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8章 愚者は踊り続ける
8-20 逃がさない
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朝。
ゾーイの温かさを感じながら目が覚める。
今朝ももれなく俺は抱き枕化している。
王都は寒いし、俺の寮室の場合、最低限の暖房しか入っていない。
朝は冷えるのだ。
ゾーイもまだ寝ているし、このままゾーイの温さを味わっておこう。
ゾーイは寝顔も整っているなあ。ヨダレとか垂らさないし、いびきもかかない。何て完璧な寝顔なんだ。まつ毛長いなあ。
ぬくぬく。
二度寝した。
二度寝できる幸せ。
冒険者になってから二度寝ってしたことあるかなー?
砦の管理者だからではなく、出勤前に家事をすべてこなさないといけないから早起きはしても、二度寝をすることはなかった。
家事を自分の分しかしない今は楽だな。ゾーイがやってしまうことも多いし。A級魔導士だから冒険者で稼げるだろうし、こういう夫を持つと完璧だな。
もうあの家に帰ることはないから、あの家の家事をすることはない。
「ん、、、」
目を開けると、ゾーイの目と合った。
今日もゾーイはイケメンだなあ。ほんの少しはにかんだ笑顔も可愛いぞ。
「おはよう、リアム」
「おはよ」
ゾーイは二度寝の俺より先に目が覚めていたらしい。
いつもと違うのは、ゾーイもまだ俺を抱きしめているが、俺もゾーイを抱きしめているということだ。
ぎゅむ。
「リ、リアム?」
ゾーイが真っ赤になった。
おやおや。
「ゾーイ様、朝のお仕度の準備が整いました。お召し替えを」
ゾーイの従者は優秀だから、この状態に何の反応も示さない。それとも、もうそういう仲だと思っているのかな?服はお互い着ているぞ。
「、、、リアム、既婚者じゃなかったのか?この状態は結婚の誓約に引っかからないのか?」
従者の横にバージがいた。
ゾーイの従者はもう勝手に入室してー、と入室許可の誓約魔法を使っているので出入り自由である。いちいち戸を開けていると面倒な状態になってしまったので。
だって、この従者くん、朝早いんだもん。せっかく朝早く家事をしなくても良いんだから寝かせてよ。
従者が入室できるので、バージがノックすれば従者は招き入れる。
結婚の誓約というのは、昨日の俺のマントを見たか、噂で聞いたのだろうな。
既婚者扱いのマントを。
一対一の結婚の誓約の場合、ベッドで抱き合って違う相手と寝ているというこの状態は、同性でも完全にアウトだ。もちろんベッド内でそういう行為をしていなくとも。
この国は同性でも結婚の誓約ができるから、同性相手でも不貞になる。
「おはよう、バージ。ああ、普通の結婚の誓約だとダメだろうなあ。俺の場合、一生涯ともにいるという誓約だからなあ」
「まさか、リアムは王族と同じくハーレム状態なのかっ」
モフモフハーレムか?
バージがちょっと興奮しているようなんだけどー、ちょっと勘違いしてない?
「他にもいろいろ条件はあるが、俺の場合、今、誓約しているのは砦の守護獣のクロと。学園卒業後、砦に戻ってから説明後にシロ様との誓約をするから一対一ではないんだ」
「あー、辺境伯の誓約獣かあ。確かに結婚の誓約と同等のものと言えるのか」
少しガッカリしたような顔をするのはどうなんだろうな?
バージは何を期待していたんだろう。
「リアム、できれば腕の力を緩めてほしい」
あ、ゾーイの顔がまだ真っ赤だ。
俺、ベッドの中でぎゅむーと抱きしめたままだった。
さすがに俺も冒険者。腕の力は負けてない。
「ゾーイは温かいからなあ」
「子ども体温ってヤツか?」
バージがニヤニヤ聞いてきた。
「、、、子ども体温ねえ。ゾーイのあそこは立派だからなあ。今も硬く」
俺がすべてを話す前に、ゾーイがガバっとベッドから起き上がり、洗面所の方へ行ってしまった。従者もついていく。
成人したといえども、十五歳。元気なのである。
「もう少し気遣ってやれよ」
「俺で勃つなら何も問題ないだろ?」
「、、、それだとリアムがゾーイを受け入れても良いように聞こえるんだが」
「ん?ゾーイって俺のこと好きだと思っていたんだが、もしかして違うのか?」
あれ?俺って勘違いしてた?他人から見ると違うのか?
「いや、違わないが。リアムが正確に把握しているとは思わなかった」
「俺も好きじゃないと、さすがに保護者になってまで砦に連れて行こうとは思わないぞ」
「ゾーイに命の値段を払わせるためじゃないのか」
「それはゾーイを逃がさないための手段だよ。バージに言ってなかったか?」
「、、、説明を受けた気はするが、命の値段を払わせるために逃さないものだと思っていた」
「A級魔導士として逃したくない気持ちはホントだけど」
「いや、それは置いといて、ゾーイのどこに惚れる要素がある?顔か?魔法かっ?キッカケは何?実はリアムはヘタレ好きなのか。リアムが魔の森でゾーイの命を救ったんだろ」
バージ、キミ、意外とひどいこと言ってない?
ゾーイってバージから見ると顔と魔法しか良いところないの?けっこう頭も良いんだよ。努力家だし、親切だし。
「ゾーイは俺の忘れ物のペンを届けてくれたから」
「へ?」
バージが意味わからないって顔をした。
「下心なしに俺より先に何かしてくれる人って俺にとって貴重なんだよ。それだけでも俺は惚れる」
母上、シロ様以上かどうかは別としてね。
「あー、そうなのか。下心なしってところが重要なのか。苦労したんだな、リアムも」
バージは勝手に解釈したようだ。
ちょっと違うようだが。まあ、大差はないか。
相手に少しでも俺を利用したいというような思惑があったら、その時点で何かが違うからね。
「仕事とか関係なしに無条件に俺に対して何かを先にしてくれる人は限りなく少ないからなあ」
「、、、忘れ物??ペン???」
洗面所への扉に半分隠れて、ゾーイが覚えてない、、、って顔をしている。
彼にとっては覚えていないくらいささやかなこと。他意もなくやったこと。だから、良いのだが。
「けど、リアムは俺に、お前は今後、俺に直接関わらないでくれ、と言った」
「よく覚えているな」
「もらった誓約魔法の刻印を何度も聞いているから」
「そりゃ、関わったら、こうなるのが目に見えていたからじゃないか」
「こうなるの、とは具体的に?」
バージの方が疑問を呈した。これのどれが該当するということか?
バージにはわかりにくかったと思うので説明をしておこうか。
「ゾーイ・マックレーを俺は魔の森で魔物から助けはしたが、その目には侯爵家の権力を使ってその事実を握り潰そうとしていた。だからこそ、誓約魔法で俺は逃げられないように縛ったんだが、逃げたいと思っている人間を俺がどんなに懐柔しようともお互い不幸になるだけだ。だから、ビジネスライクに処理した方が都合が良かったし、俺に直接関わらない方が、俺がゾーイを束縛することもなかった。お金を支払えば、ゾーイは自由になれる可能性があった」
「、、、ゾーイが命を助けられて、一方的に好きになっているのかと思いきや、リアムのは計算かっ。計算高いのかっ。結局リアムが望む逃げられない状態にゾーイはなっているじゃないか、自分の意志でっ」
「何でだろうね?」
ゾーイが寄って来るのなら、逃がさないに決まっているじゃないか。逃がせなくなるのがわかっているから、放置していたのになあ。
「二人とも変だからだろっ。末永くお幸せにっ」
「とは言っても、ゾーイとのそういう誓約は砦の守護獣が許すかどうかなんだよな」
「僕はリアムがお昼の約束を守ってくれればどうでもいいよー」
ベッドの上に座っている俺の膝の上にちょこんとクロが現れた。
呼ばれもしないのに出て来る。まだ、朝だけど。
「クロはともかく、シロ様は?」
「シロは大反対するだろうねえ。だって、シロは束縛系で独り占めしたいから」
そんな気はした。けど。
「それって、そもそも破綻してないか?クロがいるんだから」
「そうそう。だから、仕方のないことだから、リアムは複数人と一生涯ともにいるという誓約はしても大丈夫だよ。けれど、相手がニ十五歳くらいまでにしないと、結局はリアムが見送ることになるから、リアムの愉快な奴隷たちや料理長とも誓約を結びたいのなら、彼らは早めに決断しておかないと手遅れになるよー」
クロの言葉に、俺の動きはとまった。
砦の守護獣とともに生きるのは俺だけだと思っていた。
おそらく砂漠の国の神獣の誓約者のように。
ドクドクと心臓の音だけがうるさい。
もしも、そんなことが可能なら。
クトフは俺より六歳年上だ。まだ、ニ十五歳になるには時間がある。
問題は奴隷たちの方だが、誓約であの三人は死ぬまで俺の奴隷だから、死ねないと奴隷から解放されないのだが。。。
お?
ゾーイの温かさを感じながら目が覚める。
今朝ももれなく俺は抱き枕化している。
王都は寒いし、俺の寮室の場合、最低限の暖房しか入っていない。
朝は冷えるのだ。
ゾーイもまだ寝ているし、このままゾーイの温さを味わっておこう。
ゾーイは寝顔も整っているなあ。ヨダレとか垂らさないし、いびきもかかない。何て完璧な寝顔なんだ。まつ毛長いなあ。
ぬくぬく。
二度寝した。
二度寝できる幸せ。
冒険者になってから二度寝ってしたことあるかなー?
砦の管理者だからではなく、出勤前に家事をすべてこなさないといけないから早起きはしても、二度寝をすることはなかった。
家事を自分の分しかしない今は楽だな。ゾーイがやってしまうことも多いし。A級魔導士だから冒険者で稼げるだろうし、こういう夫を持つと完璧だな。
もうあの家に帰ることはないから、あの家の家事をすることはない。
「ん、、、」
目を開けると、ゾーイの目と合った。
今日もゾーイはイケメンだなあ。ほんの少しはにかんだ笑顔も可愛いぞ。
「おはよう、リアム」
「おはよ」
ゾーイは二度寝の俺より先に目が覚めていたらしい。
いつもと違うのは、ゾーイもまだ俺を抱きしめているが、俺もゾーイを抱きしめているということだ。
ぎゅむ。
「リ、リアム?」
ゾーイが真っ赤になった。
おやおや。
「ゾーイ様、朝のお仕度の準備が整いました。お召し替えを」
ゾーイの従者は優秀だから、この状態に何の反応も示さない。それとも、もうそういう仲だと思っているのかな?服はお互い着ているぞ。
「、、、リアム、既婚者じゃなかったのか?この状態は結婚の誓約に引っかからないのか?」
従者の横にバージがいた。
ゾーイの従者はもう勝手に入室してー、と入室許可の誓約魔法を使っているので出入り自由である。いちいち戸を開けていると面倒な状態になってしまったので。
だって、この従者くん、朝早いんだもん。せっかく朝早く家事をしなくても良いんだから寝かせてよ。
従者が入室できるので、バージがノックすれば従者は招き入れる。
結婚の誓約というのは、昨日の俺のマントを見たか、噂で聞いたのだろうな。
既婚者扱いのマントを。
一対一の結婚の誓約の場合、ベッドで抱き合って違う相手と寝ているというこの状態は、同性でも完全にアウトだ。もちろんベッド内でそういう行為をしていなくとも。
この国は同性でも結婚の誓約ができるから、同性相手でも不貞になる。
「おはよう、バージ。ああ、普通の結婚の誓約だとダメだろうなあ。俺の場合、一生涯ともにいるという誓約だからなあ」
「まさか、リアムは王族と同じくハーレム状態なのかっ」
モフモフハーレムか?
バージがちょっと興奮しているようなんだけどー、ちょっと勘違いしてない?
「他にもいろいろ条件はあるが、俺の場合、今、誓約しているのは砦の守護獣のクロと。学園卒業後、砦に戻ってから説明後にシロ様との誓約をするから一対一ではないんだ」
「あー、辺境伯の誓約獣かあ。確かに結婚の誓約と同等のものと言えるのか」
少しガッカリしたような顔をするのはどうなんだろうな?
バージは何を期待していたんだろう。
「リアム、できれば腕の力を緩めてほしい」
あ、ゾーイの顔がまだ真っ赤だ。
俺、ベッドの中でぎゅむーと抱きしめたままだった。
さすがに俺も冒険者。腕の力は負けてない。
「ゾーイは温かいからなあ」
「子ども体温ってヤツか?」
バージがニヤニヤ聞いてきた。
「、、、子ども体温ねえ。ゾーイのあそこは立派だからなあ。今も硬く」
俺がすべてを話す前に、ゾーイがガバっとベッドから起き上がり、洗面所の方へ行ってしまった。従者もついていく。
成人したといえども、十五歳。元気なのである。
「もう少し気遣ってやれよ」
「俺で勃つなら何も問題ないだろ?」
「、、、それだとリアムがゾーイを受け入れても良いように聞こえるんだが」
「ん?ゾーイって俺のこと好きだと思っていたんだが、もしかして違うのか?」
あれ?俺って勘違いしてた?他人から見ると違うのか?
「いや、違わないが。リアムが正確に把握しているとは思わなかった」
「俺も好きじゃないと、さすがに保護者になってまで砦に連れて行こうとは思わないぞ」
「ゾーイに命の値段を払わせるためじゃないのか」
「それはゾーイを逃がさないための手段だよ。バージに言ってなかったか?」
「、、、説明を受けた気はするが、命の値段を払わせるために逃さないものだと思っていた」
「A級魔導士として逃したくない気持ちはホントだけど」
「いや、それは置いといて、ゾーイのどこに惚れる要素がある?顔か?魔法かっ?キッカケは何?実はリアムはヘタレ好きなのか。リアムが魔の森でゾーイの命を救ったんだろ」
バージ、キミ、意外とひどいこと言ってない?
ゾーイってバージから見ると顔と魔法しか良いところないの?けっこう頭も良いんだよ。努力家だし、親切だし。
「ゾーイは俺の忘れ物のペンを届けてくれたから」
「へ?」
バージが意味わからないって顔をした。
「下心なしに俺より先に何かしてくれる人って俺にとって貴重なんだよ。それだけでも俺は惚れる」
母上、シロ様以上かどうかは別としてね。
「あー、そうなのか。下心なしってところが重要なのか。苦労したんだな、リアムも」
バージは勝手に解釈したようだ。
ちょっと違うようだが。まあ、大差はないか。
相手に少しでも俺を利用したいというような思惑があったら、その時点で何かが違うからね。
「仕事とか関係なしに無条件に俺に対して何かを先にしてくれる人は限りなく少ないからなあ」
「、、、忘れ物??ペン???」
洗面所への扉に半分隠れて、ゾーイが覚えてない、、、って顔をしている。
彼にとっては覚えていないくらいささやかなこと。他意もなくやったこと。だから、良いのだが。
「けど、リアムは俺に、お前は今後、俺に直接関わらないでくれ、と言った」
「よく覚えているな」
「もらった誓約魔法の刻印を何度も聞いているから」
「そりゃ、関わったら、こうなるのが目に見えていたからじゃないか」
「こうなるの、とは具体的に?」
バージの方が疑問を呈した。これのどれが該当するということか?
バージにはわかりにくかったと思うので説明をしておこうか。
「ゾーイ・マックレーを俺は魔の森で魔物から助けはしたが、その目には侯爵家の権力を使ってその事実を握り潰そうとしていた。だからこそ、誓約魔法で俺は逃げられないように縛ったんだが、逃げたいと思っている人間を俺がどんなに懐柔しようともお互い不幸になるだけだ。だから、ビジネスライクに処理した方が都合が良かったし、俺に直接関わらない方が、俺がゾーイを束縛することもなかった。お金を支払えば、ゾーイは自由になれる可能性があった」
「、、、ゾーイが命を助けられて、一方的に好きになっているのかと思いきや、リアムのは計算かっ。計算高いのかっ。結局リアムが望む逃げられない状態にゾーイはなっているじゃないか、自分の意志でっ」
「何でだろうね?」
ゾーイが寄って来るのなら、逃がさないに決まっているじゃないか。逃がせなくなるのがわかっているから、放置していたのになあ。
「二人とも変だからだろっ。末永くお幸せにっ」
「とは言っても、ゾーイとのそういう誓約は砦の守護獣が許すかどうかなんだよな」
「僕はリアムがお昼の約束を守ってくれればどうでもいいよー」
ベッドの上に座っている俺の膝の上にちょこんとクロが現れた。
呼ばれもしないのに出て来る。まだ、朝だけど。
「クロはともかく、シロ様は?」
「シロは大反対するだろうねえ。だって、シロは束縛系で独り占めしたいから」
そんな気はした。けど。
「それって、そもそも破綻してないか?クロがいるんだから」
「そうそう。だから、仕方のないことだから、リアムは複数人と一生涯ともにいるという誓約はしても大丈夫だよ。けれど、相手がニ十五歳くらいまでにしないと、結局はリアムが見送ることになるから、リアムの愉快な奴隷たちや料理長とも誓約を結びたいのなら、彼らは早めに決断しておかないと手遅れになるよー」
クロの言葉に、俺の動きはとまった。
砦の守護獣とともに生きるのは俺だけだと思っていた。
おそらく砂漠の国の神獣の誓約者のように。
ドクドクと心臓の音だけがうるさい。
もしも、そんなことが可能なら。
クトフは俺より六歳年上だ。まだ、ニ十五歳になるには時間がある。
問題は奴隷たちの方だが、誓約であの三人は死ぬまで俺の奴隷だから、死ねないと奴隷から解放されないのだが。。。
お?
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