179 / 207
9章 理想と現実と、嫌がらせ
9-17 嫌がらせ、我が人生3 ◆グジ視点◆
しおりを挟む
◆グジ視点◆
「兄ちゃんっ」
声を上げてみたものの、ものの見事にフリント女王の剣も魔法も兄ちゃんに防がれている。
どんなに女王が頑張ったとしても、実力差がものすごい。。。
女王の剣の速度も相当なもんだけど、兄ちゃんに比べたら軽いのか?
だから、と言うべきか、兄ちゃんが圧倒的優勢なので、気になるのはフリント女王ではない。
上に浮かぶ無数の黒いモヤモヤども。
綺麗な星空が浮かんでいたのに、一気に曇ったのかと思えるほど真っ黒である。。。
本当に急に曇ったなあ、嵐になるのかなあと思えるほど、俺は能天気ではない。
今回、兄ちゃんは嬉々として嫌がらせをしている気がする。
疑問が生じる。
誰に対して?
フリント女王やデント王国に対して、だけならまだ良いが、俺たちも嫌がらせの対象に入ってないか?
兄ちゃんはフリント女王の剣に乗せた魔法を上空に逃がしている。
一瞬だけ星空が見えると、すぐに暗くなる。その繰り返し。
「疲れませんか?フリント女王陛下」
「だったら一発ぐらいおとなしく殴られなさい」
「ははは、嫌ですよ。なぜそんな無意味な犠牲を俺が強いられなければならないのですか」
「そういう受け答えもムカつくっ。何でアンタはベルをわざわざデント王国の国民にしたのよっ」
女王の動きがとまった。
まあ、兄ちゃんの剣で女王の剣がとめられているからなんだが。
「俺、嫌がらせって言いませんでした?」
「嫌がらせをする理由を聞いているのよ。アンタは私を倒してめでたしめでたし、リーフ王女がデント王国の平和を勝ち取りました、でいいじゃないっ」
「そこまで覚悟しているのなら、従者殿を殺す前に、貴方が倒されれば良いのでは?」
フリント女王の剣がギリギリと音を立てる。
「私はベルと一緒に生きたかったのよ。最後の最後まで」
それは悲痛な叫び。
声は消え去りそうなほど小さな声だったが。
「何でそこの女王はあの従者を殺さなきゃいけないんだ?」
話の流れで、なんとなくわかるが。
「デント王国の国民はテオシント王国の者がされたようにこの女王に復讐される。ただし、ウィト王国に逃げ延びたテオシントの民は殺されなかった。つまり、国外にいるデント王国の国民と、国内にいる他国の者は復讐から除外される」
「、、、つまり、書類上でもデント王国の国民となってしまったあの従者は復讐の対象になると」
「そう、従者殿を殺さなくても良いから、女王は普通に接することができた。けれど、国民になってしまったら、殺さなければならない対象になる。女王自身が実際には殺さなくても、そう見ざる得ない。因果なものだ」
「ヤレヤレ感を表に出して言っているけど、それをやったのは兄ちゃんだろ」
「当たり前だろ。なぜ関係のない俺がわざわざこの国に出向かなければならなかったんだ。嫌がらせぐらい受けて当然の報いだろ」
「そう言われると、兄ちゃんはデント王国にはまったく関係ないとも言えるな。対価なしに兄ちゃんにすべてを終わらせてもらうのは虫のいい話だ」
兄ちゃんはウィト王国の最強の盾。
多少、付き合いのある人物がデント王国の者にいるとしても、隣国だとしても、それでもすべてを無償で救ってもらうのはありえない話だ。
「それは私を打ち滅ぼした後にリーフに支払ってもらえばいい話でしょう」
「ああ、姉ちゃん、だから、それは上に立つ人物だけの論理だ。下々の者は約束もなしにやって当たり前というのは。報酬も確定されていないのに、普通は誰がやるか。国を救った救世主を冤罪で処刑する国は少なくないのに、兄ちゃんをそんな目に遭わせられるか」
女王に言う。
おそらくこの女王は兄ちゃんに何を言われても逆上する。
俺が言わなくてはならなかった。
身の安全も報酬も約束していながら、反故にする国でさえ多いのだから。
自分の命令は通って当たり前の環境にいた彼女に伝えた。
「頭領、できればそのセリフは屋根の先端に抱きついたまま言ってほしくなかったなあ。説得効果が半減する」
うっ。
だって、黒いモヤモヤが辺りにいるんだぜ。
しかも、この突風が吹き荒ぶ時計塔の屋根の上で、剣や魔法で戦っているアンタらが異常なんだぞ。
無理だろ。
女王の長い長い髪でさえ強風で踊っているのに。
一般人の俺が格好良く発言できるわけもない。
「彼は、誰なの?」
そうですよね。
女王も疑問に思いますよね。
兄ちゃんは知っていても、口を挟んできたアンタ誰?って思いますよねえ。
「俺の冒険者仲間だ。頭領のグジだ」
「へえ、そう」
女王が俺を見て嫌な笑顔を浮かべた。
今の俺の位置では、後ろ姿の兄ちゃんの表情は見えない。
兄ちゃんは女王のあの顔を見たか?
、、、見たな。
兄ちゃんが纏う雰囲気がガラリと変わった。
それを見た女王でさえ後退った。
「そうか、お前は嫌がらせだけじゃ足りないのか。なら、死んだ方がマシだったと思え」
守り一辺倒だった兄ちゃんの剣の構えが変わった。
仲間に手を出そうとする。
それはソイ王国のソイファ王太子殿下もしようとしたことだ。
ソイファ王太子殿下の場合は口先だけだったけど。
兄ちゃんは口で勝っていたが。
あのとき、兄ちゃんはここまで力を解放していなかった。
迫力はあったが実力行使をしようとは微塵もしていなかった。
「ソイファ王太子殿下のときと何が違うんだ?」
つい声が出てしまっていた。
女王は俺を見て笑っただけだ。
その意図は恐ろしいほど感じ取れたが。
まだ、女王は何も言ってなかった。
「ああ、そういえばソイファ王太子殿下もお前たちを人質にしようとしていたことがあったな。やむにやまれぬ事情があるのは二人とも同じ立場だっただろうが、実際のところどちらの事情も俺には関係のないことだ。だが、俺は恩知らずではない。オルレアの処遇についてはアレが一番最良だ」
「おおっ、つまり、ソイファ王太子殿下にはまだまだ利用価値があったと」
微かに後ろを向いた兄ちゃんの視線が俺に刺さった。
「んー、まあ、そういうことでいいか」
ということは、違うのか。
兄ちゃんの魔法の盾たちにもソイファ王太子殿下は慕われているようだからな。
兄ちゃんから生まれた魔法の盾が、兄ちゃんの意志と反することはないだろう。
ソイファ王太子殿下と兄ちゃんが本当の兄弟だったのなら、ケンカしながら良い関係を築き上げていたのではないか?
深いため息を吐いた後、兄ちゃんの雰囲気が通常運転に戻った。
「一応言っておくが、ソイファ王太子殿下とコイツとでは全く違う。自国のことを憂いて、どうしようもない状況は同じなのかもしれないが、自らの判断で動く者に対しては俺も敬意を表する」
「私だって自分の判断で」
「そうか?ウィト王国から忍び込んだテオシント王国の生き残りの子孫からの指示と、亡霊たちからの恨み辛み嘆きを聞き入れていただけだろう、お前は。自分の意志はそこにあったか?」
「そ、それは」
女王は視線を俯かせたが、すぐに兄ちゃんに向いた。
「だからといって、テオシント王国の王族の血筋である私が逃げ出すわけにはいかないわ。私はこの地に縛られたテオシントの民を解放しなければならない」
「それがデント王国の国民を皆殺しすることか。お前が大切な者を手にかけてもその意志を貫くというのなら、その道を進めばいい」
「、、、ベルを国民にしたのは、私の意志を挫くためなの?」
「王族の責任を果たすために完遂するなら、それはそれで立派なのだろう。だが、テオシント王国はすでに滅びた国だ。王族といっても国民がおらず、そして、遠い昔に他国の庇護下に入り平民になったのだから、王族の責任などテオシント王国の王族の末裔には存在しない。テオシント王国の生き残りはウィト王国の国民であり、すでにテオシント王国の国民はどこにもいないのに、デント王国の国土を取り戻したところで住まう者は誰もいない。考えることを放棄すれば、最善の道を探すことさえ見失う」
「だったら、どうすれば良かったのよっ。私は彼らを放り出すことはできないっ」
女王が叫んだ。
彼らって、上空に群がるこの黒いモヤモヤたちのことだよねえ。
「兄ちゃんっ」
声を上げてみたものの、ものの見事にフリント女王の剣も魔法も兄ちゃんに防がれている。
どんなに女王が頑張ったとしても、実力差がものすごい。。。
女王の剣の速度も相当なもんだけど、兄ちゃんに比べたら軽いのか?
だから、と言うべきか、兄ちゃんが圧倒的優勢なので、気になるのはフリント女王ではない。
上に浮かぶ無数の黒いモヤモヤども。
綺麗な星空が浮かんでいたのに、一気に曇ったのかと思えるほど真っ黒である。。。
本当に急に曇ったなあ、嵐になるのかなあと思えるほど、俺は能天気ではない。
今回、兄ちゃんは嬉々として嫌がらせをしている気がする。
疑問が生じる。
誰に対して?
フリント女王やデント王国に対して、だけならまだ良いが、俺たちも嫌がらせの対象に入ってないか?
兄ちゃんはフリント女王の剣に乗せた魔法を上空に逃がしている。
一瞬だけ星空が見えると、すぐに暗くなる。その繰り返し。
「疲れませんか?フリント女王陛下」
「だったら一発ぐらいおとなしく殴られなさい」
「ははは、嫌ですよ。なぜそんな無意味な犠牲を俺が強いられなければならないのですか」
「そういう受け答えもムカつくっ。何でアンタはベルをわざわざデント王国の国民にしたのよっ」
女王の動きがとまった。
まあ、兄ちゃんの剣で女王の剣がとめられているからなんだが。
「俺、嫌がらせって言いませんでした?」
「嫌がらせをする理由を聞いているのよ。アンタは私を倒してめでたしめでたし、リーフ王女がデント王国の平和を勝ち取りました、でいいじゃないっ」
「そこまで覚悟しているのなら、従者殿を殺す前に、貴方が倒されれば良いのでは?」
フリント女王の剣がギリギリと音を立てる。
「私はベルと一緒に生きたかったのよ。最後の最後まで」
それは悲痛な叫び。
声は消え去りそうなほど小さな声だったが。
「何でそこの女王はあの従者を殺さなきゃいけないんだ?」
話の流れで、なんとなくわかるが。
「デント王国の国民はテオシント王国の者がされたようにこの女王に復讐される。ただし、ウィト王国に逃げ延びたテオシントの民は殺されなかった。つまり、国外にいるデント王国の国民と、国内にいる他国の者は復讐から除外される」
「、、、つまり、書類上でもデント王国の国民となってしまったあの従者は復讐の対象になると」
「そう、従者殿を殺さなくても良いから、女王は普通に接することができた。けれど、国民になってしまったら、殺さなければならない対象になる。女王自身が実際には殺さなくても、そう見ざる得ない。因果なものだ」
「ヤレヤレ感を表に出して言っているけど、それをやったのは兄ちゃんだろ」
「当たり前だろ。なぜ関係のない俺がわざわざこの国に出向かなければならなかったんだ。嫌がらせぐらい受けて当然の報いだろ」
「そう言われると、兄ちゃんはデント王国にはまったく関係ないとも言えるな。対価なしに兄ちゃんにすべてを終わらせてもらうのは虫のいい話だ」
兄ちゃんはウィト王国の最強の盾。
多少、付き合いのある人物がデント王国の者にいるとしても、隣国だとしても、それでもすべてを無償で救ってもらうのはありえない話だ。
「それは私を打ち滅ぼした後にリーフに支払ってもらえばいい話でしょう」
「ああ、姉ちゃん、だから、それは上に立つ人物だけの論理だ。下々の者は約束もなしにやって当たり前というのは。報酬も確定されていないのに、普通は誰がやるか。国を救った救世主を冤罪で処刑する国は少なくないのに、兄ちゃんをそんな目に遭わせられるか」
女王に言う。
おそらくこの女王は兄ちゃんに何を言われても逆上する。
俺が言わなくてはならなかった。
身の安全も報酬も約束していながら、反故にする国でさえ多いのだから。
自分の命令は通って当たり前の環境にいた彼女に伝えた。
「頭領、できればそのセリフは屋根の先端に抱きついたまま言ってほしくなかったなあ。説得効果が半減する」
うっ。
だって、黒いモヤモヤが辺りにいるんだぜ。
しかも、この突風が吹き荒ぶ時計塔の屋根の上で、剣や魔法で戦っているアンタらが異常なんだぞ。
無理だろ。
女王の長い長い髪でさえ強風で踊っているのに。
一般人の俺が格好良く発言できるわけもない。
「彼は、誰なの?」
そうですよね。
女王も疑問に思いますよね。
兄ちゃんは知っていても、口を挟んできたアンタ誰?って思いますよねえ。
「俺の冒険者仲間だ。頭領のグジだ」
「へえ、そう」
女王が俺を見て嫌な笑顔を浮かべた。
今の俺の位置では、後ろ姿の兄ちゃんの表情は見えない。
兄ちゃんは女王のあの顔を見たか?
、、、見たな。
兄ちゃんが纏う雰囲気がガラリと変わった。
それを見た女王でさえ後退った。
「そうか、お前は嫌がらせだけじゃ足りないのか。なら、死んだ方がマシだったと思え」
守り一辺倒だった兄ちゃんの剣の構えが変わった。
仲間に手を出そうとする。
それはソイ王国のソイファ王太子殿下もしようとしたことだ。
ソイファ王太子殿下の場合は口先だけだったけど。
兄ちゃんは口で勝っていたが。
あのとき、兄ちゃんはここまで力を解放していなかった。
迫力はあったが実力行使をしようとは微塵もしていなかった。
「ソイファ王太子殿下のときと何が違うんだ?」
つい声が出てしまっていた。
女王は俺を見て笑っただけだ。
その意図は恐ろしいほど感じ取れたが。
まだ、女王は何も言ってなかった。
「ああ、そういえばソイファ王太子殿下もお前たちを人質にしようとしていたことがあったな。やむにやまれぬ事情があるのは二人とも同じ立場だっただろうが、実際のところどちらの事情も俺には関係のないことだ。だが、俺は恩知らずではない。オルレアの処遇についてはアレが一番最良だ」
「おおっ、つまり、ソイファ王太子殿下にはまだまだ利用価値があったと」
微かに後ろを向いた兄ちゃんの視線が俺に刺さった。
「んー、まあ、そういうことでいいか」
ということは、違うのか。
兄ちゃんの魔法の盾たちにもソイファ王太子殿下は慕われているようだからな。
兄ちゃんから生まれた魔法の盾が、兄ちゃんの意志と反することはないだろう。
ソイファ王太子殿下と兄ちゃんが本当の兄弟だったのなら、ケンカしながら良い関係を築き上げていたのではないか?
深いため息を吐いた後、兄ちゃんの雰囲気が通常運転に戻った。
「一応言っておくが、ソイファ王太子殿下とコイツとでは全く違う。自国のことを憂いて、どうしようもない状況は同じなのかもしれないが、自らの判断で動く者に対しては俺も敬意を表する」
「私だって自分の判断で」
「そうか?ウィト王国から忍び込んだテオシント王国の生き残りの子孫からの指示と、亡霊たちからの恨み辛み嘆きを聞き入れていただけだろう、お前は。自分の意志はそこにあったか?」
「そ、それは」
女王は視線を俯かせたが、すぐに兄ちゃんに向いた。
「だからといって、テオシント王国の王族の血筋である私が逃げ出すわけにはいかないわ。私はこの地に縛られたテオシントの民を解放しなければならない」
「それがデント王国の国民を皆殺しすることか。お前が大切な者を手にかけてもその意志を貫くというのなら、その道を進めばいい」
「、、、ベルを国民にしたのは、私の意志を挫くためなの?」
「王族の責任を果たすために完遂するなら、それはそれで立派なのだろう。だが、テオシント王国はすでに滅びた国だ。王族といっても国民がおらず、そして、遠い昔に他国の庇護下に入り平民になったのだから、王族の責任などテオシント王国の王族の末裔には存在しない。テオシント王国の生き残りはウィト王国の国民であり、すでにテオシント王国の国民はどこにもいないのに、デント王国の国土を取り戻したところで住まう者は誰もいない。考えることを放棄すれば、最善の道を探すことさえ見失う」
「だったら、どうすれば良かったのよっ。私は彼らを放り出すことはできないっ」
女王が叫んだ。
彼らって、上空に群がるこの黒いモヤモヤたちのことだよねえ。
3
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる