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9.16年目もずっと

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 翌朝。

 私は夫の腕の中で目覚めた。

「おはよう」

 頭上から聞こえた声と共に、おでこにチュッとキスが降ってきた。

 結婚前のような甘い挨拶。

「おはよう」と返事をして顔を上げると、夫の唇が重なった。

 昨日は、たくさん話をした。

 昔話や、子供のこと、職場のこと。

 ジャグジーのお風呂にも入ったし、美味しいご飯も食べたし、マッサージチェアも使った。

「帰ったら、ベッドくっつけるか」

 唐突に、夫が言った。

「うん」と、私は笑って答えた。

 本人も言っていた通り、和輝は私の短い髪がかなり気に入ったらしく、ずっと触っている。

 家に帰ると、和葉が泣きそうな顔で出迎えてくれた。

 由輝は不機嫌そうに、「おかえり」とだけ言った。

「あれでも、かなり心配してたよ」と母が教えてくれた。

 昨日はこっちでも雪が積もったようだけれど、玄関前もカーポートの下も、綺麗に除雪されていた。

「ありがとう、由輝」とお礼を言うと、「別に」とだけ返ってきた。

「お父さんにはなんて言って来たの?」と帰り際に母に聞くと、「二人は友達のお葬式に行くから、って」と言われた。

 私と和輝は顔を見合わせ、苦笑いした。

「柚葉、和輝さんのお母さんに電話しておきなさい。二人と連絡がつかないって、家に電話があったから」

 そう言って、母は帰って行った。

 私のスマホの充電が切れている間に、お義母さんがかけてきていた。ご近所さんに屋根の修理と雪対策をしてもらえる業者を紹介してもらったらしい。

「そのご近所さんに、柚葉のことを褒められて鼻が高かったみたいだ」

「そ?」

「ああ。インフルで実家にいるって言ったら、心配してたよ」

 お義母さんに電話をしたら、お礼を言われた。それから、「たまには私のことも頼りなさい」なんて、素直じゃない労わりの言葉も。

「和葉の卒業と入学のお祝いをしたいから、みんなでおいで」とも。

 晩ご飯の席では、由輝と和葉が自分の箸や皿、お茶なんかを用意していて驚いた。

「おばあちゃんに、今時の中学生は自分の箸も用意できないの? って怒られちゃった」と、和葉が教えてくれた。

 何でも先回りしてやってしまっていた私も悪い。多少、いや、かなりイライラしても、自分たちでやらせていかなければ。

 それから、意外なことがもう一つ。

 髪を短く切った私に、和葉は「似合う」と褒めてくれて、由輝は「前のが良かった!」と不機嫌になった。

「見慣れないからだろ」と和輝は気にしていない様子で、ベッドを移動した。

 それを見た和葉は「模様替え?」と聞き、由輝は更に不機嫌になった。

「お母さんを俺に取られたとでも思うのかね」と、和輝が呟いた。

「そういえば、和葉じゃなくて由輝の方がママっ子だったもんな」
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