90 / 208
8.甘い夜、甘くない理由
6
しおりを挟む*****
「くそっ」
思わずそう口をついたのは、自分の忍耐力のなさを呪ってだ。
初めて味わう梓の身体は、想像していたより柔らかくて、敏感だった。
梓のマンションで初めて彼女を抱きしめた時、見た目より肉付きが良くて柔らかく、胸の大きさに驚いたと言ったら怒るだろう。
ゆったりとしたシャツにワイドパンツか膝丈のスカートを穿いている格好が多い梓は、華奢に見えた。
それがどうというわけではない。
ただ、嬉しい誤算だった。
天谷が先に触れた事実には大いにかなりムカつくが、もう二度と俺以外の男が触れることはないと思えば、調教し甲斐もあるものだ。
実際、俺の与える刺激に驚き、盛大に達したところを見ると、まだまだ知らないことがあるだろう。
俺だってさほど経験が多いわけじゃない。
人並みに恋人と呼べる女性はいた。が、理性を崩壊させられるほど夢中になれる女はいなかった。
今だって、そうだ。
もっとじっくりゆっくり梓を揺さぶっていたいのに、身体がもう限界だと悲鳴を上げる。
イキたい。
俺史上、最大値まで膨らんだ欲望は、言葉通り痛いほどの熱だった。
キモチイイ、イタイ、キモチイイ。
俺は梓の腰を両手でしっかり掴むと、これ以上は挿入らないという限界まで深く彼女の膣内《なか》に埋め、やっと痛みから解放された。
引き換えに増す快感に、目を閉じ、身震いする。
耳たぶが……マズかったな。
誰にも知られていない、俺の弱点。
学生の頃、欣吾に言われた。
『皇丞って、耳たぶ触るの癖だよな?』
自覚がなかった。
だが、そう言われればそうなんだなと思う程度のことだった。
ふざけた欣吾に耳たぶを撫でられるまでは。
『ふぉっ』
変な声が出てびっくりしたのは欣吾以上に俺自身だった。
それからしばらくは、欣吾から耳たぶを死守するのが大変だった。
セックスの最中に耳たぶを咥えた女は今までいなかったし、完全に油断していた。
まさか、あのタイミングで耳を攻められるとは。しかも、俺が耳が弱いとわかってなおもやめなかった。
あれがなかったら、もう少し冷静に時間をかけられたのに。
そんなことを思いながら、俺は粛々と処理をする。
その間にも、梓に耳たぶを食まれた感触を思い出し、また興奮する。
が、見れば梓は、既にくたりと脱力して、瞼が重そうだ。
全然足りない。
だが、焦ることはない。
これからは、抱きたい時に抱ける。
最初から無理をさせて嫌がられたくない。
俺はベッド下に放ったボクサーパンツに足を通すと、やはりベッド下に落ちている布団を引き上げ、梓の身体にかけた。
彼女の唇が微かに開いたように見えたが、目が慣れたとはいえ薄暗いから、気のせいかもしれない。
俺は洗面所でタオルをお湯で温め、梓の汗を簡単に拭いた。
それから、俺のTシャツを着せる。
よし!
明日の朝が楽しみだ。
そっと寝室のドアを閉め、シャワーでまだ冷めやらぬ興奮を静める。
さっきまでの、梓の身体を引き裂かんばかりの熱杭は、今もわずかに主張しているが、それでも余韻が残っているだけ。
あの、爆発しそうなほどの膨張と痛みも治まった。
あんなになるもんなんだな。
自分の身体とはいえ、あんなに興奮したのは初めてだった。
俺、どんだけ我慢してたんだよ。
昨日、梓に言った『日々忍耐』は伊達じゃなかった。
シャワーを頭からかぶりながら、壁に手をついてふぅっと息を吐く。
気を緩めると艶めかしい梓の身体や表情を思い出し、身体が反応しそうだ。
明日はまだ金曜日だから、これ以上はダメだ。
20
お気に入りに追加
549
あなたにおすすめの小説
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
スパダリ外交官からの攫われ婚
花室 芽苳
恋愛
「お前は俺が攫って行く――」
気の乗らない見合いを薦められ、一人で旅館の庭に佇む琴。
そんな彼女に声をかけたのは、空港で会った嫌味な男の加瀬 志翔。
継母に決められた将来に意見をする事も出来ず、このままでは望まぬ結婚をする事になる。そう呟いた琴に、志翔は彼女の身体を引き寄せて
――――
「私、そんな所についてはいけません!」
「諦めろ、向こうではもう俺たちの結婚式の準備が始められている」
そんな事あるわけない! 琴は志翔の言葉を信じられず疑ったままだったが、ついたパリの街で彼女はあっという間に美しい花嫁にされてしまう。
嫌味なだけの男だと思っていた志翔に気付けば溺愛され、逃げる事も出来なくなっていく。
強引に引き寄せられ、志翔の甘い駆け引きに琴は翻弄されていく。スパダリな外交官と純真無垢な仲居のロマンティック・ラブ!
表紙イラスト おこめ様
Twitter @hakumainter773
私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
景華
恋愛
顔いっぱいの眼鏡をかけ、地味で自身のない水無瀬海月(みなせみつき)は、部署内でも浮いた存在だった。
そんな中初めてできた彼氏──村上優悟(むらかみゆうご)に、海月は束の間の幸せを感じるも、それは罰ゲームで告白したという残酷なもの。
真実を知り絶望する海月を叱咤激励し支えたのは、部署の鬼主任、和泉雪兎(いずみゆきと)だった。
彼に支えられながら、海月は自分の人生を大切に、自分を変えていこうと決意する。
自己肯定感が低いけれど芯の強い海月と、わかりづらい溺愛で彼女をずっと支えてきた雪兎。
じれながらも二人の恋が動き出す──。
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
泉南佳那
恋愛
植田奈月27歳 総務部のマドンナ
×
島内亮介28歳 営業部のエース
******************
繊維メーカーに勤める奈月は、7年間付き合った彼氏に振られたばかり。
亮介は元プロサッカー選手で会社でNo.1のイケメン。
会社の帰り道、自転車にぶつかりそうになり転んでしまった奈月を助けたのは亮介。
彼女を食事に誘い、東京タワーの目の前のラグジュアリーホテルのラウンジへ向かう。
ずっと眠れないと打ち明けた奈月に
「なあ、俺を睡眠薬代わりにしないか?」と誘いかける亮介。
「ぐっすり寝かせてあけるよ、俺が。つらいことなんかなかったと思えるぐらい、頭が真っ白になるまで甘やかして」
そうして、一夜の過ちを犯したふたりは、その後……
******************
クールな遊び人と思いきや、実は超熱血でとっても一途な亮介と、失恋拗らせ女子奈月のじれじれハッピーエンド・ラブストーリー(^▽^)
他サイトで、中短編1位、トレンド1位を獲得した作品です❣️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる