリーで向かう為

神戸港に集合し午後4時出航のフェリーに乗り込んだ。


定刻通りに出航したフェリーのクラス毎に割り当てられた大部屋でまったりしていたら

レクリエーションをするからとロビーに集合させられた、なんか突然過ぎて何故?って思うけど

もしかしたら高校生なんて自由行動にしておくと何をするか分からないと思われていて、何かしらさせておく方が良いという判断かもしれない

確かに皆で集まってテンションが上がると、ついつい周りに迷惑をかけている事もあるから否定は出来ないけれど

とは言えフェリーの中で出来る事と言うのは限られている

10人程度のグループに別れて地図を見ながらフェリー内にある各施設を巡るという物だ

食堂、大浴場、お土産コーナー、自販機コーナー、避難通路等々、それぞれの場所には教師が居てハンコを貰わないといけない


混雑を避ける為に各グループが通るルートは微妙に違うんだけど、ゴールは同じでレプリカの救命ボートが展示されている場所になる

そこで救命ボートの簡単な説明を聞いて終了の流れだった


私となっちゃんのグループは大浴場からのスタート

なんやかんやでこんな大きなフェリーに乗るなんて初めてだから、ただ見てまわるだけでもけっこう楽しめた♪


そして最後はレプリカの救命ボートに実際に乗って終わりの予定だ

この時偶然にも私となっちゃんは順番の最後になってしまい、しかも2人きりで救命ボートに乗る事になってしまった

なっちゃんと2人でって事に凄く喜んだのだけど

今思えばこれは完全に不運だったと思わざるを得ない


私となっちゃんが救命ボートに乗った次の瞬間、突然目の前が暗くなったと思ったら

気付けば私達が乗った救命ボートは何故か海の上を漂っていたからだ

まったく意味の分からない出来事だったけれど、私はこの時さほど心配していなかった

ここが海の上なら正確な場所は分からなくても瀬戸内海だ、海の上とは言え周りを見れば本州か四国か淡路島のどれかは見えるはず

瀬戸内海は潮の流れが早いから多少流されるだろうけど、太平洋にポツンと居る訳でも無く岸からも救命ボートは視認出来るんじゃない?

だからそのうち救助が来るだろうと思ってあまり心配はしていなかった





つづく。
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