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10.結婚宣言

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「――なんだよ? 言いかけて、一人でにやけてんなよ」

「いや、無理。麻衣さんの良さをお前らに教えるなんて、勿体ない!」

「は!? お前、マジで人格崩壊してんぞ?」

「いーんだよ! 麻衣さんに嫌われなければ、なんでもいーんだよ」

「重症だな……」

 みんなが呆れ顔でため息をつく。

 そんなことは、どうでもいい。

 誰にどう言われようと、関係ない。

「とにかく! 俺は遠藤のことを引きずってるわけじゃないし、麻衣さんとの時間を削ってまで馬場と呑む気はない! じゃ、帰る!」

 運ばれてきたビールを一気に飲み干して、俺は上機嫌で店を後にした。

 早く、麻衣さんの元に帰りたかった。

 なのに、怒られた。

「だから! どうしてそんな恥ずかしいこと言っちゃうの!?」

 見送られてから、二時間ほどで帰って来た俺の話を聞いて、麻衣さんが頬を膨らませた。

 今日は自分の家に帰ると言っていたのに、迎え入れてくれて、シャワーも浴びさせてくれたところまでは良かったのに。

「それに! そんな風にお友達の誘いを断ったら、私がすっごいヤキモチ焼きみたいじゃない!」

「違うよ。俺が麻衣さ――、麻衣と一緒にいたいからってだけで――」

「――そうだとしても! お友達はきっと、私が束縛して鶴本くんを行かせないんだって思うよ」

「言った」

 こんな時でも、麻衣さんが俺を名字呼びしたことを聞き逃さなかった。

「今はそんなこと――っ」

 俺は麻衣さんの腰を抱き寄せ、膝にのせた。

「俺には大事なことなんだけど?」

 耳元で囁くと、麻衣さんの身体が急速に熱くなる。

「それに、遠藤の隣にも座らなかった。言いつけを守ったご褒美はないの?」

 彼女の髪に指を滑らせてうなじに触れると、麻衣さんが反応して首を傾げた。

「麻衣……」

 酔ってるのかもしれない。

 ジョッキ四杯しか飲んでないのに、身体がふわふわして、麻衣さんの匂いに下半身は暴走モード。

 ペナルティの、麻衣さんからのキスも待てずに、俺は彼女をソファに押し倒した。

「麻衣……」

 彼女の胸に顔を埋め、その柔らかさにホッとした。

 が、目覚めた時には、麻衣さんが言うブサかわ猫を抱き締めていた。



 酔って、麻衣さんの胸の上で寝落ちとか……。



 ブサかわ猫の不遜な笑みが、俺をあざ笑っているように見えて、顔面パンチをお見舞いしたことは、麻衣さんには内緒だ。
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