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1章「おっさん田中太郎悪役令嬢に転生」

12話「真ほれ薬!」

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 なーーーにが掘れ薬と彫れ薬ぢゃあああああっ!
 俺が求めてるのは惚れ薬だっつーーーのっ!
 3種類もあるのが可笑しいと思ったわッ!
 
 あんにゃろーーーっ! 帰ったら覚えてやがれッ! ほっぺたぷにぷにのぐりぐりのぎゅるっぎゅるにしてくれるわッ!
 くそぅ、3つ目の赤い薬はちゃんと惚れ薬って書いてありはしたが。
 ええい! ここまで来たら、もうどうとでもなれっ!

「おーっほっほ、ステキな芸術感謝いたしますわ! お礼にこれを飲みなさい」

 俺は最後のほれ薬が入った小瓶を取り出してステラ令嬢に差し出す。

「ルチーナ様。 お気遣いありがとうございます」

 ステラ嬢が無事赤色の液体、我が求める真のほれ薬を口に含む。
 わっはっは! これでステラお嬢様は俺の物になるッ! これでステラお嬢様にあんな事やこんな事をやっても問題無くなるのだ!
 ステラ嬢との今後をもーそーし、すっげー気持ち悪いレベルのにやにや顔をしたところで急にエリウッドのポエムが止んで、

「Oh~愛しのステラよ~私も歌い続けて喉が枯れたのさ~君の持つフルーティーなジュースを僕にも分けてくれたまへ~」

 ステラお嬢様が半分程お飲みになられた正真正銘(ほんもの)の惚れ薬を、エリウッドきゅんがステラお嬢様から受け取って~。
 赤い液体を~きっと彼はいちごぢゅーすと思って~ごっくんと人飲みしたのさ~♪
 もーそーにふけっていたおーれは~突然起こった出来事に~か~らだがうーごかずぅ~。
 こーのまーまでは、エリウッドきゅんもおーれに惚れてしまうのさ~と気付いたのは惚れ薬を飲み終わったあ~とだったのさぁ♪

 もーそー? もう、そうでしたら仕方ありません。
 脳を駆け巡るおやぢぎゃぐ、ああ願わくば惚れ薬は全部飲まないと効果が無いと言ってくれレオナルトきゅんよ~
 ああ現実は無情さ~半分でも十分効果があるって書いてあったのさ~

「ル、ルチーナ様、じ、じつはわたくし前々から思っていた事がございます」

 ああ待望のステラお嬢様の声がお聞こえになられるぅ~。
 べったりと密着なされて腕にやわらかな感触を感じ取れる~。
 うへっ、うへへ、こいつぁたまりませんなぁッ!
 
 冥界のはざまを彷徨っていた俺の魂が、女性の武器により現実へと引き戻す!
 
「あら? どの様な事でありましょう?」

 心の中で何を思っていようが令嬢であらなければならぬ。
 俺は心の声が漏れないよう細心の注意を払い丁重な言葉つむ紡ぎ出す。

「はい、及ばせながらわたくしステラ・キルミールはルチーナ様に恋心を抱いてございます」

 真っ直ぐな瞳で俺をみつめ、ほほを赤く染めながらも言い終ると、恥ずかしさに耐えれなくなったのか視線をそっと外すステラ令嬢。
 むぅ、やはり可愛く美しいでは無いかッ! へーっへっへ、安心するのだよ、今に可愛いお嫁さんにしてあげるからね~。

 ステラたんをお嫁さんにしてうへっ、うへへ、うへへへ。
 と、もーそーにふけり危うく口からよだれがこぼれそうになった所で俺は現実へ引き戻される。

「Oh~ミスステラ~それはこの僕が認める訳には行かないNe」

 髪をさっとかきあげ、俺の前に立ちふさがるエリウッド君。

「愛しき令嬢ルチーナよ、僕の許嫁になりたまえ」

 瞳を輝かせ私をじっくりと見据えながら、片膝を立てひざまづくエリウッド君だ。
 チィィィッ! 俺は男だぞっ! 誰が男である貴様なんぞにぃぃぃっ!
 貴様の想いを受け止めた日にはBLが完成してしまうではないかッ!
 くそぅっ。 どうする? このお邪魔虫をどうしてやれば良いのだっ!

「嫌でございます、ルチーナ様はわたくしステラのモノでございます」

 ステラ嬢は、ふわっとエリウッドをにらみつけると俺を胸元に手繰り寄せる。
 改めてステラ嬢が聖女に見える瞬間だ。

「HAHAHA! 恋に障壁(ライバル)はつきものSA! 良いだろう、婚約者であった僕達は気が合う様だ」

 ステラ嬢に対し宣戦布告するエリウッド君。
 そう言えば君は今さっきまでステラ嬢へ向けた愛のポエムを5章まで歌って無かったかい?

「おっしゃる通り、婚約者であった貴方とは気が合いますわ。 良いでしょう、その勝負受けて立ちますわ! どちらがルチーナに様にふさわしいか白黒つけますわ!」

 ステラおじょー様? 勝負なんかしなくても良いんですよ? 貴女だけが俺の元に来ていただければ。
 言いたくなるけどさ、言いたくなるけどさ! 二人共闘志のオーラむき出しじゃんか! 俺が出る幕ねぇしッ!
 かと言ってこの空気、取り合われる俺がビシッと言わなきゃ収まりそうにないっ!
 俺はステラ嬢を優しく振り解き二人の間に立ち、指を天に向け差しながら、
 
「おーほっほっほ。 このあたくしを取り合って踊り散らすが良いですわ!」

 俺は高笑いを決め、二人の勝負をすげー勢いで煽(あお)った。
 仕方無い、仕方無いのだ。
 この空気、悪役令嬢である自分の立場を守る為にはこうするしか無かったのだッ!!!!
 
 
 どーーーーしてこーーーなったああああっ!!!!
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