勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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月村

旅の記録37 明日

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日向のマグマオーシャンは未だに出ており出る度に日向の魔力ゲージが少しずつ減っていっていた。だが、今はそんな事はどうでもいいのかメイとランの攻撃を必死で避けていた。メイとランも下にマグマオーシャンがあるせいで少しだけだが動きが制限されておりなかなか日向と魔王に攻撃が当たらなかった。
「ラン、少し本気出す?」
「そうしよっか。何か面倒くさくなってきたし」
何か不吉な言葉だけが聞こえたのを最後に日向と魔王の目の前からメイとランは消えた。
「「後ろだよ」」
その声と共に後ろに振り返ると先程の人間の姿はなかった。茶髪に青い目。長い耳に緑の布の上に葉っぱを付けたような服。そして、背中には羽が。
「遂に本当の姿を現しやがったか。メイとランよ」
「だって、あなたたちが粘るのが悪いのよ」
「だから~」
「「ちゃっちゃっと終わらすのよ!!」」
魔王と日向に飛びかかる二人に彼女らは何も出来ずただ吹っ飛ばされるだけかと思いきや・・・
「「なっ!?」」
いきなり地面が爆発し、メイとランは上に飛ばされた。そのまま下に落ちるのかと思いきや羽で少し飛び家の屋根に乗った。
「はぁ、妖精エルフがこん大会に出るとは聞いとらんぞ。間一髪やったの。日向はんと魔王はん」
後ろから声がして振り返るとそこには狐のお面を被った二人が立っていた
「月影に日月じゃないか」
「助けに来てくれたのだ?」
「たまたまや。たまたま倒そうとしたチームが被っただけだから手伝うだけ」
そう日月が話しながらも月影は立ち位置を変え、今は屋根の上にいた。屋根の上でメイとランと睨み合っている月影はこちらに向くと何やら合図を送っていた
「ほな、行きますよ。日向はん。魔王はん」
「暴れちゃうけどいいのだ?」
「それは同じじゃ」
月影に許可を貰うために上を向いているとこちらを向かず頷いた。そして・・・
「よーし、魔王ちゃんいいかな?」
「お主こそいいんか?日向」
「私はいいよ。じゃ~」
思いっきり息を吸い込み大声で
「「殺るぞ!!」」
二人の目には際ほどより倍以上の殺気が籠りそして、笑っていた
「本気出した所で私たちに勝てるとでも?」
妖精エルフの王の私たちに勝てるとでも?」
「「無理だね!」」
そして、戦いの合図は誰が出したのか分からない大爆発。煙に紛れるように日向は走り出し、一気に距離を詰めた。魔王はメイとランの魔力を探し先程から何回か作っている秘密の赤い槍を投げた。
「月影や。魔王はんと日向はんってあんなに交戦的なんか?」
「知らない。でも、そうらしいね。私達も援護射撃撃つよ」
「あいよ」
月影は誰にも聞こえない程度の声でいつの間にか横にいた日月だけに命令をした。
月影は元々相手の先読みが上手く、100%に近い命中率を持っていた。だが、もう一つ有名なのが・・・
「日向よ。先程から月影は杖を振りかざしただけで魔法唱えとるがどういう事じゃ?」
魔王は月影と日月の邪魔にならないようにちらちらと見ながら戦っていた。だが、何回見ても思う。魔法を唱えていないのに魔法が放たれる事に。
「それは何となく理由はわかるけど今説明する暇ないから後でね」
それだけ説明が大変なのか、と思い魔王は頷き戦いに集中をした。
「あ、魔王ちゃん。一個だけ注意してね」
「何がじゃ?」
日向は戦いの途中にも関わらず後ろを向きながら戦っていた。
「炎魔法最強を唱える人がいるから巻き込まれないように」
日向でも唱えれない最強の炎魔法。それを唱える人となると本当に炎魔法のエキスパートだって事がわかる。(日向は氷魔法最強なら唱えれる)
それを言い残すと日向は前を向きと戦い出した。
「遊びはここまででいいよね?」
日向の鋭い眼光はそこにいた者の背筋を凍らすような冷たさがあった。全てを飲み込むような深い深い青色の目。魔王ですら一瞬その場から去りそうになるぐらいだった。
「それなりに時間は経ったし全員巻き込んで終わらした方が早いよね?それじゃ~、
その瞬間何が起きたのか分からなかった。だけど次に見た景色は控え室だった。部屋は暖かいはずなのに何故か寒気が抜けず何度思い出そうとしても思い出せない。何が起きた?
「あ、勇者さん。目を覚ました?」
あれ?日向?何故ここに?いや、その前に誰が優勝した?
声を出したいのに出せず何かもどかしかった
「う~ん、何から説明したらいいのかな。まぁ、取り敢えず優勝したのは私たちよ」
そうか、良かった。良かった・・・のだけど何でだ?日向は何故
「え?私が泣いている?そ、そんな分けないじゃん。勇者さん馬鹿じゃないの?」
震える声を必死に振り絞り彼に笑顔を見せていた。だけど、やっぱり分からなかった
「どうしたの?どこか痛いの?突然笑顔を見せるって変だよ?」
彼は辺りを見渡し近くの机にあった筆と紙に「変なのは日向ほうだ。何かあったなら言って。怒りもしないから」っと。
それを日向に渡すと日向は腰から項垂れ彼の寝ているベッドに顔を疼く目ながら謝りだした。突然の出来事に何なのか分からず日向の頭を撫でるしか出来なかった彼の元の部屋にノックと同時に魔王とシルヴィが入ってきた。
「ご気分はどうですか?勇者さん」
「ふむ。日向のやつまだ言っておらんかったのか」
魔王はため息をつきながら先程まで日向が座っていた椅子に座り全てを説明した。
「お主は一時的に話せなくなっておる。それだけじゃ。勝負の内容はいいじゃろ?」
うん。勝負の内容は言ってくれるのは有難いがそれよりも今何て?声が出ないと?
急いで筆を取ろうとしたが、魔王は人の心を読める(曖昧だが)のを思い出し答えを待つことにした瞬間・・・
「聞いておったか?一時的じゃ。
「そうだね。しばらくは月村で休も?」
彼は外を見るともう日が落ち月の光が月村に優しく降り注がれていた。
(そうだな。休むか)
彼は椅子から立ち上がり「日向と魔王とシルヴィさんはお茶いるか?」と聞くと全員が頷き彼は部屋から出ていった。
「さて、日向よ。説明してくれんかの?」
彼が出ていったのを確認した魔王は少し心配そうな顔日向を見た。
「私にも分からない・・・。気づいたらここに戻っていて勇者さんが倒れていた。だから、私にも分からない・・・」
少し落ち込んだ様子の日向の肩を魔王は優しく叩き
「それなら仕方がぬ。少しあやつに注意を払っておけばいいからの」
「うん・・・」
私が守ると決めたはずの人の身に何が起きたのか分からなくて何が守れるの?伝説の魔法使い?何が伝説の魔法使いよ。大切な人を一人も守れない様じゃ・・・
そんな思考を巡らしていた日向はため息の数が多くなり大会が終わってから魔王とシルヴィも心配はしていた。
扉がガチャッと開く音がすると日向の暗い表情は一瞬で無くなり少し駆け足風に彼の元に寄って行った。
「ありがとう!あ、そうそう!明日大会の打ち上げに月影と日月も誘ってどこか食べに行かない?」
「いいやんか。あてらもそれには賛成するぞ、日向はん」
最初からそこにいたかのように扉に背を預けている日月と日月にもたれかかっている月影。やっぱり月影は日向と身長はほとんど変わらないことを改めて確認した魔王は軽く頷くと絶対聞かないと行けないことを聞いた。
「何故お主らがいているんじゃ?」
「たまたま通りかかったらあんな話聞こえたから、ノックなしに入っただけや。なーに、心配しんくても良か。あてらは何もする気はないから」
と、狐のお面で笑っている表情は分からないが笑顔でいている事は何となくわかった。
「そや、あてらのちゃんとした自己紹介まだやったな!ちょいと今やるか」
と、何か急に自己紹介をする流れになったが日向は軽く杖を振り彼女らの口を氷で封じた。
「それは明日でいいでしょ?私たちはもう寝るから邪魔したらシルヴィ様が黙っていないからね?」
その時の日向の笑顔で彼女らは分かるぐらいに肩を落としながら
「ほな、また明日な。あ、部屋は隣だから」
と、寂しそうに手を振りでていった。
「じゃ、寝るかな?」
「そうですね」

その日の夜・・・
「はぁ・・・」
日向は部屋の窓に肘を置き月を眺めていた。
本当に日向には心当たりは無かったが違和感を感じるところはあった。
(こっちに戻って来た瞬間、私の魔力が乱れていた。やっぱりあの時私に何かが起きたのかな?)
何度もため息をつきながら考えているところに
「まだ起きていたんか」
「魔王ちゃんこそ。どこいっていたの?」
「少しの・・・。日向、考える事はいい事と思う。じゃが、たまには本能に従うのも良いもんじゃぞ」
突然意味が分からない事を言い出す魔王を不審に思った日向は杖を握りしめたが魔王はいつものようには慌てず、冷静に言った
「何かを得るには何かを失うもんじゃ。じゃから、お主の一番大切な者をしっかりと決めておく事じゃな」
「何言っているの?私の一番大切な者は勇者さんだけなの知っているでしょ?」
「それはどうじゃろな。1回自問自答してみるのもいいかも知れんぞ?」
魔王はそう言い後ろに振り向き歩き出した
「じゃ、儂は寝るからお主も早く寝るじゃ」
魔王は自分のベッドに入り布団に包まった。
「私の一番大切な者?そんなの勇者さんだけ・・・だけなはず・・・」
魔王があんな事を言い出すことはこれから先、何かが起きるって事。普段は日向の心配は殆どしないが珍しくするとなると余っ程の事が起きる。
「うん!私は勇者さんだけ!勇者さんは命に変えても守りきるんだから!」
自分に言い聞かすように言うと日向はそのまま窓から外に出ていった。
「スイよ。は本当なんじゃろな?」
魔王は日向が出ていってからむっくりと起き上がり黒い穴を開けた。その黒い穴から顔を出した海王種セイレーンのスイ。その顔はいつも以上に真剣な顔だった。
「はい。たぶん、近頃かと。詳細が分かり次第ご報告に来ます」
「わかった。下がって良い」
スイは一礼をし、穴の中に消えていった。
「日向よ、本当に早く決めんと壊れるぞ」

次回から新しい章へ!ですが、私はテスト期間なので更新が遅れ、しかもテスト機期間が終わると夏休みになるので更新が本当に遅くなります・・・。なので、少し無理矢理終わらしてしまいましたがこれからも『勇者と小さな魔王の旅』をよろしくお願いします!
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