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8.甘い夜、甘くない理由

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 皇丞の全身が硬直する。

 この時の私の気持ちは一言で、可愛い、だ。

 決して口にはしないが、きっと私がそう思っていることを彼も気づいている。

 そうでなければ、情事の真っ最中に私の鎖骨におでこをくっつけたまま、固まったりしない。

 見えないが、きっと恥ずかしさに震えているのだろう。

 それを想像すると、また可愛いと思う。

 咥えた耳たぶに舌を添わす。

「――っ!」

 今度は、声こそ出なかったが、彼がそれを耐えていることはわかった。



 耳が弱いんだ……。



 舌先でちろちろと舐め、吸い、また舐める。

 耐えきれなくなった皇丞がぐっと上体を起こすまで、ほんのわずかな時間だった。

 勢いで私の腕は拠り所を失い、宙に放り出される。

 が、すぐにシーツに着地し、力いっぱいそれを握った。

「あぅ……っん!!」

 仕返しと言わんばかりに、私の足を腕ですくい上げてがっちりホールドすると、ぎょっとする間もなく数秒前まで彼の指先が添えられ、ぷっくりと勃ち上がった膨らみに吸い付かれた。

「だめっ!」

 既に遅いとわかっていながらも、反射的に声を上げた。

 だが、皇丞は私の力ない拒絶などお構いなしに、敏感になった襞を舌の腹で何度も舐め上げる。

 お風呂に入っていないのに、なんて理性的なことを考えたのはほんの一瞬のことで、すぐに指とはけた違いの快感に身悶えるしかできなくなった。

「あっ、あ、んっ……」

 喘ぎ声に意味などないのは百も承知しているが、それが自分の唇から発せられることが恥ずかしくてたまらない。

 心なしか、いつもより大きいし、飲み込もうとしても飲み込めない。

 声を我慢しようと口を噤んでも、鼻から抜ける音までは我慢できない。

「んんんっ――!」

 我慢すると苦しい。

 窒息しそうだ。

「教えとくよ」

 じゅるっと吸い上げながら、言葉を発せられると、息がかかってくすぐったいしひやりとして、それにまた感じてしまう。

「俺に紳士的でいてほしかったら、耳は触るな」

 言い終わると同時に、蜜を溢れさせている入口が圧迫される。

 ゆっくりと、けれど着実に奥に侵入してくる。

「あ……、ああ……ん」

 背がしなる。

「俺を狂わせたいなら、大歓迎だけどな」

「言うのっ……が、お……そ――!」

 性急に二本目の指を挿れられ、花芽を甘噛みされて、私はあっけなく果てた。

 打ち上げられた魚、と表現するのも頷ける。

 私はシーツの上で下腹部をビクビクと痙攣させ、そのたびに太ももとふくらはぎの筋肉も収縮する。

 あまつさえ、溢れた蜜がお尻を伝うのまでわかる。



 こんなに激しくイッたこと……ない。



 恥ずかしいのはもちろんだが、それ以上に初めての快感の上をいく快感に、身体が痺れて言うことを聞かない。

 目を閉じ、余韻に浸っていると、カサカサとビニールが擦れる音がした。

 見なくても、皇丞が準備しているのだとわかる。

 少し休ませてほしい、と言うだけ無駄なのはよくわかっているし、この状態でお預けするほど私も鬼ではない。

 ただ、身体は既に疲れ切っていて、気を抜くと意識が遠のきそうだ。
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