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第2章 波乱含みの

2-13 愛されることを知らない

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 ミアが薬屋に来ていないかと、ミアの母親から尋ねられた。
 今日は来ていないと正直に答える。
 学校は終わったはずなのに、夕食にもまだ帰って来てないそうだ。

「友達の家にでも行っているのかしら。ごめんなさいね。もしこちらにあの子が来たら早く家に帰るように伝えてもらえるかしら」

「ええ、もちろん」

 ミアの母親は思いつく限りの他の家にも足を運ぶようだ。
 家の方には向かわなかった。

「子供ならご飯を忘れて無我夢中になって遊んでしまうことはありそうですが、ミアだと、、、」

 レインも母親の後ろ姿を見送る。

「うーん、そうだね。あの子が夕食に戻らないとは」

 おかしいな。
 第二王子は首絞めて殺し、、、黙らせたはずなのだが。
 彼が実行部隊に連絡しようとしても不可能だし、あの首輪をつけている限り、俺の警戒網を秘密裏に突破することは無理だ。

 考えられることは、早く本国に帰りたい実行部隊が勝手に行動したか。
 となると、第二王子は王子としての求心力がまったくないに等しい。
 命令もしていないのに、動く駒というのは厄介この上ない。

「捜しますか?」

「案内させよう」

 俺は魔法で小さい光を出すと、その光はすいっと前を通って路地を進んでいく。
 真夏なので日は長いが、辺りはすでに薄暗くなっている。
 この街は平和だと言っても、犯罪がまったくないわけではない。

 夜になったら大通り以外歩かないように、というのはこの街でも若い女性や子供たちは口酸っぱく言われる。
 ただ、大通りにある家などそこまでない。
 この薬屋も路地の路地、かなり奥にある薬屋だし。

「あの光はミアの居場所を示して?」

「ミアの魔力を辿っている。この近くにはいるようだが」

 ここからさほど離れていない場所にいた。

「学校ですか?」

 光が暗い建物内に入っていく。
 学校の校舎というほど大きい建物ではなく、この街の少し大きめの建物を学校として再利用しているため、民家だと言っても区別はつかない。
 ミアから聞いた話では生徒数も少ないらしく、教師の数もそれに合わせて少ないので、選択科目というのは本当に限られているらしい。
 最低限のことを学んで、さっさと卒業しろと言わんばかりだ。

 一応、門のところに学び舎と小さく看板がついている程度だ。
 街の住民が学校とわかればいいので、そのくらいで充分なのだろう。

「、、、ミアの母親はまず学校に授業が終わっているのかを確かめたはずだが」

 たまに課外活動とかで、校外の清掃をする、ボランティアをする、教会を訪問するなどの活動があるらしい。事前に通知が来るようだが、生徒の方が親に伝えるのを忘れることもある。

 ミアはしっかりしているようで、ウッカリさんなところもある。
 だから、母親も最初の確認を怠らなかったのだろう。

「扉には鍵がかかっていますね。壊しますか?」

 レインは初っ端から物騒だね。
 この街を守る騎士がいれば言い訳もたつだろうが、ミアがただ昼寝しているだけだったらどうする。

「いやいや、このくらいの鍵なら」

 魔法でちょちょいとすれば、ほら開いた。
 レインが俺を見ている。

「、、、犯罪には使わないよ」

「そんな心配はしてません。貴方がどんな間違ったことをしても、それは正しいことだったと主張しますから」

「普通は力づくでもとめるところじゃないの?」

 犯罪を犯すなーっ、って。

「貴方とならどこまでも一緒に堕ちていきます」

「嬉しいけど、堕ちるのはやめよう。一緒に平和に暮らしていこう」

「はいっ」

 嬉しそうに笑うレイン。
 しっかし、緊張感のない会話だったな。

 扉を開けて中に入ると、床がギシッと音がする。
 古い家屋だ。
 俺たちが出す音を周囲には聞こえなくする魔法を発動する。
 会話も二人にしか聞こえなくなるので、どんな大声で話しても問題ない。

 というわけで、二人でスタスタと光を追いかけていく。
 階段に行き、二階、三階にあがると。
 ある扉の前で光は消えた。

「うっ、、、ふ、、、、」

 喘ぎ声か?

 ギシギシと軋む音もする。
 これはもしや。

 レインと顔を見合わせた。
 レインは剣を抜き、扉の前に二人で立つ。
 扉をほんの少しだけ開く。

 中も暗い。
 本来なら、ここも教室か。
 小さい部屋にしか見えないが。
 前に黒板があり、机が何個か壁際に存在するのが見える。

 その部屋の中央では複数の男たちがまぐわっている。
 黒い影のようにしか見えない男たちは五人はいそうだ。
 息を飲んだが、そのなかに少年の姿はない。
 全員が成人はしている男性のようだ。

 少しだけホッとする。

 五人は激しく動き、行為に夢中だが、できるだけ音を立てないようにしているらしい。
 それでも多少のギシギシ音やら喘ぎ声は漏れているのだが、この建物の外まで聞こえることはないだろう。
 密会だからなのか、学校だから音を立てることを躊躇しているのか定かではないが、ミアを拉致監禁してお楽しみしているようでもない。
 彼らの邪魔をしてはいけないか。


 、、、それなら、ミアはどこに?
 この部屋にいるはずなのだが。

 首を傾げると、レインは剣を鞘に戻して、俺にわかるように戸棚の方へスッと手を伸ばした。

 ああ。

 俺は頷く。
 ミアが戸棚の中から、あの行為を凝視している。
 ガン見しているから、彼らに対して嫌悪感はないらしい。
 戸棚に隠れたのか、寝てしまったのか定かではないが、ミアが気づいたときか、起きたときにはあの行為が始まってしまい、出るに出られなくなってしまったと?

 あー、良かった。
 少年にしか性欲が向かない変態に襲われているわけじゃなくて。
 うん、第二王子の手の者をこの地に放置しているから、こんな不安を抱いてしまうんだな。
 もしもってことがあるからなあ、どんなものでも。
 ヤツらはさっさと始末しちゃおー。
 明日には川に流れてもらおう。
 ん?川に流すくらいなら、仮想現実に送れって?

「帰るぞ、ミア」

「ふ、ふえっ、えっ、ティフィっ」

 ミアの前に仁王立ちー。
 お楽しみの五人は俺たちに気づくことなくまぐわり続けている。
 黒い影たちは己の欲望のままに蠢いている。

「レインの魔法で気づかれないようにしている。行くぞ」

 堂々。

 レインが扉の外で、あーうん、って顔をしている。
 ティフィは魔法が使えない設定は押し通すぞー。
 ティフィが戻って来たとき大変だからなー。

「あ、、う、うん」

 前かがみでちょこちょこ歩くミア。
 強烈なものを見てしまったな。

 その上で、最後まで見たかったという願望も残っているようで、後ろをチラチラと振り返っている。

「、、、うちで何か飲んでから帰るか?」

 このまま家に帰すのは忍びない。
 落ち着いてから帰ってもらおう。
 え?抜いてあげた方が早いって?
 いやいや、少年に手は出せませんて。
 カラダはしっかり発育しているようじゃないかって?

 子供に手を出してはいけない、という法律はこの国にはないから商売にしている子供たちも生活のためにいることは少なからずいる。
 それでも、俺からは手を出さない。

 学校の外に出て、薬屋に向かう帰り道。

「ところで、あそこの部屋にいた男性たちは知っている顔?」

「あの学校の先生たちだよ。学校に残ってはいけない、早めに帰りなさいといつも言われていたけど」

 ミアの顔は真っ赤に染まる。
 、、、学校の先生も人だからね。
 欲望まみれな先生のようだけど、まあ、嫌いじゃないよ、俺は。

「今日は居眠りでもしてた?」

「うん、皆でかくれんぼしていたんだけど、つい眠くなって、、、」

「お母さんにはそう言っておこう。かくれんぼしていて、今まで寝てましたって」

「あっ、うん、、、」

 ミアはさらに耳まで真っ赤になって俯いた。
 あの行為を思い返しているのかな。
 子供には衝撃だよね。
 俺にも衝撃だったよ。
 ついつい見ちゃったよ。
 間に挟まって、相手に挿れて、違う相手に挿れられるなんて、淫らに動きまわる男たちを。

「一緒にヤりたい、とか思ってませんよね?」

 レインさん、笑顔の質問が怖いんですけど?
 この晩、レインさんは激し過ぎました。
 俺は非常に嬉しいけど。
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