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女
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クロッカはイリアと別れた後、自室で考え込んでいた。
イリアの話を聞いて、修道院ではない道が提示された。しかし、女官ではなく、男性と同じ職につくことは前例がなく、確約されていない現状。
女官になってしまえばクロッカは結局辛い状況に追い込まれることになるだろう。
「この道を選ぶには相当な覚悟が必要だわ…」
アルベルトを好きになるのに努力は必要がなかった。それが自然な流れだった様にいつの間にか惹かれていた。
愛する努力なんてさせるだけ無駄なのだと考えていたし、もう諦めるしか選択の余地はない思っていた。
ただ対等に見られない不満を嘆いていただけの自分が恥ずかしい。
結局は自分は求められるのを待っていただけ。
イリアの話を聞いた後では愛されないのも当たり前だと感じていた。
「はぁ…出来るだけ早くアルベルトと会わなければいけないわね。2度と顔を見ないと決めていたのに、こんなにすぐ考えを改めることになるなんて皮肉なものだわ」
グダリとベッドに横たわっていたクロッカは気怠げに起き上がり、少し皺の寄ったドレスの裾をパンッと一度叩いてテーブルに向かうと。引き出しからメッセージカードを取り出した。
アルベルトの予定を把握していないため、とりあえずアルベルトの屋敷へ手紙を出してもらうことにした。
封筒には急ぎアルベルトに渡して欲しいと追記しておいた。
そんな手段を取ったのは初めてだった。
2ヶ月ぶりに一度顔を見た日のあの涼しい顔はさぞ歪むことだろう。手紙にはこの婚約の本当の意味を聞きたいと書いた。クロッカのほんの少しの悪戯心だった。
なんとなくイリアの話を聞いて、アルベルトは結婚する気は最初からなかったのだろうと思い至っていた。そもそも愛する努力をする気がなかったのだろうと。
日も暮れた後、アルベルトからの返事が来た。
屋敷には戻れないが、王宮でなら話すことはできると。
その返事はクロッカにとっては好都合だった。
屋敷に戻るのが遅くなるからと日を改められるより、早く真相を得られる。
王宮へ呼ばれるのは初めてのことだったので、心を汲んでくれたということだろう。
すぐに準備を始め、王宮に向かうことにした。
王宮への門番にアルベルトとの約束があると言うと、暫くしてアルベルトの秘書官だという1人の男が迎えに来て彼の執務室まで案内してくれた。
「ワーデン伯爵様、お忙しいのにお時間をいただきありがとうございます」
クロッカは前回と同じ様にしっかりと化粧をし、1番お気に入りのアイボリーの生地に、カラフルな刺繍を施してあるドレスを選んでいた。
「あぁクロッカ。こんなところまで呼び立てて申し訳ない。どうぞ座ってくれ」
アルベルトはクロッカを見ると、執務机から立ち上がってソファーへ移った。
クロッカも反対側のソファへと座る。
「お茶が出せなくてごめんね、レモン水だけど冷えているからどうぞ」
案内をしてくれたアルベルトの秘書官がガラスの水差しからグラスに注いでクロッカの前に置いた。
この案内人、とてもフレンドリーに話す。
ここまでの道すがら話を聞くに、キリルと名乗った男は、アルベルトの学園時代の同級生ということだった。
少し前にアルベルトの秘書官に就任したらしい。
「キリル様、ありがとうございます」
侍女もいない執務室だ。お茶が出てこないことも不思議ではない。
「キリル、少し席を外してくれないか」
「それは聞けない相談ですね。こんな可憐な令嬢と2人にするなんて出来るわけがありません」
その2人のやりとりを視界の端に納めたまま、クロッカは冷たいレモン水に口を付ける。
婚約者であっても男性と2人きりにするはずはない。
結局2人は暫く睨み合ったが、キリルは自分の席で仕事をすることで落ち着いた。
イリアの話を聞いて、修道院ではない道が提示された。しかし、女官ではなく、男性と同じ職につくことは前例がなく、確約されていない現状。
女官になってしまえばクロッカは結局辛い状況に追い込まれることになるだろう。
「この道を選ぶには相当な覚悟が必要だわ…」
アルベルトを好きになるのに努力は必要がなかった。それが自然な流れだった様にいつの間にか惹かれていた。
愛する努力なんてさせるだけ無駄なのだと考えていたし、もう諦めるしか選択の余地はない思っていた。
ただ対等に見られない不満を嘆いていただけの自分が恥ずかしい。
結局は自分は求められるのを待っていただけ。
イリアの話を聞いた後では愛されないのも当たり前だと感じていた。
「はぁ…出来るだけ早くアルベルトと会わなければいけないわね。2度と顔を見ないと決めていたのに、こんなにすぐ考えを改めることになるなんて皮肉なものだわ」
グダリとベッドに横たわっていたクロッカは気怠げに起き上がり、少し皺の寄ったドレスの裾をパンッと一度叩いてテーブルに向かうと。引き出しからメッセージカードを取り出した。
アルベルトの予定を把握していないため、とりあえずアルベルトの屋敷へ手紙を出してもらうことにした。
封筒には急ぎアルベルトに渡して欲しいと追記しておいた。
そんな手段を取ったのは初めてだった。
2ヶ月ぶりに一度顔を見た日のあの涼しい顔はさぞ歪むことだろう。手紙にはこの婚約の本当の意味を聞きたいと書いた。クロッカのほんの少しの悪戯心だった。
なんとなくイリアの話を聞いて、アルベルトは結婚する気は最初からなかったのだろうと思い至っていた。そもそも愛する努力をする気がなかったのだろうと。
日も暮れた後、アルベルトからの返事が来た。
屋敷には戻れないが、王宮でなら話すことはできると。
その返事はクロッカにとっては好都合だった。
屋敷に戻るのが遅くなるからと日を改められるより、早く真相を得られる。
王宮へ呼ばれるのは初めてのことだったので、心を汲んでくれたということだろう。
すぐに準備を始め、王宮に向かうことにした。
王宮への門番にアルベルトとの約束があると言うと、暫くしてアルベルトの秘書官だという1人の男が迎えに来て彼の執務室まで案内してくれた。
「ワーデン伯爵様、お忙しいのにお時間をいただきありがとうございます」
クロッカは前回と同じ様にしっかりと化粧をし、1番お気に入りのアイボリーの生地に、カラフルな刺繍を施してあるドレスを選んでいた。
「あぁクロッカ。こんなところまで呼び立てて申し訳ない。どうぞ座ってくれ」
アルベルトはクロッカを見ると、執務机から立ち上がってソファーへ移った。
クロッカも反対側のソファへと座る。
「お茶が出せなくてごめんね、レモン水だけど冷えているからどうぞ」
案内をしてくれたアルベルトの秘書官がガラスの水差しからグラスに注いでクロッカの前に置いた。
この案内人、とてもフレンドリーに話す。
ここまでの道すがら話を聞くに、キリルと名乗った男は、アルベルトの学園時代の同級生ということだった。
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「キリル様、ありがとうございます」
侍女もいない執務室だ。お茶が出てこないことも不思議ではない。
「キリル、少し席を外してくれないか」
「それは聞けない相談ですね。こんな可憐な令嬢と2人にするなんて出来るわけがありません」
その2人のやりとりを視界の端に納めたまま、クロッカは冷たいレモン水に口を付ける。
婚約者であっても男性と2人きりにするはずはない。
結局2人は暫く睨み合ったが、キリルは自分の席で仕事をすることで落ち着いた。
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