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5章 雪が解けゆく
5-9 将来の話をしよう
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家に帰ると、王子がシチューを温め直してくれていた。
言ってないのに、気遣いができるええ子や。
遅い夕食時間、屋台で買ってきたお惣菜も並べる。
シアリーの街の警備隊の事情聴取に付き合った後、俺は角ウサギのツノを大きくして全速力で急いで帰った。
それでも、帰宅時間が予定よりかなり遅くなったので申し訳なく思う。
「ヴィンセント、怒ってる?」
「人の生死が関わっているから仕方ないけど、私を最優先してくれたらものすごく嬉しいだろうね」
ヴィンセントが正直な感想を漏らした。
俺もヴィンセントが仕事かかりきりで書類と睨めっこだと寂しく思う。うーん、英雄時代はもう少しドライだった気もするのだが、カラダが若返ったようだから、精神面も引き摺られて幼くなってしまったのだろうか。
「ごちそうさま。レン、ヴィンセント、後片付けは僕とツノでやっておくから、部屋でゆっくりしていいよ」
王子がにこやかに告げた。ツノは仕方ねえなという顔をしながら俺に頷く。
「ごちそうさま。王子、ありがとう。片付けは任せる」
ヴィンセントが席を立って、俺の腕をつかんで立たせた。
つかまなくとも別に逃げないけど。
「ねえ、ヴィンセント、やっぱり怒ってる?」
「そう言いながら、何でニマニマしてるの?」
ヴィンセントに両手で俺の両頬をブニブニ押さえつけられる。
「ふへへー、怒るのは独占欲があるってことだから、俺がヴィンセントのそばにいて良いって思える」
「レンー、私をわざと怒らせる行為をするなら、檻の中に入れるよ。外に出さないよ。誰にも会わせないようにするよ」
「ヴィンセントも檻に一緒に入ってくれるならいいよー」
ヴィンセントは顔を俯かせるが、両手は俺の頬をブニブニしている。
「おやすみ、王子」
ヴィンセントは俺の手を引いて、さっさと食堂を後にした。
二人で王子の前でイチャつき過ぎるのは教育上良くないだろう。
ヴィンセントの部屋に行く。
ベッドで濃厚な口づけを交わす。
「レン、顔が緩みっぱなし。聖教国エルバノーンの暗殺者を捕まえたって言っていたけど、他に何か嬉しいことあったの?」
またヴィンセントに俺は両頬をプニプニされている。ベッドで二人絡みついているので、怒りが半減したらしい。ブニブニがプニプニぐらいの圧力に変化している。
「この家でヴィンセントと王子が俺を待っていてくれたのが嬉しい」
俺の言葉の真意はヴィンセントにはよく伝わらなかったらしい。プニプニが続行されている。
「ヴィンセントも知っているとは思うけど、俺は十歳まで孤児だった」
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは孤児だったのは周辺各国でも有名な話だ。神官であり、俺を保護しているのだから、噂だけでなくある程度の俺の情報は教会から届けられているだろう。
「アスア王国の王都は周辺の宗教国家の地下活動を抑えるために、多少貧しい地区はあってもスラム街は存在しない。そういう場所は徹底的に国に潰されていたからだ。俺は孤児仲間で身を寄せ合って生きていた。空き家等を転々としながら、河川敷や上下水道、橋の下、大人たちにとやかく言われないように様々な場所に移ったが、我が家として落ち着ける場所はなかった」
ヴィンセントが静かに頷く。
「俺が十歳のとき、アスア王国では寒波に見舞われて、この国のようにドカ雪が降った。まだまだ幼い子供も仲間に何人かいて、寒さでどうにもできなくなったとき、王都に立派な孤児院ができた。食べるものにも不自由なく、暖かく暮らせると言われて」
「うん」
「俺は行きたくなかった。俺を捕まえる罠だとわかっていたし。けれど、孤児仲間の一人から、俺がその孤児院に行かないと全員が外に放り出されると聞いて、仕方なく行った。俺はその孤児院に住むことはなく、アスア王国の王城に連れて行かれた。ノーレン公爵が俺の養父になったが、公爵家の屋敷に泊ったことはない。王城が俺の住んでいた場所と言えばそうなるが、俺はあの城がどうしても自分の家とは思えない。帰る家とは思えなかった」
ヴィンセントの手が、今は俺の髪を優しく撫でている。
「俺は二人におかえりって迎えられると、ものすごく嬉しい。俺にもはじめて帰ってきたいと思う家ができた。だから、ヴィンセントが考えているよりずっと、俺はこの家に帰れることを嬉しく思っているんだよ」
「そうか」
ヴィンセントの目が優しい。
「この家が使えるのがあと一年と少しの建国祭までとしても、俺はヴィンセントと王子がいてくれればどこでだって我が家だと思える気がするんだ」
ヴィンセントが俺に抱きついた。表情が見えなくなる。
「ごめん、いつかは話さなければいけないと思っていたんだ。生贄として王子が聖都に連れて行かれた後は、私も聖都に戻る予定だった」
「うん」
ククーから聞いて知っていたことはあるが、俺はヴィンセントのことをほとんど知らない。ククーのことは数年前までのことなら詳細に知っているが。ギフトがないと不便だが、本来の人同士の距離とはそういうものだろう。まったく会話をしなくても分かり合えるというのは幻想に近い。
「私の生まれたノエル家は元々魔力が高い一族で、この神聖国グルシアでも何人もの大神官を輩出した歴史ある家だが、うちはもう兄の一人が神官になっているから、私の職業選択は自由だった。けれど、初恋の人が年の離れた姉を嫁に選んだとき、もう誰とも結婚できないと思い込んだ」
思い込みの激しいお子ちゃまだったのだな。一途とも言う。
幼いヴィンセントも見てみたかった。
『蒼天の館』があれば過去視も可能だったのに残念だ。さすがに未来視はできないし、過去に戻ることもできないギフトだったが。他人には万能と言われているし、自分でも万能と思っていたが、できないことも多かった。
「今は、姉は魔族が惚れるほどの魔力の持ち主だったって認識しているけど、私が神官になったのは他の誰とも結ばれたくないというだけで、特段の志もない。レンが望むなら、神官だってこの任務が終われば辞めることもできる」
「この任務が成功に終われば、大神官への道も開かれるのに?」
ヴィンセントが腕の力を弱め、俺の目を見る。
「私の功績は兄に追加してもらうよ。私はレンと一緒に暮らしたい」
「じゃあ、俺が冒険者でヴィンセントと王子を養うよ。引退も考えていた冒険者だったけど、二人のためなら頑張って稼ぐよ。家は小さいかもしれないけど、ふた」
「レン、ちょっと待った」
将来の夢を語ろうとしたら、ヴィンセントにとめられた。
「この国で暮らすなら、報酬が良いのはやっぱり神官だな。私がレンを養いたい。が、神官は結婚できない」
「そうだね」
ヴィンセントがこれからのことをしっかり考えようとしてくれるのも嬉しい。
俺に養われるのは微妙なのかな?もう英雄じゃないし、高給取りは難しいだろう。
さすがに今の俺では贅沢な暮らしを約束することはできない。
「何かいい抜け道はないかな」
ヴィンセントがボソリと呟いた。
あ、ヴィンセントが俺とククーの悪影響を受けた。ククーが全面的に俺のせいだろって反論している気がするが。
「一年ちょっとあるんだから、二人で考えていこう。難しい道でも、不可能ではないのなら。でさ、王子が望むなら高等教育の学校に通わせてみたいな。俺、学校って通ったことないから」
「ワクワクしながら言わないで。教育ママ化しそうで怖いよ。自分が通うんじゃないんだから」
「若返ったとはいえ、俺のこの姿じゃさすがに学生は無理があるだろうからなー」
「自分が通いたかったのか。うーん、、、専門研究院とかならけっこう年齢が上の人間もいるけど、狭き門だな。まあ、その辺も情報を集めていこう」
二人で笑い合う。
ヴィンセントが部屋の明かりを消した。
お互いの熱が混じる。
これから、ゆっくりとお互いを知って行こう。
そして、将来の話をしよう。
今まで英雄以外の道を示されなかった俺の、新しい将来の道を。
言ってないのに、気遣いができるええ子や。
遅い夕食時間、屋台で買ってきたお惣菜も並べる。
シアリーの街の警備隊の事情聴取に付き合った後、俺は角ウサギのツノを大きくして全速力で急いで帰った。
それでも、帰宅時間が予定よりかなり遅くなったので申し訳なく思う。
「ヴィンセント、怒ってる?」
「人の生死が関わっているから仕方ないけど、私を最優先してくれたらものすごく嬉しいだろうね」
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俺もヴィンセントが仕事かかりきりで書類と睨めっこだと寂しく思う。うーん、英雄時代はもう少しドライだった気もするのだが、カラダが若返ったようだから、精神面も引き摺られて幼くなってしまったのだろうか。
「ごちそうさま。レン、ヴィンセント、後片付けは僕とツノでやっておくから、部屋でゆっくりしていいよ」
王子がにこやかに告げた。ツノは仕方ねえなという顔をしながら俺に頷く。
「ごちそうさま。王子、ありがとう。片付けは任せる」
ヴィンセントが席を立って、俺の腕をつかんで立たせた。
つかまなくとも別に逃げないけど。
「ねえ、ヴィンセント、やっぱり怒ってる?」
「そう言いながら、何でニマニマしてるの?」
ヴィンセントに両手で俺の両頬をブニブニ押さえつけられる。
「ふへへー、怒るのは独占欲があるってことだから、俺がヴィンセントのそばにいて良いって思える」
「レンー、私をわざと怒らせる行為をするなら、檻の中に入れるよ。外に出さないよ。誰にも会わせないようにするよ」
「ヴィンセントも檻に一緒に入ってくれるならいいよー」
ヴィンセントは顔を俯かせるが、両手は俺の頬をブニブニしている。
「おやすみ、王子」
ヴィンセントは俺の手を引いて、さっさと食堂を後にした。
二人で王子の前でイチャつき過ぎるのは教育上良くないだろう。
ヴィンセントの部屋に行く。
ベッドで濃厚な口づけを交わす。
「レン、顔が緩みっぱなし。聖教国エルバノーンの暗殺者を捕まえたって言っていたけど、他に何か嬉しいことあったの?」
またヴィンセントに俺は両頬をプニプニされている。ベッドで二人絡みついているので、怒りが半減したらしい。ブニブニがプニプニぐらいの圧力に変化している。
「この家でヴィンセントと王子が俺を待っていてくれたのが嬉しい」
俺の言葉の真意はヴィンセントにはよく伝わらなかったらしい。プニプニが続行されている。
「ヴィンセントも知っているとは思うけど、俺は十歳まで孤児だった」
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは孤児だったのは周辺各国でも有名な話だ。神官であり、俺を保護しているのだから、噂だけでなくある程度の俺の情報は教会から届けられているだろう。
「アスア王国の王都は周辺の宗教国家の地下活動を抑えるために、多少貧しい地区はあってもスラム街は存在しない。そういう場所は徹底的に国に潰されていたからだ。俺は孤児仲間で身を寄せ合って生きていた。空き家等を転々としながら、河川敷や上下水道、橋の下、大人たちにとやかく言われないように様々な場所に移ったが、我が家として落ち着ける場所はなかった」
ヴィンセントが静かに頷く。
「俺が十歳のとき、アスア王国では寒波に見舞われて、この国のようにドカ雪が降った。まだまだ幼い子供も仲間に何人かいて、寒さでどうにもできなくなったとき、王都に立派な孤児院ができた。食べるものにも不自由なく、暖かく暮らせると言われて」
「うん」
「俺は行きたくなかった。俺を捕まえる罠だとわかっていたし。けれど、孤児仲間の一人から、俺がその孤児院に行かないと全員が外に放り出されると聞いて、仕方なく行った。俺はその孤児院に住むことはなく、アスア王国の王城に連れて行かれた。ノーレン公爵が俺の養父になったが、公爵家の屋敷に泊ったことはない。王城が俺の住んでいた場所と言えばそうなるが、俺はあの城がどうしても自分の家とは思えない。帰る家とは思えなかった」
ヴィンセントの手が、今は俺の髪を優しく撫でている。
「俺は二人におかえりって迎えられると、ものすごく嬉しい。俺にもはじめて帰ってきたいと思う家ができた。だから、ヴィンセントが考えているよりずっと、俺はこの家に帰れることを嬉しく思っているんだよ」
「そうか」
ヴィンセントの目が優しい。
「この家が使えるのがあと一年と少しの建国祭までとしても、俺はヴィンセントと王子がいてくれればどこでだって我が家だと思える気がするんだ」
ヴィンセントが俺に抱きついた。表情が見えなくなる。
「ごめん、いつかは話さなければいけないと思っていたんだ。生贄として王子が聖都に連れて行かれた後は、私も聖都に戻る予定だった」
「うん」
ククーから聞いて知っていたことはあるが、俺はヴィンセントのことをほとんど知らない。ククーのことは数年前までのことなら詳細に知っているが。ギフトがないと不便だが、本来の人同士の距離とはそういうものだろう。まったく会話をしなくても分かり合えるというのは幻想に近い。
「私の生まれたノエル家は元々魔力が高い一族で、この神聖国グルシアでも何人もの大神官を輩出した歴史ある家だが、うちはもう兄の一人が神官になっているから、私の職業選択は自由だった。けれど、初恋の人が年の離れた姉を嫁に選んだとき、もう誰とも結婚できないと思い込んだ」
思い込みの激しいお子ちゃまだったのだな。一途とも言う。
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「今は、姉は魔族が惚れるほどの魔力の持ち主だったって認識しているけど、私が神官になったのは他の誰とも結ばれたくないというだけで、特段の志もない。レンが望むなら、神官だってこの任務が終われば辞めることもできる」
「この任務が成功に終われば、大神官への道も開かれるのに?」
ヴィンセントが腕の力を弱め、俺の目を見る。
「私の功績は兄に追加してもらうよ。私はレンと一緒に暮らしたい」
「じゃあ、俺が冒険者でヴィンセントと王子を養うよ。引退も考えていた冒険者だったけど、二人のためなら頑張って稼ぐよ。家は小さいかもしれないけど、ふた」
「レン、ちょっと待った」
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「この国で暮らすなら、報酬が良いのはやっぱり神官だな。私がレンを養いたい。が、神官は結婚できない」
「そうだね」
ヴィンセントがこれからのことをしっかり考えようとしてくれるのも嬉しい。
俺に養われるのは微妙なのかな?もう英雄じゃないし、高給取りは難しいだろう。
さすがに今の俺では贅沢な暮らしを約束することはできない。
「何かいい抜け道はないかな」
ヴィンセントがボソリと呟いた。
あ、ヴィンセントが俺とククーの悪影響を受けた。ククーが全面的に俺のせいだろって反論している気がするが。
「一年ちょっとあるんだから、二人で考えていこう。難しい道でも、不可能ではないのなら。でさ、王子が望むなら高等教育の学校に通わせてみたいな。俺、学校って通ったことないから」
「ワクワクしながら言わないで。教育ママ化しそうで怖いよ。自分が通うんじゃないんだから」
「若返ったとはいえ、俺のこの姿じゃさすがに学生は無理があるだろうからなー」
「自分が通いたかったのか。うーん、、、専門研究院とかならけっこう年齢が上の人間もいるけど、狭き門だな。まあ、その辺も情報を集めていこう」
二人で笑い合う。
ヴィンセントが部屋の明かりを消した。
お互いの熱が混じる。
これから、ゆっくりとお互いを知って行こう。
そして、将来の話をしよう。
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