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11.波乱の忘年会

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「龍也がそこまで本気とはなぁ」と、大和が感慨深そうにビールを飲む。

「つーか、あきらは? 龍也のことどう思ってんだよ?」と、陸。

「好きでもない男とヤルような女じゃないだろ? お前」

 いくら親しい仲間内でも、いくらお酒の席だとは言っても、なんてことを聞くんだと口を開きかけた時、先に千尋が言葉を発した。

「そんなこと――」

「当たり前じゃないですか!」

 龍也が千尋を遮る。

「あきらはそんな女じゃないですよ。けど、素直じゃないからなかなか認めてくんないだけです」

「そんな、難しいことか?」

「それは――」

「そりゃ、そうよ。仲間内でデキちゃって、ダメんなったら、気まずくて堪んないじゃない」と、千尋。

 いつも冷静で、思ったことをハッキリと言うあきらが、何も言わず俯いている。

 あきらが龍也を好きなのは明白だけれど、素直になれない理由があるのだろう。

 高校の頃からの彼とは、十年近く付き合っていたはずだ。その彼と別れてから、あきらは恋人が出来ても数日や数週間で別れてしまっていた。

 龍也への気持ちに素直になれないのは、その辺の事情からだろうか。

 それに、私にはあきらのことでもう一つ、思い当たることがあった。

「それに、龍也の気持ちがこんだけ本気で、しかも結婚まで考えてるなら、悩まないはずないじゃない」

「えっ!? それって俺が重いってこと?」

「いや、重いってより重すぎだろ。死ぬまで、とか」と、大和。

「じゃあ、結婚してくんなきゃ死んでやる、とか?」

「あーーー……。あきら、じっくり考えろ?」と、陸がため息交じりに言う。

 私も同調した。

「うん、その方がいいよ。龍也がいい奴なのはわかってるけど、さすがに怖いわ」

 あきらの顔を覗き込むと、フッと表情が和らいだ。

「それに、恋愛と結婚は違うからね」

「そうだな。それで失敗した例がここにいるし、じっくり考えろ。週末に会うだけなら、お互いに格好つけていられても、一緒に暮らすとなるとそうはいかないからな」

 陸の言葉に、部屋の空気が冷える。酔いも醒めそうだ。

 内容が内容だけに、流しずらい。

「経験者の言葉、重すぎるよー」と、私はちょっとおどけて言った。

「ありがたいだろ?」と、陸がケラケラと笑う。

「ありがたくないよ!」

「そうよ。あきらが益々尻込みしたら、陸のせいだかんね」

「知るかよ! つーか、千尋と麻衣はどうなんだよ! いくらイギリスに行く前に結婚しろとは言っても、三人立て続けはきついぞ」

「確かに! うちは子供も増えるし、ご祝儀貧乏とかなりたくないぞ」と、大和。

「ああ。私はないない! ってか、そろそろ別れるし」と、千尋がブンブンと手を振って言った。

「はあっ!? なんで? お肌艶々効果がキレたか?」

「なんでよ! 私は前からお肌艶々です!!」

「じゃあ、なんでだよ?」

「もともとそんな真剣な付き合いじゃなかったのよ。私はあきらと違って、『いい男だなー』ってくらいの気持ちでヤレちゃう女なんで」

 その言葉に、ムッとした。

 千尋はそんな、男にだらしない女じゃない。

 私みたいに、男運がない癖に告白されたら断れない、ダメ女じゃない。

 私の大好きな千尋を、たとえ千尋自身でも悪く言って欲しくなかった。
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