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6章 花が咲く頃
6-11 再戦
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「ヴァンガル・イーグ、、、会ってそうそう再戦か」
俺はため息を吐きながら立ち上がる。
信者たちは後ろからの話し声がしっかり聞こえているようだが、まだ祈りのポーズを崩さない。
「おお、覚えてくれていて何よりだ。お前のことだから、すっかり忘れているかと思ったぞ」
ガタイのいい男が華やかな笑顔になった。
その通りです、と肯定しない方がいいんだろうな。
「今は大神官長殿とお呼びした方がいいか」
「いや、ザット・ノーレン、お前にはあのときと同じようにヴァンガルと呼んでほしい」
「あ、俺は今、レンと呼ばれているので、俺の方はレンと呼んでくれ、ヴァンガル殿」
「呼び捨てでいいのになー。レン、俺とお前の仲じゃないかー」
どんな仲やねん。公式の場でこの国のトップを呼び捨てしたら、俺が何者なんだって話になるだろう。
「得物は持っているだろうな?」
ヴァンガルがニヤリと笑う。わかってて言っている。ククーがそばにいたのだから、わかっていないわけがない。
「ああ、」
マントの隙間からチラリと見せてやる。
「ははっ、ククーが言った通りだったな」
ククーは大神官長に何を報告したんだか。
ろくでもない報告しかしていないに違いない。
「言葉では説明できないが、お前はお前だと。確かにお前で嬉しいよ」
「こちらこそ、ヴァンガル殿が思った通りの行動をしてくれて嬉しいよ。準備運動もしっかりしておいて正解だった」
「ええーっ?そうなの?教会の台本を読み合わせて、この会場でも台本通りのリハーサルやっていて、こっちのことに気づく素振りもないと少し前まで報告を受けていたのにー、お前の方が一枚上手だったかー。演技がうまいなー」
いや、思い出したのはほんの少し前だったんですけど。危ない、危ない。
「大神官長の神官服はもっとゴテゴテ煌びやかで動き辛いものだと思っていたが、神官のものと変わらないのか?」
「さっきまでは帽子も衣装もゴテゴテのものを着ていたぞ。お前と戦うんだ。あんなの着ていられるか」
わざわざ普段の神官服に着替えてきたと。
どれだけ本気なんだか。
俺の身長が低くなったからイケるとか思ってない?甘いよ、それは。
「服装を負けた言い訳にできなくて、残念だったな」
「煽りも健在か。お前に再戦するために鍛えてきたこの剣技、とくとご覧あれよ」
ヴァンガルが剣を掲げる。
大神官長って仕事忙しいんじゃないの?暇なの?好き勝手できるの?鍛えるのにどこまで時間をかけたの?その筋肉なんなの?
「皆の者、大神官長は剣の模擬試合をご希望されている。イスを持って端によって中央を開けよ。外部席の階段などに行ける者は行け。上から見る方が人の頭で邪魔されずに、滅多にない大神官長の戦いを見渡せるぞ」
冒険者ギルドの所長が拡声器を持って指示した。冒険者たちは立ち上がり速やかに移動して、招待客は慌てたように職員たちの誘導に従う。
臨機応変に、と言われていたとしても、本当に何かが起こるとは思わないよね。
護衛である神聖騎士たちは動かない。黙認なのかな?大神官長は強いから、有名でもない冒険者ごときに負けるとは思わないか。腕があるのなら初級中級と言われるダンジョンのこの街にはいない。
俺たちは壁際に立って、会場の準備が整うのを待つ。
「さすがだなー。現場での慌てふためく様を見たかったのに」
「いい性格だな。よくまあ大神官長になれたな」
憎めない性格とも言うが、俺としては上司としても同僚としても部下としても微妙だ。このヴァンガルは遠くから眺めているのが一番良い。ククーも苦労するだろうな。あ、だから行商人役で外に出ちゃうわけだ。毎日そばで仕えるのは疲れてしまうだろう。
「カリスマ性ってヤツー?魅力はどんなに隠してもバレちゃって大変なんだよ」
「ああ、見ていて面白いのか。飽きないのか。日常に刺激がまったくないのも困ったもんだなー、宗教国家は」
「あー、ホント、お前はお前だよ。どんな人間がお前の前に立とうとも、お前は対等に扱う。それこそ、どんなに肩書が立派な者でも孤児でも。アスア王国の国王にだって臣下の礼をしていても、お前、あの国王に会うとヅケヅケと意見を言っていてこちらはどんなにハラハラしたことか。どんなことをしてもお前を切ることはできなかっただろうが」
「、、、あれでも言いたいこと、三割ぐらいに抑えていた上に言葉は選んでいたんだが」
「、、、アレで。あの国王も不遇の時代が長過ぎて、お前に執着していたからな。一時の感情でお前を失う選択はしないだろう。レン、我が国の依頼では苦労をかけたな」
「この国のせいじゃないだろ。国王が俺につけた仲間のせいだ。大筋はククーから聞いているんだろ」
「だが、我が国がアスア王国に依頼しなければ、キミはあのままの地位でいられたはずだ」
「残念ながら、あの国からは遅かれ早かれ逃げることにはなっていただろう。アスア王国の英雄は使い捨てられる運命だ」
「レン、」
俺は剣の柄を握る。
「ヴァンガル殿、準備ができたようだぞ」
訓練場の中央が広々と開いている。
「よおっし、神聖騎士並びに神官、観客の前で結界を張れ。私が思う存分、力を発揮できる場にしろ」
ヴァンガルの肉声が訓練場に響いた。
彼らの目には少々そこまでする必要あるのかと言いたげな感情が浮かんでいるが、結界は張っておいた方がいい。訓練場が壊れかねない。
ヴァンガルの剣は剣でもギフトが付与される。
『乙女の祈り』というギフトが彼の強さを増幅する。よくわからんギフトだが、簡単に言えば女性の祈りがヴァンガルの力になるということだ。
冒険者には女性が少ない。この会場にいる女性の数も少ない。ビスタの仲間の女性二人は大神官長を見たいとは思ったらしいが、イーゼンはこの国の者だが他国に行っていた期間が長いのでそこまでではない。大神官長が冒険者ギルドにいる時間は北の門周辺の街の機能が麻痺するだろうと、三人はルルリを誘ってダンジョンに行っている。
冒険者ギルドの女性職員はいるが、それほどの数ではない。
対戦相手としては、ヴァンガルの力の増幅は最小限の方がいい。
ヴァンガルの剣は、剣の破壊力では説明しがたい。
普通の剣士ならば、剣の勝負なのに卑怯だと叫びたいところだろう。
俺とヴァンガルは訓練場の中央に立つ。
ビスタが拡声器を持って、近くに寄ってきた。
「それでは、ヴァンガル・イーグ大神官長と冒険者代表レンの剣の模擬試合を始めたいと思います。ちなみにー、このシアリーの街の冒険者はダンジョンで十一層から十五層までの巨大なゴーレムの実力は知っていると思いますがー、それをすべて剣のみで倒したのはレンでーす。というわけで、自分こそは剣では街一番と思っている冒険者も多いと思いますが、剣の代表として最適であり実績があるのでご了承を」
ビスタが説明している。
あー、剣の試合なのに、なぜ自分が選ばれなかったのかと思う冒険者が大勢いるのか。というか、自国のトップと遠慮なく剣でやりあえる冒険者がここにいるだろうか?祈りを捧げている時点で無理だと思うのだが。大神官長と剣を交えるだけでも幸せってヤツか?
今の俺はどう見ても魔法師、魔術師っぽいもんなー。
「ああ、でも、ゴーレムよりかは単調な戦いではないか」
「レン、その煽り癖、何とかした方がいいのではないか?」
「コレが煽りだと思うのなら、もう少し強くなってから出直してきた方がいいんじゃないか」
「言ったな。さっさと始めろ、審判っ」
「模擬試合、始めっ」
ビスタが開始の合図をした。と同時に二人動く。相手の出方を待っているなんて悠長なことはしない。
ヴァンガルの剣を剣で受け止める。かなりの重量級である。魔法で強化してなければ、あっさりポッキリ剣が折れているだろう。
ヴァンガルの剣は振るうだけで風圧が凄い。俺のマントが真横に靡くくらいである。
「マントなんて洒落たもの羽織ったままで戦うからだっ」
マントの死角に隠れて、ヴァンガルの剣が突っ込んできた。
俺はため息を吐きながら立ち上がる。
信者たちは後ろからの話し声がしっかり聞こえているようだが、まだ祈りのポーズを崩さない。
「おお、覚えてくれていて何よりだ。お前のことだから、すっかり忘れているかと思ったぞ」
ガタイのいい男が華やかな笑顔になった。
その通りです、と肯定しない方がいいんだろうな。
「今は大神官長殿とお呼びした方がいいか」
「いや、ザット・ノーレン、お前にはあのときと同じようにヴァンガルと呼んでほしい」
「あ、俺は今、レンと呼ばれているので、俺の方はレンと呼んでくれ、ヴァンガル殿」
「呼び捨てでいいのになー。レン、俺とお前の仲じゃないかー」
どんな仲やねん。公式の場でこの国のトップを呼び捨てしたら、俺が何者なんだって話になるだろう。
「得物は持っているだろうな?」
ヴァンガルがニヤリと笑う。わかってて言っている。ククーがそばにいたのだから、わかっていないわけがない。
「ああ、」
マントの隙間からチラリと見せてやる。
「ははっ、ククーが言った通りだったな」
ククーは大神官長に何を報告したんだか。
ろくでもない報告しかしていないに違いない。
「言葉では説明できないが、お前はお前だと。確かにお前で嬉しいよ」
「こちらこそ、ヴァンガル殿が思った通りの行動をしてくれて嬉しいよ。準備運動もしっかりしておいて正解だった」
「ええーっ?そうなの?教会の台本を読み合わせて、この会場でも台本通りのリハーサルやっていて、こっちのことに気づく素振りもないと少し前まで報告を受けていたのにー、お前の方が一枚上手だったかー。演技がうまいなー」
いや、思い出したのはほんの少し前だったんですけど。危ない、危ない。
「大神官長の神官服はもっとゴテゴテ煌びやかで動き辛いものだと思っていたが、神官のものと変わらないのか?」
「さっきまでは帽子も衣装もゴテゴテのものを着ていたぞ。お前と戦うんだ。あんなの着ていられるか」
わざわざ普段の神官服に着替えてきたと。
どれだけ本気なんだか。
俺の身長が低くなったからイケるとか思ってない?甘いよ、それは。
「服装を負けた言い訳にできなくて、残念だったな」
「煽りも健在か。お前に再戦するために鍛えてきたこの剣技、とくとご覧あれよ」
ヴァンガルが剣を掲げる。
大神官長って仕事忙しいんじゃないの?暇なの?好き勝手できるの?鍛えるのにどこまで時間をかけたの?その筋肉なんなの?
「皆の者、大神官長は剣の模擬試合をご希望されている。イスを持って端によって中央を開けよ。外部席の階段などに行ける者は行け。上から見る方が人の頭で邪魔されずに、滅多にない大神官長の戦いを見渡せるぞ」
冒険者ギルドの所長が拡声器を持って指示した。冒険者たちは立ち上がり速やかに移動して、招待客は慌てたように職員たちの誘導に従う。
臨機応変に、と言われていたとしても、本当に何かが起こるとは思わないよね。
護衛である神聖騎士たちは動かない。黙認なのかな?大神官長は強いから、有名でもない冒険者ごときに負けるとは思わないか。腕があるのなら初級中級と言われるダンジョンのこの街にはいない。
俺たちは壁際に立って、会場の準備が整うのを待つ。
「さすがだなー。現場での慌てふためく様を見たかったのに」
「いい性格だな。よくまあ大神官長になれたな」
憎めない性格とも言うが、俺としては上司としても同僚としても部下としても微妙だ。このヴァンガルは遠くから眺めているのが一番良い。ククーも苦労するだろうな。あ、だから行商人役で外に出ちゃうわけだ。毎日そばで仕えるのは疲れてしまうだろう。
「カリスマ性ってヤツー?魅力はどんなに隠してもバレちゃって大変なんだよ」
「ああ、見ていて面白いのか。飽きないのか。日常に刺激がまったくないのも困ったもんだなー、宗教国家は」
「あー、ホント、お前はお前だよ。どんな人間がお前の前に立とうとも、お前は対等に扱う。それこそ、どんなに肩書が立派な者でも孤児でも。アスア王国の国王にだって臣下の礼をしていても、お前、あの国王に会うとヅケヅケと意見を言っていてこちらはどんなにハラハラしたことか。どんなことをしてもお前を切ることはできなかっただろうが」
「、、、あれでも言いたいこと、三割ぐらいに抑えていた上に言葉は選んでいたんだが」
「、、、アレで。あの国王も不遇の時代が長過ぎて、お前に執着していたからな。一時の感情でお前を失う選択はしないだろう。レン、我が国の依頼では苦労をかけたな」
「この国のせいじゃないだろ。国王が俺につけた仲間のせいだ。大筋はククーから聞いているんだろ」
「だが、我が国がアスア王国に依頼しなければ、キミはあのままの地位でいられたはずだ」
「残念ながら、あの国からは遅かれ早かれ逃げることにはなっていただろう。アスア王国の英雄は使い捨てられる運命だ」
「レン、」
俺は剣の柄を握る。
「ヴァンガル殿、準備ができたようだぞ」
訓練場の中央が広々と開いている。
「よおっし、神聖騎士並びに神官、観客の前で結界を張れ。私が思う存分、力を発揮できる場にしろ」
ヴァンガルの肉声が訓練場に響いた。
彼らの目には少々そこまでする必要あるのかと言いたげな感情が浮かんでいるが、結界は張っておいた方がいい。訓練場が壊れかねない。
ヴァンガルの剣は剣でもギフトが付与される。
『乙女の祈り』というギフトが彼の強さを増幅する。よくわからんギフトだが、簡単に言えば女性の祈りがヴァンガルの力になるということだ。
冒険者には女性が少ない。この会場にいる女性の数も少ない。ビスタの仲間の女性二人は大神官長を見たいとは思ったらしいが、イーゼンはこの国の者だが他国に行っていた期間が長いのでそこまでではない。大神官長が冒険者ギルドにいる時間は北の門周辺の街の機能が麻痺するだろうと、三人はルルリを誘ってダンジョンに行っている。
冒険者ギルドの女性職員はいるが、それほどの数ではない。
対戦相手としては、ヴァンガルの力の増幅は最小限の方がいい。
ヴァンガルの剣は、剣の破壊力では説明しがたい。
普通の剣士ならば、剣の勝負なのに卑怯だと叫びたいところだろう。
俺とヴァンガルは訓練場の中央に立つ。
ビスタが拡声器を持って、近くに寄ってきた。
「それでは、ヴァンガル・イーグ大神官長と冒険者代表レンの剣の模擬試合を始めたいと思います。ちなみにー、このシアリーの街の冒険者はダンジョンで十一層から十五層までの巨大なゴーレムの実力は知っていると思いますがー、それをすべて剣のみで倒したのはレンでーす。というわけで、自分こそは剣では街一番と思っている冒険者も多いと思いますが、剣の代表として最適であり実績があるのでご了承を」
ビスタが説明している。
あー、剣の試合なのに、なぜ自分が選ばれなかったのかと思う冒険者が大勢いるのか。というか、自国のトップと遠慮なく剣でやりあえる冒険者がここにいるだろうか?祈りを捧げている時点で無理だと思うのだが。大神官長と剣を交えるだけでも幸せってヤツか?
今の俺はどう見ても魔法師、魔術師っぽいもんなー。
「ああ、でも、ゴーレムよりかは単調な戦いではないか」
「レン、その煽り癖、何とかした方がいいのではないか?」
「コレが煽りだと思うのなら、もう少し強くなってから出直してきた方がいいんじゃないか」
「言ったな。さっさと始めろ、審判っ」
「模擬試合、始めっ」
ビスタが開始の合図をした。と同時に二人動く。相手の出方を待っているなんて悠長なことはしない。
ヴァンガルの剣を剣で受け止める。かなりの重量級である。魔法で強化してなければ、あっさりポッキリ剣が折れているだろう。
ヴァンガルの剣は振るうだけで風圧が凄い。俺のマントが真横に靡くくらいである。
「マントなんて洒落たもの羽織ったままで戦うからだっ」
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