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開かれた道
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「そう捉えられても仕方ないな。大事なことが抜けていたよ。こちらからは留学生として送るが、アイナス帝国では女性官僚の視察を名目として賓客として扱われることになる。もちろん護衛も侍女も連れて行ってもらうし、下手に扱われる事は絶対にない」
フェリペは何が可笑しいのか笑いながら説明を付け足したのだが、賓客とすることが決まっているなら、既に皇帝にまで話が行っていると言うことだ。それこそ断れるわけが無い。全く笑えない話だった。
王国内で漏れることはなくても帝国には断ったことがダダ漏れということ。クロッカには拒否権などあるわけがなかった。
「お受け致しますが、視察を名目としても見るものの目がどれほど変わるか…殿下の名の下、私の身の安全の確保を条件にさせていただきます」
「いいだろう。私ではなく陛下勅命での視察とすればいい。国へ帰ることが目的だと皆が理解するだろう。学園の卒業時期に合わせて帰国し、そのまま君は外務大臣の補佐あたりに着任してもらう。それで、君たちの結婚はいつになるんだい。1ヶ月以内にはして欲しいのだが」
王妃が女性の社会活動の支援を発表している以上、卒業後に女官を割り当てられることはほぼないだろうとは思っていたが、外務大臣の補佐官とはまた大きい場所に当てがわれるなと思っていた。女性を奴隷の様に扱う国すらある。苦労することは目に見えている。
しかしそれよりもクロッカには疑問なことがあった。
殿下は結婚するものだと思っているのに帝国行きを当たり前のように提案した。
特進科への編入希望も知った上でなぜ当たり前に結婚をすると思っているのだろうか。
この頭の中を覗いてみたいと思うほど奇怪な話だ。
「特進科への希望も結婚する予定がないからですわ。お気遣いは無用です。殿下に嘘をつくわけにはいきません。正直に申しますと、アルベルトとはうまくいかなかったのです。しかし、こちらにはデメリットしかない婚約破棄をするのもおかしな話だと思い至り、私を傷つける結末は自分で用意させるべきだと放っておくことにしたのです」
フェリペはみるみると顔色を変え、目を段々と大きく開いていった。
クロッカは何でもないことのようにアールグレイを口に含み音も立てず喉に通す。
まだエドレッドとの話し合いもされていなかったので、フェリペが知らないのも無理はないことだった。
「おいおいおいおい。それでは君は婚約者を捨てて留学をするようなもんだ。とんでもない捉え方をされるぞ。」
フェリペ殿下は、アルベルトと結婚をする前提で留学の話を考えていた。アルベルトの権威も借り、既婚者であればありもしない疑惑が持ち上がることもないと考えていたのだ。
今国民の先頭に立っているような立場のクロッカに、実際にどういう反応が待っているかは分からない。
しかし、印象操作を間違えれば途端にクロッカの足元は崩れ去る事だろう。
それはクロッカのお陰で躍進した改革派も、そして改革派を押した王族も望まないことだった。
「そうは言われましても、これはアルベルトが引き起こしたこと。私の名誉など元からありませんもの。その分私は努力をするまでのこと。大したことじゃありませんわ」
「努力が認められるまでには時間がかかる。その間に叩き潰されることもあるのだぞ?」
フェリペとて、クロッカを可愛がっていた1人だ。
アルベルトがシュゼインの婚約者としていなかったら、甥たちの婚約者に押し上げたことだろう。
そのクロッカを苦労の道へ進ませることは本意ではない。
「そうですわね。それでも私は潰されるわけにはいきません。その悪意ごと潰す位でなければ、女である私が官職として認められるのは無理なことでしょう。」
クロッカは四面楚歌となるだろう未来に、相当の覚悟を持っていた。今はエドレッドとアルベルトの庇護下にいることを、伯爵令嬢として甘んじて受け入れているが、卒業後はそうはいかない。自分の手で自分を守れるだけの手段を持たなければいけない。
もちろん実家の伯爵家を頼ることは有るだろうが、それもデメリットを押し付けるようでは話にならないのだ。
「その覚悟があるならばそのままアルベルトと結婚しろ。自分を守る手段として利用してやればいい」
フェリペの言葉に、はたと思考が止まった。
しかし結局は自分の望まない結婚だと思い至る。
心から支え合える相手でないのなら、自分の道には邪魔なものでしかない。
「利用してやることは仕返しにはいいかもしれませんね。しかし、その仕返しで自分を傷つけてしまっては結局は後悔するだけ。自分のためにその選択をするわけにはいきませんの」
まっすぐに向き合いフェリペを見据える。
先に目を逸らし下を向いたのはフェリペだった。
「はぁ…分かった。しかし婚約破棄は帰国まではさせない。アルベルトにも私から話そう。君は準備を始めてくれ。出来るだけ早く出国の手続きを取ろう」
てっきり夫婦で官職になるものだと思っていたのだが。と残念そうに呟きながら去って行った彼の背中は、つい最近見たエドレッドの背中を思い起こさせるものだった。
違う所と言ったら、山盛りの焼き菓子を残して行ったことだろう。
フェリペは何が可笑しいのか笑いながら説明を付け足したのだが、賓客とすることが決まっているなら、既に皇帝にまで話が行っていると言うことだ。それこそ断れるわけが無い。全く笑えない話だった。
王国内で漏れることはなくても帝国には断ったことがダダ漏れということ。クロッカには拒否権などあるわけがなかった。
「お受け致しますが、視察を名目としても見るものの目がどれほど変わるか…殿下の名の下、私の身の安全の確保を条件にさせていただきます」
「いいだろう。私ではなく陛下勅命での視察とすればいい。国へ帰ることが目的だと皆が理解するだろう。学園の卒業時期に合わせて帰国し、そのまま君は外務大臣の補佐あたりに着任してもらう。それで、君たちの結婚はいつになるんだい。1ヶ月以内にはして欲しいのだが」
王妃が女性の社会活動の支援を発表している以上、卒業後に女官を割り当てられることはほぼないだろうとは思っていたが、外務大臣の補佐官とはまた大きい場所に当てがわれるなと思っていた。女性を奴隷の様に扱う国すらある。苦労することは目に見えている。
しかしそれよりもクロッカには疑問なことがあった。
殿下は結婚するものだと思っているのに帝国行きを当たり前のように提案した。
特進科への編入希望も知った上でなぜ当たり前に結婚をすると思っているのだろうか。
この頭の中を覗いてみたいと思うほど奇怪な話だ。
「特進科への希望も結婚する予定がないからですわ。お気遣いは無用です。殿下に嘘をつくわけにはいきません。正直に申しますと、アルベルトとはうまくいかなかったのです。しかし、こちらにはデメリットしかない婚約破棄をするのもおかしな話だと思い至り、私を傷つける結末は自分で用意させるべきだと放っておくことにしたのです」
フェリペはみるみると顔色を変え、目を段々と大きく開いていった。
クロッカは何でもないことのようにアールグレイを口に含み音も立てず喉に通す。
まだエドレッドとの話し合いもされていなかったので、フェリペが知らないのも無理はないことだった。
「おいおいおいおい。それでは君は婚約者を捨てて留学をするようなもんだ。とんでもない捉え方をされるぞ。」
フェリペ殿下は、アルベルトと結婚をする前提で留学の話を考えていた。アルベルトの権威も借り、既婚者であればありもしない疑惑が持ち上がることもないと考えていたのだ。
今国民の先頭に立っているような立場のクロッカに、実際にどういう反応が待っているかは分からない。
しかし、印象操作を間違えれば途端にクロッカの足元は崩れ去る事だろう。
それはクロッカのお陰で躍進した改革派も、そして改革派を押した王族も望まないことだった。
「そうは言われましても、これはアルベルトが引き起こしたこと。私の名誉など元からありませんもの。その分私は努力をするまでのこと。大したことじゃありませんわ」
「努力が認められるまでには時間がかかる。その間に叩き潰されることもあるのだぞ?」
フェリペとて、クロッカを可愛がっていた1人だ。
アルベルトがシュゼインの婚約者としていなかったら、甥たちの婚約者に押し上げたことだろう。
そのクロッカを苦労の道へ進ませることは本意ではない。
「そうですわね。それでも私は潰されるわけにはいきません。その悪意ごと潰す位でなければ、女である私が官職として認められるのは無理なことでしょう。」
クロッカは四面楚歌となるだろう未来に、相当の覚悟を持っていた。今はエドレッドとアルベルトの庇護下にいることを、伯爵令嬢として甘んじて受け入れているが、卒業後はそうはいかない。自分の手で自分を守れるだけの手段を持たなければいけない。
もちろん実家の伯爵家を頼ることは有るだろうが、それもデメリットを押し付けるようでは話にならないのだ。
「その覚悟があるならばそのままアルベルトと結婚しろ。自分を守る手段として利用してやればいい」
フェリペの言葉に、はたと思考が止まった。
しかし結局は自分の望まない結婚だと思い至る。
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「利用してやることは仕返しにはいいかもしれませんね。しかし、その仕返しで自分を傷つけてしまっては結局は後悔するだけ。自分のためにその選択をするわけにはいきませんの」
まっすぐに向き合いフェリペを見据える。
先に目を逸らし下を向いたのはフェリペだった。
「はぁ…分かった。しかし婚約破棄は帰国まではさせない。アルベルトにも私から話そう。君は準備を始めてくれ。出来るだけ早く出国の手続きを取ろう」
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違う所と言ったら、山盛りの焼き菓子を残して行ったことだろう。
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