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3章「こんなはずでは?」
40話
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そう言って門番は懐の中から丁度写真が入りそうな大きさのケースを取り出す。
そのケースの中からは1枚の写真とはいかないが、恐らく鉛筆で書いたであろう精巧な少女の絵が描かれていた紙が入っていた。
で、彼の言う通りその少女と言うのが俺の姿と酷似している。
どこかで誰かが俺の自画像を描いたのだろう。
「おまえ、それっ、以前高い買い物したって言ってた時?」
「ああそうさ、大金叩いて買ったんだ!」
高々ブロマイドに近い物に対して大金と言われる事に少々違和感を覚えるが、この時代、手描きでなければその手のモノを生み出せないとなれば値が張るのは仕方がない事か。
自分のブロマイドに対し高値がついているのは少しばかり嬉しく思えてくるのだけども。
「確かにお前の言う通りその絵と目の前の少女は同じだな」
「そうだろ? そうだろ? ささっ、ルチーナ様、出来れば一つだけ頼みがあるのですが」
そう言われてロクな事は浮かばないが、最悪原付で逃げれる訳だから聞くだけ聞こう。
「どの様な事で御座いましょうか?」
俺はステラ嬢ほどではないが柔らかめの笑顔を見せ返事をした。
「そ、その、この絵の裏側にルチーナ様のサインを書いて下さいっ!」
門番が少々恥じらいながらも、ペンを取り出し俺に頼んだ。
「おほほ、お安い御用で御座いますわ」
俺はペンを受け取ると、サラサラサラっとテキトーなサインを書き門番にペンを返した。
「うひょっ、あ、有難う御座いますっ! へへっ、みんなに自慢してやるぜ」
私のサインを受け取った門番はまるで少年の様にはしゃいでいる。
もう一人の門番は、俺に興味関心が無いのか若干冷ややかな目をしながら愛想笑いをしている。
多分20歳位の彼等から見て14歳の俺に興味を示すのはロリコンに片足を突っ込んでいる以上此方の反応の方が正しいとは思うが。
「お聞きしたい事が御座いますが宜しくて?」
「どうぞどうぞ、私の家族構成から趣味、恋人の話まで何なりとお聞きくださいませ!」
得意気に言う門番だが、生憎アンタのプライベート情報など一切合切興味関心は無い。
「エリウッド様に関してお聞きしたい事が御座います」
「え、エリウッド様? まさか、ルチーナ様はエリウッド様と!?」
門番は稲妻に撃たれたかの様に衝撃を受けている。
確かにエリウッドからは惚れ薬の力とは言え俺を追い回しているが、どうしてそんな発想をするのかとツッコミを入れたくなるところだ。
「おい、全く。ルチーナ様がお前のプライベートに興味がある訳無いだろう。エリウッド様ならアーブラハム様の居る本邸に向かいました。私がご案内いたします」
と言って門番は相方に視線で圧を掛けた。
「クッ、行って来いよ」
相方は言い争いをしようと思ったが思い留まったかのように見える。
こう見えても一応、職務中である自覚はある様だ。
「感謝いたしますわ」
俺は、自分に興味を抱いていない方の門番に連れられアーブラハム本邸に案内された。
その道中、彼からは原付について根掘り葉掘り聞かれた。
どうやら彼は機械と言えば良いのか、からくりは世界観が違うし、とにかく不思議な物体に対して非常に興味がある様だった。
また、俺が身に着けているヘルメットにも興味を示しており、軽くて強度の高い素晴らしい防具と絶賛していた。
確かにこの世界からしたら、たかが原付のヘルメットですら優秀な頭防具なのだろう。
道中すれ違うアーブラハム邸に使用される人達も、俺自身や原付に興味を示すモノがおり、時折声を掛けられては称賛される事になったのだった。
これはこれで、なんだか小さな組織とは言えスターになったみたいで悪い気はしないな。
もしも前世の時に同じ経験をしていたらまた違った人生になったのかもしれない。
「ルチーナ様がエリウッド様をお探しの様だ」
アーブラハム本邸に辿り着くとここまで案内した門番が、そこを守る2人の門番に伝令をした。
やはり彼等も俺に興味があるらしく、適当な応対をした後詳しい事は執事が知っていると言われ中へ案内される事になった。
原付を入り口の前に停車させ、ヘルメットとゴーグルをそこに置いた後、門番と共に本邸の中に入った。
本邸の中に入るとすぐ、フォーマルスーツに身を纏った聡明そうなおじ様の姿が目に映る。
恐らく彼が先程言っていた執事だろう。
彼からは何とも言えぬ気高きオーラ感じる事が出来、かなりのやり手である事を直感した。
「これはこれはルチーナ様。我がアーブラハム邸まで遠方よりようこそおいでなさいました」
執事は丁重なお辞儀を見せながら言う。
「此方こそ、急な来訪にもかかわらず丁寧な応対感謝いたします」
俺も同じく丁寧なお辞儀を見せながら言う。
「して、エリウッド様ですが」
俺がその話をする前に執事が言う。
何故分かる? と一瞬思ってしまったが、先程俺と門番の会話で今回の目的の話をしていたからそれを彼が聞いていたとするならば十分あり得る話だろう。
「残念ながらエリウッド様は来訪されておりません」
微妙な間を経て執事が告げる。
そのケースの中からは1枚の写真とはいかないが、恐らく鉛筆で書いたであろう精巧な少女の絵が描かれていた紙が入っていた。
で、彼の言う通りその少女と言うのが俺の姿と酷似している。
どこかで誰かが俺の自画像を描いたのだろう。
「おまえ、それっ、以前高い買い物したって言ってた時?」
「ああそうさ、大金叩いて買ったんだ!」
高々ブロマイドに近い物に対して大金と言われる事に少々違和感を覚えるが、この時代、手描きでなければその手のモノを生み出せないとなれば値が張るのは仕方がない事か。
自分のブロマイドに対し高値がついているのは少しばかり嬉しく思えてくるのだけども。
「確かにお前の言う通りその絵と目の前の少女は同じだな」
「そうだろ? そうだろ? ささっ、ルチーナ様、出来れば一つだけ頼みがあるのですが」
そう言われてロクな事は浮かばないが、最悪原付で逃げれる訳だから聞くだけ聞こう。
「どの様な事で御座いましょうか?」
俺はステラ嬢ほどではないが柔らかめの笑顔を見せ返事をした。
「そ、その、この絵の裏側にルチーナ様のサインを書いて下さいっ!」
門番が少々恥じらいながらも、ペンを取り出し俺に頼んだ。
「おほほ、お安い御用で御座いますわ」
俺はペンを受け取ると、サラサラサラっとテキトーなサインを書き門番にペンを返した。
「うひょっ、あ、有難う御座いますっ! へへっ、みんなに自慢してやるぜ」
私のサインを受け取った門番はまるで少年の様にはしゃいでいる。
もう一人の門番は、俺に興味関心が無いのか若干冷ややかな目をしながら愛想笑いをしている。
多分20歳位の彼等から見て14歳の俺に興味を示すのはロリコンに片足を突っ込んでいる以上此方の反応の方が正しいとは思うが。
「お聞きしたい事が御座いますが宜しくて?」
「どうぞどうぞ、私の家族構成から趣味、恋人の話まで何なりとお聞きくださいませ!」
得意気に言う門番だが、生憎アンタのプライベート情報など一切合切興味関心は無い。
「エリウッド様に関してお聞きしたい事が御座います」
「え、エリウッド様? まさか、ルチーナ様はエリウッド様と!?」
門番は稲妻に撃たれたかの様に衝撃を受けている。
確かにエリウッドからは惚れ薬の力とは言え俺を追い回しているが、どうしてそんな発想をするのかとツッコミを入れたくなるところだ。
「おい、全く。ルチーナ様がお前のプライベートに興味がある訳無いだろう。エリウッド様ならアーブラハム様の居る本邸に向かいました。私がご案内いたします」
と言って門番は相方に視線で圧を掛けた。
「クッ、行って来いよ」
相方は言い争いをしようと思ったが思い留まったかのように見える。
こう見えても一応、職務中である自覚はある様だ。
「感謝いたしますわ」
俺は、自分に興味を抱いていない方の門番に連れられアーブラハム本邸に案内された。
その道中、彼からは原付について根掘り葉掘り聞かれた。
どうやら彼は機械と言えば良いのか、からくりは世界観が違うし、とにかく不思議な物体に対して非常に興味がある様だった。
また、俺が身に着けているヘルメットにも興味を示しており、軽くて強度の高い素晴らしい防具と絶賛していた。
確かにこの世界からしたら、たかが原付のヘルメットですら優秀な頭防具なのだろう。
道中すれ違うアーブラハム邸に使用される人達も、俺自身や原付に興味を示すモノがおり、時折声を掛けられては称賛される事になったのだった。
これはこれで、なんだか小さな組織とは言えスターになったみたいで悪い気はしないな。
もしも前世の時に同じ経験をしていたらまた違った人生になったのかもしれない。
「ルチーナ様がエリウッド様をお探しの様だ」
アーブラハム本邸に辿り着くとここまで案内した門番が、そこを守る2人の門番に伝令をした。
やはり彼等も俺に興味があるらしく、適当な応対をした後詳しい事は執事が知っていると言われ中へ案内される事になった。
原付を入り口の前に停車させ、ヘルメットとゴーグルをそこに置いた後、門番と共に本邸の中に入った。
本邸の中に入るとすぐ、フォーマルスーツに身を纏った聡明そうなおじ様の姿が目に映る。
恐らく彼が先程言っていた執事だろう。
彼からは何とも言えぬ気高きオーラ感じる事が出来、かなりのやり手である事を直感した。
「これはこれはルチーナ様。我がアーブラハム邸まで遠方よりようこそおいでなさいました」
執事は丁重なお辞儀を見せながら言う。
「此方こそ、急な来訪にもかかわらず丁寧な応対感謝いたします」
俺も同じく丁寧なお辞儀を見せながら言う。
「して、エリウッド様ですが」
俺がその話をする前に執事が言う。
何故分かる? と一瞬思ってしまったが、先程俺と門番の会話で今回の目的の話をしていたからそれを彼が聞いていたとするならば十分あり得る話だろう。
「残念ながらエリウッド様は来訪されておりません」
微妙な間を経て執事が告げる。
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