偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~

深冬 芽以

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14.社長秘書の誤算

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「私自身が不倫の噂でまいっちゃってて。そのせいってわけじゃないけど、男好きだって噂の社長令嬢と会場の外に出てきたあなたを見て、仕事中にナニやってるんだって言ってやりたくて……」

「だとしても、結果的に俺の潔白は証明された」

「そうね。でも、なんだか引っ込みがつかなくなって八つ当たりしたわ」

 りとが手の甲で口元を押さえ、顔を背ける。

 俺はその手を握り、引き寄せ、手の甲にキスをした。

「ムカついたけど、あの後でりとがデキる秘書だって知って、俺も頑張れたよ。次に会った時は、あの時の言葉を撤回させてやるって、思ってた」

「でも、マンションで会った時も会社で会った時も、何も言わなかったじゃない」

「りとが覚えてなさそうだったから」

「……私も、忘れられてると思った」

 手を伸ばし、りとの鎖骨を撫で、丈の短い羽織を脱がせる。

 手が、熱い。

「そういえば――」

 りとがぴくぴくっとぎこちなく口角を上げた。

 顔が赤い。

 瞳が潤んでいる。

「――只野さんが言っていた大切な人って?」

「……」

「大切な人を傷つけられたって言ってたでしょう?」

「……」

「私、只野さんは理人のことが好きなんだと――」

 りとの肩を押し、同時に俺は腰を上げた。

 彼女がゆっくりとベッドの背を沈める。

 俺はそんな彼女を見下ろした。

 半端にボタンが外されたワイシャツが肌を離れ、ヒヤリとした。

「――返事は?」

「え……?」

「プロポーズの返事」

「……」

「本気で我慢の限界なんだけど」

 ずいっと顔を寄せると、りとが視線を彷徨わせた。

「姫――さんの話は、明日ゆっくりしよう」

「……うん」

「今は――」



 早く抱かせてほしい。



「――仕事、続けたいわ」

「え?」

「結婚しても仕事を続けたいの」

「ああ」

 りとの肩を撫でる。

「トーウンの保育園ができたら力登をそこに預けて、フルタイムで働きたい」

「ああ」

 ゆっくりと胸の膨らみに手を這わす。

「家事が疎かになることも――」

「――俺がやる」

 焦らず胸の形をなぞり、脇腹から尻へと指を滑らせる。

「理人の帰りを待てずに寝ちゃうことも――」

「――構わない」

 顔を寄せ、彼女の首筋にキスをした。

「子供ができても助けてくれる母親はいないけど――」

「――俺の母親も助けてはくれないが、俺が育休も有休も全部使ってそばにいる」

「理人――」

「――限界だって言ったろ?」

 キスしたところに軽く歯を立てた。

「んっ……」

「仕事を続けるのは構わないし、力登を預けるのは保育園でもベビーシッターでも構わない。りとの負担にならないのであればフルタイムで働いてもいいし、家事は俺もやるし家政婦を雇ってもいい。あとは? ああ。疲れて俺の帰りを待てずに寝ても気にしない。たまにいたずらして起こしても、許してくれるならな。子供ができたら母親なんか頼らずに俺を頼れ。他には? 心配なことがあるなら早く言え」

「そんな言い方――」

「――早く抱きたいんだよ。いや、その前にプロポーズの返事!」

 りとの顔の横に両肘をつき、ぐいっと顔を近づける。

「わかっていても聞きたいんだよ」

「……どうしてそんなに――」

「――理屈じゃねぇよ」

 りとの両手が俺の背を抱き、引き寄せた。

 目を閉じたりとを、俺はじっと見ていた。

 唇が重なり、彼女の舌先が俺の唇の隙間を探し当てる。

 俺は促されるがままに唇を開いた。

 ぬるりと温かな感触。

 彼女が俺の中に侵入してくる。

 片手で身体を支え、もう片方の手をりとのうなじに挿し入れ、ドレスのファスナーを探す。

 小さなつまみを探し出すも、うまく下ろせない。

 もどかしい。

 口内が熱い。

「~~~~っ!」

 既に興奮状態の足の付け根に刺激を感じ、思わず腰を引く。

 それでも、執拗に刺激が追いかけてくる。

 りとの膝が俺の熱を突き、撫でる。

 何度も。

 俺は思い通りにならないファスナーを放棄し、スカートの裾から手を挿しこんだ。

 いたずらする膝頭を撫でながら、裾をめくり上げていく。

 内腿を指先でくすぐると、俺の口の中のりとが動きを止めた。

 形勢逆転で、俺が彼女の舌を包むようにして絡ませる。

「ん……っ」
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