28 / 207
2章 令嬢たちは嫉妬する
2-12 花びら舞う王子様7
しおりを挟む
王族の入場は他の皆が着座した後だ。
王族は第三王子から入場して、第二王子、第一王子、そして客人でもあるレオ様、マイア様と続く。
最後に国王夫妻が会場の大広間に入場する。
今回は親睦を図るという意味合いもあり、円卓が数多く並ぶ。
だが、着座の晩餐会で席の移動なんてものは認められていないし、こういう席で酌をするという行為など存在しない。
そして、親睦を図ると言いながら、一つの円卓に王族がまとめられているこの状況は、どうかな?と思わざる得ない。
王子にエスコートされた令嬢たちに他から鋭い視線が飛んでいるのを気づかないわけでもないと思うが。
俺はマイア様のエスコート役なので、マイア様の隣。
円卓なので、俺のもう片側の隣はレオ様である。母親の隣の方が良いんじゃないかと思ったが、レオ様はにっこにこである。その横の席にはレオ様がエスコートしている貴族令嬢である。幼くとも貴族令嬢であり、こういう場に気後れしていないのでそういう教育をしっかりされているのだろう。
マイア様が言っていた通り、王子の三人は白地の金の差し色の衣装である。同じく詰襟だが、兄弟お揃いになっていないのは、装飾品の違いだろう。それぞれに個性的なアクセントがある。こういう部分が服飾職人の腕の見せどころか。
国王は紫に金の差し色の衣装であり、王妃も紫のドレスである。
落ち着いた色合いであり、さすが一国の王と思わせる衣装である。
晩餐会は特に何事もなく終わった。
王族の皆様は会話がスムーズ。
途切れることなく円卓を賑わせる。
才能だな。
俺なんてうんうん頷いているだけだった。
まあ、ボロが出るから頷いているだけがちょうどいいんだけどね。
ソフィア嬢もソニア嬢も両親が来ているらしく、たまに別のテーブルに視線を向けていた。きっと家族仲が良いのだろう。この場では言葉を交わすことができないが、舞踏会やその後に話す時間はある。
晩餐会が終了すると、王族は退場。
控室に移って休憩し、会場の参加者が舞踏会の会場に移動したら、そちらに入場する。
マイア様の控室にレオ様たちとともに入室した。
侍女たちがマイア様の化粧を直し始める。
「どうしたの、オルレア。何か気になることでもあるの?」
マイア様が尋ねてきた。
はぐらかすのも問題があるか。
「マイア様、どうも人の動きがおかしい点が。もしかすると、王城内で妙な動きをする者が現れるかもしれない」
晩餐会での毒の騒ぎはなかった。
ただし、遅効性の毒なら判断がつかないが。
王城の食事に使う食器は毒に反応する魔法が使われていると聞くし大丈夫だと思いたい。
「今回は親衛隊も騎士団も総動員で王城、王都を守っているわよ。舞踏会に殴り込みに来るのなら、それなりの戦力がなければ難しいわ」
「、、、それもそうですね」
杞憂だと良いが。
今回、王城で保護した貴族令嬢の親族しか招待されていないが、両親や兄弟姉妹、従兄弟、叔父伯母等を数えると参加人数はかなりの数になる。王子の婚約者候補が保護されているのだから、家族も顔を売ろうと必死だ。着座でなければ、王族の円卓に突撃した者は多いはずだ。
王族への挨拶は舞踏会のときに並ぶのであろう。
あの会場で心の底から穏やかな表情だったのは、ソフィア嬢とソニア嬢のご両親のみである。。。
伯爵家って楽観的なのかな?
そんなわけないはずなんだけど。
娘が綺麗だったからかな。
「けれど、貴方のご両親は来ないのね。久々に会えると思ったのだけど」
「ああ、そうですね。忙しい人たちなので」
そう、うちの両親は来なかった。ここにいるのはオルレアではなくオルトなので。
最初から来ないと思っていたけど。
ため息を吐くほどでもない。あの人たちに俺は家族の一員として含まれていない。
父とのやり取りも上司と部下だ。
俺にはオルレアの演技を強要しても、自分たちまで演技をすることはないし、オルレアの捜索に手がいっぱいでこちらまで意識を向けることはない。
「でも、驚きました。お姉様の剣を取り上げようとするなんて」
「そうですねー、レオ様」
今の俺が腰に下げている剣は装飾剣である。
だが、晩餐会の会場に入場する前にとめられた。
国王の親衛隊隊員に。
マイア様がその者を咎めたことで、国王が取りなしたのだが。
彼の目はどう見ても、バーレイ侯爵家がふざけるな、と言っていた。
男装して晩餐会に出席することも、女性が帯剣することも許さない、という感情がダダ漏れだった。
その意志は王妹のマイア様を貶すことと同義なのに。
やれやれだ。
帯剣してなくても魔法で何とかできるが、やはり剣の形をしている物が手にあった方がなんとなく馴染みがあるのである。
最強の盾と言われても、実際に盾を手に持っているわけではない。
最強の盾も、最強の剣もある意味比喩だが、俺にとって魔法の盾は想像しやすい。
兄も魔法の剣が想像しやすいと言っていたのと同じように。
まあ、舞踏会の会場で何かあったとしても、サイもいるから平気か。強制的に協力してもらおう。
着座の晩餐会とは違って、舞踏会では人の出入りが会場から激しくなる。控室や別室に向かう者も多くなるし、使用人の数も、演奏者等の数も増える。
怪しい者が入り込む隙が増えるということでもある。
親衛隊も騎士団もすべての隊員が全隊員の顔を覚えているかというと、そんなわけがない。
人数が多くなれば多くなるほど、責任転嫁もしやすくなる。
「オルレアは王妃の親衛隊って興味ある?」
「いえ、私は人を守れるほど強くないので」
「あら、そうかしら?」
「ええ、守るべき方が国の中枢に近ければ近いほど責任が重くなります。今いる女性騎士の中でもその任に就ける方はごく僅かでしょう」
侍女のセイラが俺を見た。
俺も座らされて、他の侍女たちに化粧を直され、髪を整えられている。
ああ、この答えはオルレアらしくないか。
冷静すぎる返答だ。
オルレアなら美しい女性を守るためなら喜んで、とか言うかもしれない。
けれど、オルレアには王妃を守る力はない。
男相手なら自分を守るのでさえ難しい。
父が命令したのならともかく、そしてオルレアが選択したのでなければ、俺はのらりくらりと躱すだけだ。
実力がない者が安請け合いしたら、悲惨な結末を辿る。
オルレアが死ぬだけならまだいい。守れずに王妃も亡くなったら大問題だ。
「うちの国が落ち着いたら、私たちと一緒に来る?」
「え、」
確かレオ様に誘われたときも、この国から離れられないと伝えたはずだが。
そのことをマイア様が覚えていないわけがない。
けれど、今考えると、オルレアとしてその返答はおかしいか?
最強の剣と最強の盾は戦時でもなければこの国から出られないが、オルレアは国外に出ること自体は可能だ。
ただし、最強の剣と最強の盾の人質になる危険性がある国には行くことはできない。ということは国外といってもものすごく限られた数国になるが、政情が安定すればマイア様がいる時点でデント王国へオルレアが訪れることは可能なはずだ。
「私もお姉様と一緒に帰れるなら嬉しいです」
「そうですね。許されるならば、私も嬉しいです」
俺が許可されることはないが。
父にも、この国にも。
俺には自由など許されていないのだから。
けれど、オルレアなら勝手気ままに誰の承諾も得ずに行くのだろう。
今でさえ行方不明なのだから。
「オルレア、エスコートを頼むわね」
「はい、マイア様」
マイア様が微笑む。
「貴方は何を望んでいるの?結婚?騎士?それとも、まったく別の道?」
もし、俺に自由が許されるのだとしたら。
それは考えるだけ無駄なこと。
俺には死なないと自由は与えられないものなのだから。
王族は第三王子から入場して、第二王子、第一王子、そして客人でもあるレオ様、マイア様と続く。
最後に国王夫妻が会場の大広間に入場する。
今回は親睦を図るという意味合いもあり、円卓が数多く並ぶ。
だが、着座の晩餐会で席の移動なんてものは認められていないし、こういう席で酌をするという行為など存在しない。
そして、親睦を図ると言いながら、一つの円卓に王族がまとめられているこの状況は、どうかな?と思わざる得ない。
王子にエスコートされた令嬢たちに他から鋭い視線が飛んでいるのを気づかないわけでもないと思うが。
俺はマイア様のエスコート役なので、マイア様の隣。
円卓なので、俺のもう片側の隣はレオ様である。母親の隣の方が良いんじゃないかと思ったが、レオ様はにっこにこである。その横の席にはレオ様がエスコートしている貴族令嬢である。幼くとも貴族令嬢であり、こういう場に気後れしていないのでそういう教育をしっかりされているのだろう。
マイア様が言っていた通り、王子の三人は白地の金の差し色の衣装である。同じく詰襟だが、兄弟お揃いになっていないのは、装飾品の違いだろう。それぞれに個性的なアクセントがある。こういう部分が服飾職人の腕の見せどころか。
国王は紫に金の差し色の衣装であり、王妃も紫のドレスである。
落ち着いた色合いであり、さすが一国の王と思わせる衣装である。
晩餐会は特に何事もなく終わった。
王族の皆様は会話がスムーズ。
途切れることなく円卓を賑わせる。
才能だな。
俺なんてうんうん頷いているだけだった。
まあ、ボロが出るから頷いているだけがちょうどいいんだけどね。
ソフィア嬢もソニア嬢も両親が来ているらしく、たまに別のテーブルに視線を向けていた。きっと家族仲が良いのだろう。この場では言葉を交わすことができないが、舞踏会やその後に話す時間はある。
晩餐会が終了すると、王族は退場。
控室に移って休憩し、会場の参加者が舞踏会の会場に移動したら、そちらに入場する。
マイア様の控室にレオ様たちとともに入室した。
侍女たちがマイア様の化粧を直し始める。
「どうしたの、オルレア。何か気になることでもあるの?」
マイア様が尋ねてきた。
はぐらかすのも問題があるか。
「マイア様、どうも人の動きがおかしい点が。もしかすると、王城内で妙な動きをする者が現れるかもしれない」
晩餐会での毒の騒ぎはなかった。
ただし、遅効性の毒なら判断がつかないが。
王城の食事に使う食器は毒に反応する魔法が使われていると聞くし大丈夫だと思いたい。
「今回は親衛隊も騎士団も総動員で王城、王都を守っているわよ。舞踏会に殴り込みに来るのなら、それなりの戦力がなければ難しいわ」
「、、、それもそうですね」
杞憂だと良いが。
今回、王城で保護した貴族令嬢の親族しか招待されていないが、両親や兄弟姉妹、従兄弟、叔父伯母等を数えると参加人数はかなりの数になる。王子の婚約者候補が保護されているのだから、家族も顔を売ろうと必死だ。着座でなければ、王族の円卓に突撃した者は多いはずだ。
王族への挨拶は舞踏会のときに並ぶのであろう。
あの会場で心の底から穏やかな表情だったのは、ソフィア嬢とソニア嬢のご両親のみである。。。
伯爵家って楽観的なのかな?
そんなわけないはずなんだけど。
娘が綺麗だったからかな。
「けれど、貴方のご両親は来ないのね。久々に会えると思ったのだけど」
「ああ、そうですね。忙しい人たちなので」
そう、うちの両親は来なかった。ここにいるのはオルレアではなくオルトなので。
最初から来ないと思っていたけど。
ため息を吐くほどでもない。あの人たちに俺は家族の一員として含まれていない。
父とのやり取りも上司と部下だ。
俺にはオルレアの演技を強要しても、自分たちまで演技をすることはないし、オルレアの捜索に手がいっぱいでこちらまで意識を向けることはない。
「でも、驚きました。お姉様の剣を取り上げようとするなんて」
「そうですねー、レオ様」
今の俺が腰に下げている剣は装飾剣である。
だが、晩餐会の会場に入場する前にとめられた。
国王の親衛隊隊員に。
マイア様がその者を咎めたことで、国王が取りなしたのだが。
彼の目はどう見ても、バーレイ侯爵家がふざけるな、と言っていた。
男装して晩餐会に出席することも、女性が帯剣することも許さない、という感情がダダ漏れだった。
その意志は王妹のマイア様を貶すことと同義なのに。
やれやれだ。
帯剣してなくても魔法で何とかできるが、やはり剣の形をしている物が手にあった方がなんとなく馴染みがあるのである。
最強の盾と言われても、実際に盾を手に持っているわけではない。
最強の盾も、最強の剣もある意味比喩だが、俺にとって魔法の盾は想像しやすい。
兄も魔法の剣が想像しやすいと言っていたのと同じように。
まあ、舞踏会の会場で何かあったとしても、サイもいるから平気か。強制的に協力してもらおう。
着座の晩餐会とは違って、舞踏会では人の出入りが会場から激しくなる。控室や別室に向かう者も多くなるし、使用人の数も、演奏者等の数も増える。
怪しい者が入り込む隙が増えるということでもある。
親衛隊も騎士団もすべての隊員が全隊員の顔を覚えているかというと、そんなわけがない。
人数が多くなれば多くなるほど、責任転嫁もしやすくなる。
「オルレアは王妃の親衛隊って興味ある?」
「いえ、私は人を守れるほど強くないので」
「あら、そうかしら?」
「ええ、守るべき方が国の中枢に近ければ近いほど責任が重くなります。今いる女性騎士の中でもその任に就ける方はごく僅かでしょう」
侍女のセイラが俺を見た。
俺も座らされて、他の侍女たちに化粧を直され、髪を整えられている。
ああ、この答えはオルレアらしくないか。
冷静すぎる返答だ。
オルレアなら美しい女性を守るためなら喜んで、とか言うかもしれない。
けれど、オルレアには王妃を守る力はない。
男相手なら自分を守るのでさえ難しい。
父が命令したのならともかく、そしてオルレアが選択したのでなければ、俺はのらりくらりと躱すだけだ。
実力がない者が安請け合いしたら、悲惨な結末を辿る。
オルレアが死ぬだけならまだいい。守れずに王妃も亡くなったら大問題だ。
「うちの国が落ち着いたら、私たちと一緒に来る?」
「え、」
確かレオ様に誘われたときも、この国から離れられないと伝えたはずだが。
そのことをマイア様が覚えていないわけがない。
けれど、今考えると、オルレアとしてその返答はおかしいか?
最強の剣と最強の盾は戦時でもなければこの国から出られないが、オルレアは国外に出ること自体は可能だ。
ただし、最強の剣と最強の盾の人質になる危険性がある国には行くことはできない。ということは国外といってもものすごく限られた数国になるが、政情が安定すればマイア様がいる時点でデント王国へオルレアが訪れることは可能なはずだ。
「私もお姉様と一緒に帰れるなら嬉しいです」
「そうですね。許されるならば、私も嬉しいです」
俺が許可されることはないが。
父にも、この国にも。
俺には自由など許されていないのだから。
けれど、オルレアなら勝手気ままに誰の承諾も得ずに行くのだろう。
今でさえ行方不明なのだから。
「オルレア、エスコートを頼むわね」
「はい、マイア様」
マイア様が微笑む。
「貴方は何を望んでいるの?結婚?騎士?それとも、まったく別の道?」
もし、俺に自由が許されるのだとしたら。
それは考えるだけ無駄なこと。
俺には死なないと自由は与えられないものなのだから。
4
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる