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5章 雪が解けゆく
5-3 箱入り娘 ※ビスタ視点
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◆ビスタ視点◆
ダンジョンからシアリーの街の冒険者ギルドに戻ってきた。
レンが薬草納品があると言ったら、メイサ嬢に応接室に連れて行かれてしまった。昼食を一緒に食べよーって話をしていたのに。でも、待つよ。待ってるよ。
今日は所長と主任がいるから、十五層にある薬草畑を視察しただけだ。にもかかわらず、ダンジョンでのんびりとお茶したせいで昼近くになっている。
主に、せっかくだからとこの辺では見ない珍しく美味しいお菓子をたらふく頬張った三人のせいだが。
最後に、北の女王に気に入ったのならと言われ、気を使われてお土産として渡されたほどだった。
あんなに食べても、昼食は行くんだね。胃、大丈夫なの、キミたち三人。
「レンってやっぱり良いとこの坊ちゃんだったんだろうねー」
「跡目争いかなー」
「毒、か」
ボソッとイーゼンも呟く。イーゼンもあんなに甘いものを食べるとは思っていなかったよ。確かに、あのお菓子、美味しかったけど。
珍しい国外のお土産を何度ももらえるほどの家で、毒入りで殺されそうになるほどの跡取り問題があるような家の出だったため自国から逃げてきた、と普通の人間なら思うだろう。
国外からも狙われるって、どんな奴だよ。隣国の英雄だよ。自問自答。
英雄が何であんな姿になっているのか、ってところが本当に不思議なんだが。ギフトを失ったせいとか、呪いのせいとか、いろいろ推測はできるが、推測の域を出ない。
レンに英雄の面影がないわけでもないんだよな。
けれど、血縁関係があるだけと言われれば、そんな気もしてしまう。英雄は孤児だから血の繋がりなんてわからないけど。
本人はザット・ノーレンの名を隠す気がないので、聞いたらすんなり答えてくれそうな気もするんだけど。。。
貴方は隣国アスア王国の英雄ですか?
聞く勇気が俺にはない。
レンが肯定したら、俺はどうすればいいのか?本部に報告する?して、どうする?どうなる?
それに、他人にアレが隣国の英雄ザット・ノーレンと同一人物であると納得させる説明ができる自信は俺にはない。
俺は英雄と一度会って面識があるけど、それは決定打にならない。だって、顔も姿もすっかり違っているんだから。
本人が説明してくれないかな。
「ビスタ、冒険者登録したいって子が来ているんだけど」
冒険者ギルドの受付の一人に声をかけられた。
子?
視線を下に向けると、カウンターに赤いマントに包まれた子供がいる。フードを目深に被っており、誰かさんを思い起こす。そう思ったのは、仲間の三人も同じようで近寄ってくる。
「この子の書類の受付は終わったの?」
「あと登録料をもらったら」
「あっ、」
少女は財布のなかを覗いて辺りを見回す。
受付が尋ねる。
「どうしたの?」
「この国のお金じゃ足りない。近くに両替商はないですか?」
「どこの国のお金?」
「手持ちはアスア王国と聖教国エルバノーンのお金です」
これまた、微妙な二か国だな。
この少女が神聖国グルシアの人間ではないことがハッキリした。幼いゆえに甘いのか。しかし、聖教国エルバノーンの人間なら入国時に厳しいチェックをされたはずだ。問題はない。
が、この言葉に過剰反応したのが、俺の仲間の三人。
「そこの者、我が国に何しに来た。冒険者として登録するなら、その二国でも問題はないはずだ」
イーゼンよ、言いたいことはわかるけど。
急に顔が厳しいお兄さんに強い調子で言われたら驚くよね。怖いよね。
「え、あの、その」
「あれー?お嬢ちゃん、何でこの国に来たのか言えないのかなー?まさか、誰かを捜しに来たとか言わないよねー?」
センリよ、このお嬢ちゃんはどう見てもレンより幼いだろう。この子がレンをどうこうできると思っているのか。あの、規格外なレンを。毒だろうが、ギフトだろうが、何だろうがビクともしないぞ、アイツは。
「あ、私は、、、を、、、捜し、、、」
「えー、聞こえない。誰って?」
リンカよ、ない胸を張り出して威圧するな。
大人が寄ってたかって子供に詰め寄るな。見ている方がハラハラする。
カウンターにある書類を見る。彼女の名前はルルリ、人形遣いか、コレはギフトありだな。聖教国エルバノーンから来たのなら人形遣いの一族だろう。
「待っていてくれたのは嬉しいけど、何やってるの、あの三人?」
レンが応接室から出てきた。三人が子供に詰め寄る状況、一目見て理由がわかるわけがない。
「ああ、レン。あの嬢ちゃんがアスア王国と聖教国エルバノーンの金しかねーんだと。それで、冒険者登録料が払えない状況だ」
「うん?」
その説明でわかるわけないよな。あの三人はあの格好と外国から来たという点のみで、レンを追いかけてきた刺客だと思い込んでいる。子供だからこそ油断させて、ということもあるが、相手がレンなら子供だろうとジジイだろうと屈強な戦士だろうと無理だろう。
「私はお爺ちゃんの頼みでザット・ノーレンを追いかけてきたんですーっ」
圧に耐えかねた少女が大声で叫んだ。
少女とレンの間に仲間三人が移動する。レンを守るための行動だ。
「やはりレンを狙う刺」
「ああ、聖教国エルバノーンの人形遣いの爺さんの孫娘か。来ると聞いたのは二、三か月前だった気がするが、ようやく来たんだな、思ったより遅かったな」
「へ?」
俺も少女も仲間三人も、レンの言葉に微妙な返事をしてしまった。イーゼンはレンに言葉を遮られて可哀想だが、遮られて正解だ。仲間三人は隣国の英雄としてのザット・ノーレンではなく、別人と思っている冒険者レンとしてのザット・ノーレンと受け取った。だからこそレンを守るための行動だったのだが。
「知り合いか、レン」
「いいや、爺さんとも直接の面識はないぞ。爺さんの人形に追いかけまわされた記憶はあるが」
「は?」
「さて、ルルリだったか。お前も人形遣いなんだろ。どんな人形を操るんだ?」
お嬢ちゃんは突発的なことに慣れていないのか、レンに言われるままに赤いマントを捲ると、白い丸い毛玉たちが一面にいる。暖かそうだ、いや、違う。
白い毛玉には小さい目と口がそれぞれついている。可愛いと言えば、可愛い。いや、そうじゃない。どうもレンに毒されている。
「よしっ、合格。あの爺さんの人形と違って不気味じゃないっ」
力を込めてレンが何か言っている。
俺、半目になっちゃってるけど。
聖教国エルバノーンの人形遣いの爺さんはこのアスア王国周辺国家では有名だ。アスア王国の英雄の担当になる各国の諜報員の最初の洗礼となるのが、あの不気味な人形である。必ず英雄の周囲にうろちょろしているので、英雄を追いかけると必ず視界に入るのだ。夜、誰もいない場所で、あの人形に遭うとメンタルにダメージを食らうと評判だった。
英雄もあの人形、嫌だったんだな。英雄にはけっこう放置されていたって話だったけど。
って、おい、レン。お前、隣国の英雄だってこと隠す気ねえだろ。
このまま状況証拠を積み重ねていく気か。俺に探偵のように謎解きをさせる気か。
「ええっと、レンがこの子の面倒みるのか?」
「いや、俺はここでは居候の身だからな。誰かを連れて帰るなんてワガママを言うことはできない」
レンはけっこう薬草で稼いでいると思うんですけど、それでも居候扱いなの?相当な金持ち?どんな家?冒険者ギルドが総動員してもこのシアリーの街の中で見つけられなかったんだから、、、あえて聞かないけど。深く追求すると、冒険者ギルド本部に仲裁をお願いしなければならなくなる案件な気がする。シアリーの街の外の西や南は教会の土地だからね。
「大丈夫です。ザット・ノーレンを見つけるために軍資金を家からもらってきていますし、ダンジョンに潜って稼ぐ実力は多少なりとあるつもりです。宿屋に泊って捜します」
んー、この子、レンをザット・ノーレンとは認識していないみたいだ。
普通の人ならそうだろうね。だって、英雄の姿絵とは全然違うからね。
「じゃあ、メイサさんのところの宿屋を紹介してもらったら?あそこの食事、おいしいし」
「そうだねー。ルルリちゃんだっけー、あそこは良い宿だよー」
リンカよ、レンの言葉に乗っかるな。うちの愉快な仲間たちは、どうもまだルルリへの警戒を解いてない。近場で見張っておいてやろうという気がありありとわかる。
けれど、英雄担当の諜報員は紛れもなく英雄の情報のみを取り扱う者たちである。彼らは誰一人として暗殺に長けている者たちではない。聖教国エルバノーンの人形遣いの爺さんもやろうと思えばできるだろうが、彼も諜報員であり、それ以上でもそれ以下でもない。
あのギフト『蒼天の館』を持っている英雄を殺す必要はないのだ。できれば、英雄には自分の国に来てほしいくらいだったので、どこの国も英雄に暗殺者を向けることはない。各国が暗殺者を向かわせたのは、アスア王国の国王や上層部の方である。その英雄を狙っていない暗殺者の始末をアスア王国は英雄に頼んでいたのだから困ったものだ。
ちなみに、毒入りお菓子が英雄に渡されてしまうのは、アスア王国の国王も上層部も他国から無償でもらうお土産など信頼していないからだ。各国の要人たちは本当は国王や上層部が食べないかなーと思って超高価なお菓子やら酒やら何やらを渡しているのだが、飲食物の土産は毒が入っていようがなかろうが簡単に毒探知できる英雄に行ってしまう。先ほど挨拶していたあの国からのお土産です、とか言って。国に渡しているから、英雄に渡しても本来は何の問題もない。が、やはり毒入りじゃない美味しいお菓子やお酒の方が英雄には感謝されたようだ。基本的に毒入りじゃないお土産には英雄からのお礼状が届くので、毒入れなくて良かったと思った国も多いとか。。。
そして、今、各国の暗殺者たちは新英雄を狙っている。
「ところで、レン、お前も久々にあの宿に一泊ぐらいしていかないか」
「いや、あの一週間で外泊が禁止になったから無理だ」
レン、誰と暮らしているの?束縛系?
外泊禁止って、冒険者が言う言葉じゃないよね。レンは箱入り娘なの?
ダンジョンからシアリーの街の冒険者ギルドに戻ってきた。
レンが薬草納品があると言ったら、メイサ嬢に応接室に連れて行かれてしまった。昼食を一緒に食べよーって話をしていたのに。でも、待つよ。待ってるよ。
今日は所長と主任がいるから、十五層にある薬草畑を視察しただけだ。にもかかわらず、ダンジョンでのんびりとお茶したせいで昼近くになっている。
主に、せっかくだからとこの辺では見ない珍しく美味しいお菓子をたらふく頬張った三人のせいだが。
最後に、北の女王に気に入ったのならと言われ、気を使われてお土産として渡されたほどだった。
あんなに食べても、昼食は行くんだね。胃、大丈夫なの、キミたち三人。
「レンってやっぱり良いとこの坊ちゃんだったんだろうねー」
「跡目争いかなー」
「毒、か」
ボソッとイーゼンも呟く。イーゼンもあんなに甘いものを食べるとは思っていなかったよ。確かに、あのお菓子、美味しかったけど。
珍しい国外のお土産を何度ももらえるほどの家で、毒入りで殺されそうになるほどの跡取り問題があるような家の出だったため自国から逃げてきた、と普通の人間なら思うだろう。
国外からも狙われるって、どんな奴だよ。隣国の英雄だよ。自問自答。
英雄が何であんな姿になっているのか、ってところが本当に不思議なんだが。ギフトを失ったせいとか、呪いのせいとか、いろいろ推測はできるが、推測の域を出ない。
レンに英雄の面影がないわけでもないんだよな。
けれど、血縁関係があるだけと言われれば、そんな気もしてしまう。英雄は孤児だから血の繋がりなんてわからないけど。
本人はザット・ノーレンの名を隠す気がないので、聞いたらすんなり答えてくれそうな気もするんだけど。。。
貴方は隣国アスア王国の英雄ですか?
聞く勇気が俺にはない。
レンが肯定したら、俺はどうすればいいのか?本部に報告する?して、どうする?どうなる?
それに、他人にアレが隣国の英雄ザット・ノーレンと同一人物であると納得させる説明ができる自信は俺にはない。
俺は英雄と一度会って面識があるけど、それは決定打にならない。だって、顔も姿もすっかり違っているんだから。
本人が説明してくれないかな。
「ビスタ、冒険者登録したいって子が来ているんだけど」
冒険者ギルドの受付の一人に声をかけられた。
子?
視線を下に向けると、カウンターに赤いマントに包まれた子供がいる。フードを目深に被っており、誰かさんを思い起こす。そう思ったのは、仲間の三人も同じようで近寄ってくる。
「この子の書類の受付は終わったの?」
「あと登録料をもらったら」
「あっ、」
少女は財布のなかを覗いて辺りを見回す。
受付が尋ねる。
「どうしたの?」
「この国のお金じゃ足りない。近くに両替商はないですか?」
「どこの国のお金?」
「手持ちはアスア王国と聖教国エルバノーンのお金です」
これまた、微妙な二か国だな。
この少女が神聖国グルシアの人間ではないことがハッキリした。幼いゆえに甘いのか。しかし、聖教国エルバノーンの人間なら入国時に厳しいチェックをされたはずだ。問題はない。
が、この言葉に過剰反応したのが、俺の仲間の三人。
「そこの者、我が国に何しに来た。冒険者として登録するなら、その二国でも問題はないはずだ」
イーゼンよ、言いたいことはわかるけど。
急に顔が厳しいお兄さんに強い調子で言われたら驚くよね。怖いよね。
「え、あの、その」
「あれー?お嬢ちゃん、何でこの国に来たのか言えないのかなー?まさか、誰かを捜しに来たとか言わないよねー?」
センリよ、このお嬢ちゃんはどう見てもレンより幼いだろう。この子がレンをどうこうできると思っているのか。あの、規格外なレンを。毒だろうが、ギフトだろうが、何だろうがビクともしないぞ、アイツは。
「あ、私は、、、を、、、捜し、、、」
「えー、聞こえない。誰って?」
リンカよ、ない胸を張り出して威圧するな。
大人が寄ってたかって子供に詰め寄るな。見ている方がハラハラする。
カウンターにある書類を見る。彼女の名前はルルリ、人形遣いか、コレはギフトありだな。聖教国エルバノーンから来たのなら人形遣いの一族だろう。
「待っていてくれたのは嬉しいけど、何やってるの、あの三人?」
レンが応接室から出てきた。三人が子供に詰め寄る状況、一目見て理由がわかるわけがない。
「ああ、レン。あの嬢ちゃんがアスア王国と聖教国エルバノーンの金しかねーんだと。それで、冒険者登録料が払えない状況だ」
「うん?」
その説明でわかるわけないよな。あの三人はあの格好と外国から来たという点のみで、レンを追いかけてきた刺客だと思い込んでいる。子供だからこそ油断させて、ということもあるが、相手がレンなら子供だろうとジジイだろうと屈強な戦士だろうと無理だろう。
「私はお爺ちゃんの頼みでザット・ノーレンを追いかけてきたんですーっ」
圧に耐えかねた少女が大声で叫んだ。
少女とレンの間に仲間三人が移動する。レンを守るための行動だ。
「やはりレンを狙う刺」
「ああ、聖教国エルバノーンの人形遣いの爺さんの孫娘か。来ると聞いたのは二、三か月前だった気がするが、ようやく来たんだな、思ったより遅かったな」
「へ?」
俺も少女も仲間三人も、レンの言葉に微妙な返事をしてしまった。イーゼンはレンに言葉を遮られて可哀想だが、遮られて正解だ。仲間三人は隣国の英雄としてのザット・ノーレンではなく、別人と思っている冒険者レンとしてのザット・ノーレンと受け取った。だからこそレンを守るための行動だったのだが。
「知り合いか、レン」
「いいや、爺さんとも直接の面識はないぞ。爺さんの人形に追いかけまわされた記憶はあるが」
「は?」
「さて、ルルリだったか。お前も人形遣いなんだろ。どんな人形を操るんだ?」
お嬢ちゃんは突発的なことに慣れていないのか、レンに言われるままに赤いマントを捲ると、白い丸い毛玉たちが一面にいる。暖かそうだ、いや、違う。
白い毛玉には小さい目と口がそれぞれついている。可愛いと言えば、可愛い。いや、そうじゃない。どうもレンに毒されている。
「よしっ、合格。あの爺さんの人形と違って不気味じゃないっ」
力を込めてレンが何か言っている。
俺、半目になっちゃってるけど。
聖教国エルバノーンの人形遣いの爺さんはこのアスア王国周辺国家では有名だ。アスア王国の英雄の担当になる各国の諜報員の最初の洗礼となるのが、あの不気味な人形である。必ず英雄の周囲にうろちょろしているので、英雄を追いかけると必ず視界に入るのだ。夜、誰もいない場所で、あの人形に遭うとメンタルにダメージを食らうと評判だった。
英雄もあの人形、嫌だったんだな。英雄にはけっこう放置されていたって話だったけど。
って、おい、レン。お前、隣国の英雄だってこと隠す気ねえだろ。
このまま状況証拠を積み重ねていく気か。俺に探偵のように謎解きをさせる気か。
「ええっと、レンがこの子の面倒みるのか?」
「いや、俺はここでは居候の身だからな。誰かを連れて帰るなんてワガママを言うことはできない」
レンはけっこう薬草で稼いでいると思うんですけど、それでも居候扱いなの?相当な金持ち?どんな家?冒険者ギルドが総動員してもこのシアリーの街の中で見つけられなかったんだから、、、あえて聞かないけど。深く追求すると、冒険者ギルド本部に仲裁をお願いしなければならなくなる案件な気がする。シアリーの街の外の西や南は教会の土地だからね。
「大丈夫です。ザット・ノーレンを見つけるために軍資金を家からもらってきていますし、ダンジョンに潜って稼ぐ実力は多少なりとあるつもりです。宿屋に泊って捜します」
んー、この子、レンをザット・ノーレンとは認識していないみたいだ。
普通の人ならそうだろうね。だって、英雄の姿絵とは全然違うからね。
「じゃあ、メイサさんのところの宿屋を紹介してもらったら?あそこの食事、おいしいし」
「そうだねー。ルルリちゃんだっけー、あそこは良い宿だよー」
リンカよ、レンの言葉に乗っかるな。うちの愉快な仲間たちは、どうもまだルルリへの警戒を解いてない。近場で見張っておいてやろうという気がありありとわかる。
けれど、英雄担当の諜報員は紛れもなく英雄の情報のみを取り扱う者たちである。彼らは誰一人として暗殺に長けている者たちではない。聖教国エルバノーンの人形遣いの爺さんもやろうと思えばできるだろうが、彼も諜報員であり、それ以上でもそれ以下でもない。
あのギフト『蒼天の館』を持っている英雄を殺す必要はないのだ。できれば、英雄には自分の国に来てほしいくらいだったので、どこの国も英雄に暗殺者を向けることはない。各国が暗殺者を向かわせたのは、アスア王国の国王や上層部の方である。その英雄を狙っていない暗殺者の始末をアスア王国は英雄に頼んでいたのだから困ったものだ。
ちなみに、毒入りお菓子が英雄に渡されてしまうのは、アスア王国の国王も上層部も他国から無償でもらうお土産など信頼していないからだ。各国の要人たちは本当は国王や上層部が食べないかなーと思って超高価なお菓子やら酒やら何やらを渡しているのだが、飲食物の土産は毒が入っていようがなかろうが簡単に毒探知できる英雄に行ってしまう。先ほど挨拶していたあの国からのお土産です、とか言って。国に渡しているから、英雄に渡しても本来は何の問題もない。が、やはり毒入りじゃない美味しいお菓子やお酒の方が英雄には感謝されたようだ。基本的に毒入りじゃないお土産には英雄からのお礼状が届くので、毒入れなくて良かったと思った国も多いとか。。。
そして、今、各国の暗殺者たちは新英雄を狙っている。
「ところで、レン、お前も久々にあの宿に一泊ぐらいしていかないか」
「いや、あの一週間で外泊が禁止になったから無理だ」
レン、誰と暮らしているの?束縛系?
外泊禁止って、冒険者が言う言葉じゃないよね。レンは箱入り娘なの?
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