解放の砦

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4章 闇夜を彷徨う

4-28 疲れる会話でもしなければならないとき

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「、、、おはよう」

「おはようございます、リアム様」

 三人が声を揃えて挨拶を返す。
 後ろのテントではスヤスヤと五人が寝ているのだろう。狭いだろうけど。
 このテントは保護色となっているので魔物も近づかないと視認できないのだが、さすがに大きいと気づかれる。コレが魔の大平原の奥地で使えるテントでは最大のサイズである。
 テントを使わず、そのまま寝ている冒険者の方が多いが。その方が魔物が現れたときに素早く動けるからだ。

 C級冒険者がいるので、彼らがテントを張っているところは魔の大平原の奥地でもC級冒険者エリアに近いところである。慣れてきたら奥に移動していくのだろう。

「リアム様がこちらまでお越しになるのを事前に知っていたなら、魔物の肉でも焼いて歓迎したのですが」

「いや、朝食は食べてきたから」

 うん、こんな会話しにここまで来たわけではない。

「結局、五人とも仲間にする気か?」

「それが彼らの意志なら」

「三人がソレで良いのならソレで良いけど」

 ルー、レイ、ロウが俺を見ている。

「命令しないんですね。命に代えても砦の冒険者を守れ、とか」

「いや、冒険者なんだから自分の身は自分で守れよ、ってツッコミたくなる台詞だな。ただし彼らはまだC級冒険者だ。B級冒険者なりの仲間への支援を頼む」

「彼らへの報酬は基本的には討伐ポイントになりますかね?俺たちが討伐した魔物はすべてリアム様のものですし」

「誓約魔法が魔物討伐の貢献度に応じてお前たちの分が俺にはわかるが、C級冒険者五人が束になったところで、お前ら一人分どころか半人分にも到底及ばないだろう。討伐ポイントを振り分けても、、、これだけ倒していたらお前たちもすぐにA級冒険者になれるんじゃないか?」

「リアム様のためですから」

 キラキラっ。
 あー、眩しい。
 コイツら良い笑顔で笑うようになったなあ。
 俺に向けての笑顔だから、超残念だけど。。。

「リアム様のその表情、御馳走さまです。ありがとうございますっ」

 三人とも座って拝むな。

 俺は彼らの周りを見た。
 周囲には魔物がゴロゴロと転がっている。
 テントの五人もこんな中で良く寝てられるな。それだけ疲れたということか。もちろん魔物討伐の疲れではない。

「あ、そうだ、リアム様、彼ら五人が持っている収納鞄は、」

「ああ、一人だけが大容量とは言っても、お前たちの持っている収納鞄の性能とはかなり違う。今日であっても三人分のすべての魔物を入れて持ち帰ることはできないだろう」

 これだけ倒していればね。
 過去に、コイツらは五人とも高性能の収納鞄を貢がれている。
 顔が良いって本当に良いよね。羨ましいよね。

「はあーーーーーーーーーーーーーっ、一週間に一度、討伐した魔物を回収に来る。早い内に他の方法を考える」

「ああっ、リアム様のため息っ」

 ロウ、吸い込もうとするなっ。手で払っちゃうぞ。残念な顔をするなっ、イケメンがっ。ホントに残念なイケメンになってしまった。
 三人とも収納鞄から討伐した魔物を取り出す。俺の収納鞄に詰め直す。
 コレ、E級、F級冒険者に解体やってもらおうかな。俺一人だと重労働だし時間がかかる。ものすごい数だ。

「って、リアム様の収納鞄どれだけ入るんですか」

「まだ、空きあるぞ。討伐した魔物はいくらでもウエルカムだぞ」

「満杯になるよう頑張りますっ」

「冗談だ。死なないようにキッチリと休憩は取れ」

 休みなく魔物討伐しそうで怖い。そしたら、仲間になった五人も満たされなくなる。本末転倒だ。

「ああっ、なんてお優しいお言葉。もったいない。カラダが燃えるっ」

「さすがにお前らが死んでほしいとは思っていない。C級冒険者の彼らもB級冒険者と一緒にいれば自ずと強くなる。環境が人を育てることが多いからな。面倒をかけるが、よろしく頼む」

「砦の冒険者にはお優しいのですね、リアム様は」

 レイが含みのある言葉を口にする。

「そうだな。砦を守ってくれる者には俺は優しいぞ。冒険者が死なずに成長していけば、砦に冒険者が増えていき、砦の守りが盤石になる。お前らもしっかりと砦を守ってくれるのなら、俺はお前らにも優しく接するぞ」

 三人がいきなり泣いた。
 え?そんなに優しくされるのが嫌なのか?
 蔑む目で見られた方が幸せなのか?
 俺、こういう人たちの感情を慮ることができないからなあ。

「ありがとうございます、リアム様。貴方に認められる日が来るかもしれないという希望があるだけでも幸せです。確かに、彼女を取られただのヤッカミや喧嘩を売られたことは山程ありましたが負け犬の遠吠えとしか思えず、今まで俺が好意を向ける他人からあんな目で見られたことはありませんでした。俺が可愛いと思う人物からの視線としては強烈でした。それこそが真実の愛だということを気づきました。肉体をつなぎ、快楽を与え合うのが愛だと勘違いしていました。貴方の物になれて、本当に俺は幸せです」

 ルーが涙のワケを説明してくれているが、どうしたらそれが真実の愛となるのか意味わからん。

「今はリズやラアが可哀想でなりません。なぜ、リアム様の物になるのを選択しなかったのかと不思議に思うくらいです」

「うん、俺からするとリズやラアの選択が正しい気がするんだけどな」

 向こうの方が絶対に正解だ。

「それに、俺がつけた奴隷紋には能力向上の機能はない。コレは元々お前たちの実力だ。最初から、その実力で魔物討伐していれば、お前たちだって砦の冒険者として重用されていたに違いない」

「それでは意味ないのですよ、リアム様。俺たちは貴方の物になりたかったのですから」

 レイが言い切った。

「お前たちは俺のものになったが、俺はお前たちのものにはならないぞ」

「だからこそ、良いのです」

 ルーがうっとりした視線で言ったが、だからそれがよくわからないんだって。いや、わからない方が良いのか?

「ああ、リアム様。けれど、リアム様が俺たちのところまで堕ちてくれるのならとことん付き合います」

 えーやだー。堕ちたくないー。
 けど、俺が考えるのと、三人が考える堕ちるは違う気がする。話し合う気もないが。

「リアム様も快楽の虜になりたいときは、是非とも俺たちを使ってください」

「気が向いたらねー」

 まあ、コイツらが上手いのは事実なんだろうけど。三人でも五人相手にして、相手が起きて来れないのだから。

「それとお前ら、砦の冒険者以外の者がいたら、俺に様をつけて呼ぶな」

 注意事項を言っておこう。奴隷になって舞い戻って来た日には、魔の大平原に放り出しただけだったからな。

「命令でしたら従います」

「もしお前らに危害を加える砦の冒険者がいたら、必ず自衛しろ」

「はい」

「俺がお前らに伝えていないのに、お前らが危害を加えることができる者が魔の大平原に入っていたら、徹底的に潰せ」

「はいっ、必ずっ」

 三人とも良い返事だよ。
 こういうことを深く説明しなくても察せられる能力があったのに、何で奴隷になる前にやらなかったんだよって、俺の奴隷になりたかったからか。
 自問自答が悲しい。

「さすがはリアム様、徹底的に潰せっ、なんてゾクゾクする命令をしてくれるなんて」

 顔だけ見ていれば爽やか笑顔のイケメン。言葉を聞いてはいけない。

「ちなみに、お前らが嬉しいと思う俺からのご褒美って何?絶対にやらないけど、参考までに」

 どこまで認識のズレがあるのか、認識しておかなきゃね。

「聞くだけ聞くところが鬼畜ですね。そこがまた良いけど。そうですね、俺はまた心行くまで踏んでほしいですね」

 コレがルー。踏まれると普通は屈辱と思いませんかね?

「俺は罵りの言葉をいただけると嬉しいですね。思いっ切り罵倒してください。俺も誓約魔法ができたら、何度も再生するのに」

 レイ、それは誓約魔法の誤用だぞ。

「踏まれるのなら、俺はアソコを踏んでほしいんですけど」

 最後の発言は残った者だ。。。

「えー、それなら俺も踏んでほしいなあ」

「それっ、リアム様にグリグリと踏みつけられたら最高だな。昇天する」

 全員で同意するな。
 前世ではアソコは鍛えられない代物だったが、この世界では違うらしい。興奮すると最強らしい。
 絶対に踏まないけど。靴を履いていても嫌だけど。
 というか、金的がご褒美になる可能性がある人物がここにいるので、この世界の女性たちは間違っても護身術で習わないように。

「聞かなかったことにしよう」

「ああっ、リアム様、そんなところも素敵っ」

 聞かなかったことにしよう。
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