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花
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あの窓は彼の部屋だ。
馬車に乗り込み、ここへ来る事はもうないかもしれないと思いながら屋敷を見ると、外に漏れ出す光の中にくっきりと窓の外を見る人影が見えた。
クロッカがすぐに馬車のスクリーンを閉めたと同時に、馬たちが近くの宿へと出発した。
最初の涙が頬を伝ったのを合図にし、涙腺は壊れたように悲しみを噴き上げていく。
エドレッドの胸で泣く彼女の啜り泣く声を馬車の車輪の音が掻き消していた。
あの光の漏れる窓の隅で、ハルジオンだけが揺れ動いていたことを彼女は知る事はない。
アルベルトとの婚約が発表されると、クロッカは突如として注目されることになった。
シュゼインとの婚約破棄より、アルベルトとの婚約の方が衝撃を与えていることに戸惑う。
シュゼインとはクラスこそ別であるが同じ一般科。
クロッカはシュゼインと会わないように努めていた。
彼のいない生活に慣れない。きっとシュゼインもそう感じているのだろう。
特に入学してからは毎日顔を合わせられるようになり、婚約していた10年の中で1番幸せを感じていた。その幸せの中の婚約破棄。
シュゼインの幸せなんて願えるはずもなく、ましてや薬を盛って婚約者を奪って行ったアウストリア公爵令嬢を許せるはずもなかったし、それを子供には罪はないと受け入れるシュゼインも理解できない。
結婚しなければいけないのも、公爵家の娘を邪険に出来るわけがない事も理解できる。
しかし、受け入れてしまえるシュゼインを理解出来なかった。
ステファニーと夫婦として上手くやっていけたらと考えていると聞いた時は気持ち悪いと思った。
頭に花でも咲いているのではないかと疑う程だ。
彼は勉強の面でも優秀だし、性格も温和。
たしかにとても優しいが、非道さや姑息さという人間味をあまり感じた事はなかった。
ヒシヒシ感じる失望も失恋の一部だと考える事にしていた。
勝手に好きに言ってろーーーっ!
何を言われても自分の置かれている状況は変わらないとクロッカは諦めた。
何日も同じ話題が巡っていれば慣れるというものである。
アルベルトは意外にも王都にいる時は5分でも10分でも会いにきた。
今はクロッカの愚痴を聞きに来ているだけの状態だが、よく続くものだなと感心する。
クロッカにとってシュゼインの結婚が発表されるまで、素直に愚痴を言う相手もいない。
ちょうど良いとばかりに口は弾んだ。
気が紛れればそれでよかった。1人で部屋にいると寂しさが襲いかかってきてしまう。
「シュゼインは頭のネジが足らないのよ。そしてみんなも。あなたたちのしてる噂よりも私は地獄にいるのよって大声で言ってやりたくなるもの」
「大丈夫。クロッカは幸せになるよ。その頭のネジが足らないシュゼインよりもいい男が隣にいることに気がついたらね」
目の前でクロッカが今1番気に入っているアールグレイを啜っているアルベルトであるが、クロッカはどうも釈然としなかった理由が段々と分かって来ていた。
アルベルトの言葉にしっくり来ない理由は彼が当事者だと気付いていないからだ。
「アルベルト様、不思議なのですけど、アルベルト様も私より他者を優先して、私に全て押し付ける結果を望んだ当事者ですよね?なぜ私の元へ当たり前のような顔でいらっしゃるのかしら。自分の頭のネジが全て締まっていると思ってらっしゃるの?」
今見れば、アルベルトは35歳。それなのに引き締まった身体。きめの細かい肌。自信に満ちた顔。女性とは異なる綺麗な指。
だんだんと憎らしく感じる。
優秀さが抜きん出ていると言われるこの男が、私に全て押し付ける結果を導き出した本人なのだ。
「私の判断でクロッカを失う結果を選ばなかっただけだ。シュゼインは自分の望む結果を掴む力がなかった。それだけの話だよ」
尚も涼しい顔でお茶を飲むシュゼイン。今日はだいぶゆっくりと過ごしているようだ。
「空いた口が塞がらないとはこのことね。私から見たらどうでもいいこと。私が傷付く結果を望んだ事に変わりはないわ」
「それは違う。確かにクロッカとシュゼインが別れない方法を取る手段はあった。だが、事に気が付いた時点ではすでに最善と思われる手段を取れる段階ではなかった。さらに言えばそれでも強引に押し通せたが、今のシュゼインでは残酷な手段を選んだとしても、同じ結果になっていただろう。君は遅かれ早かれきっと傷付く事になったはずだ」
真っ直ぐにクロッカを映す目に濁りは見えない。
それでもやっぱり思ってしまう。何も知らずにシュゼインと笑い合っていた頃に戻りたいと。
「愚息のネジが今回のことで締まればいいんだがな」
本当に他人事のように言い放つ目の前の義父を愛することが出来るのかしらとクロッカは不安でしかたがなかった。
「シュゼインに見せつけるためだけに私をアルベルト様の妻にするつもりじゃありませんよね?そんなことの為に私を利用するなら今すぐ婚約はなかったことにしてください。私は道具ではなく、女性として扱ってくれる人でないと嫌ですわ」
「見せつけはするさ。クロッカは私のものだと知る必要はあるだろう。元々、シュゼインとは真逆な君ならぴったりだと見染めたのは私だ。その責任は取る。しかしまだクロッカは16歳になったばかり。これから娘ではなく女性として見るにはどうしても時間だけは必要だよ。君はまだシュゼインの天使ちゃんなんだ。君も流石に36のおじ様から好意を向けられたら気持ち悪いだろう。婚約期間は私が試される期間。君を全力で口説くと言ったのは嘘ではないよ」
アルベルトはクロッカの頭をポンポンと撫でた。
彼は婚約してからもクロッカを甘い言葉で口説くこともなかった。
いつものように娘を甘やかすだけの時間を過ごしてた。
それにホッとしているクロッカに恋をしろと言っても無理な話だった。
馬車に乗り込み、ここへ来る事はもうないかもしれないと思いながら屋敷を見ると、外に漏れ出す光の中にくっきりと窓の外を見る人影が見えた。
クロッカがすぐに馬車のスクリーンを閉めたと同時に、馬たちが近くの宿へと出発した。
最初の涙が頬を伝ったのを合図にし、涙腺は壊れたように悲しみを噴き上げていく。
エドレッドの胸で泣く彼女の啜り泣く声を馬車の車輪の音が掻き消していた。
あの光の漏れる窓の隅で、ハルジオンだけが揺れ動いていたことを彼女は知る事はない。
アルベルトとの婚約が発表されると、クロッカは突如として注目されることになった。
シュゼインとの婚約破棄より、アルベルトとの婚約の方が衝撃を与えていることに戸惑う。
シュゼインとはクラスこそ別であるが同じ一般科。
クロッカはシュゼインと会わないように努めていた。
彼のいない生活に慣れない。きっとシュゼインもそう感じているのだろう。
特に入学してからは毎日顔を合わせられるようになり、婚約していた10年の中で1番幸せを感じていた。その幸せの中の婚約破棄。
シュゼインの幸せなんて願えるはずもなく、ましてや薬を盛って婚約者を奪って行ったアウストリア公爵令嬢を許せるはずもなかったし、それを子供には罪はないと受け入れるシュゼインも理解できない。
結婚しなければいけないのも、公爵家の娘を邪険に出来るわけがない事も理解できる。
しかし、受け入れてしまえるシュゼインを理解出来なかった。
ステファニーと夫婦として上手くやっていけたらと考えていると聞いた時は気持ち悪いと思った。
頭に花でも咲いているのではないかと疑う程だ。
彼は勉強の面でも優秀だし、性格も温和。
たしかにとても優しいが、非道さや姑息さという人間味をあまり感じた事はなかった。
ヒシヒシ感じる失望も失恋の一部だと考える事にしていた。
勝手に好きに言ってろーーーっ!
何を言われても自分の置かれている状況は変わらないとクロッカは諦めた。
何日も同じ話題が巡っていれば慣れるというものである。
アルベルトは意外にも王都にいる時は5分でも10分でも会いにきた。
今はクロッカの愚痴を聞きに来ているだけの状態だが、よく続くものだなと感心する。
クロッカにとってシュゼインの結婚が発表されるまで、素直に愚痴を言う相手もいない。
ちょうど良いとばかりに口は弾んだ。
気が紛れればそれでよかった。1人で部屋にいると寂しさが襲いかかってきてしまう。
「シュゼインは頭のネジが足らないのよ。そしてみんなも。あなたたちのしてる噂よりも私は地獄にいるのよって大声で言ってやりたくなるもの」
「大丈夫。クロッカは幸せになるよ。その頭のネジが足らないシュゼインよりもいい男が隣にいることに気がついたらね」
目の前でクロッカが今1番気に入っているアールグレイを啜っているアルベルトであるが、クロッカはどうも釈然としなかった理由が段々と分かって来ていた。
アルベルトの言葉にしっくり来ない理由は彼が当事者だと気付いていないからだ。
「アルベルト様、不思議なのですけど、アルベルト様も私より他者を優先して、私に全て押し付ける結果を望んだ当事者ですよね?なぜ私の元へ当たり前のような顔でいらっしゃるのかしら。自分の頭のネジが全て締まっていると思ってらっしゃるの?」
今見れば、アルベルトは35歳。それなのに引き締まった身体。きめの細かい肌。自信に満ちた顔。女性とは異なる綺麗な指。
だんだんと憎らしく感じる。
優秀さが抜きん出ていると言われるこの男が、私に全て押し付ける結果を導き出した本人なのだ。
「私の判断でクロッカを失う結果を選ばなかっただけだ。シュゼインは自分の望む結果を掴む力がなかった。それだけの話だよ」
尚も涼しい顔でお茶を飲むシュゼイン。今日はだいぶゆっくりと過ごしているようだ。
「空いた口が塞がらないとはこのことね。私から見たらどうでもいいこと。私が傷付く結果を望んだ事に変わりはないわ」
「それは違う。確かにクロッカとシュゼインが別れない方法を取る手段はあった。だが、事に気が付いた時点ではすでに最善と思われる手段を取れる段階ではなかった。さらに言えばそれでも強引に押し通せたが、今のシュゼインでは残酷な手段を選んだとしても、同じ結果になっていただろう。君は遅かれ早かれきっと傷付く事になったはずだ」
真っ直ぐにクロッカを映す目に濁りは見えない。
それでもやっぱり思ってしまう。何も知らずにシュゼインと笑い合っていた頃に戻りたいと。
「愚息のネジが今回のことで締まればいいんだがな」
本当に他人事のように言い放つ目の前の義父を愛することが出来るのかしらとクロッカは不安でしかたがなかった。
「シュゼインに見せつけるためだけに私をアルベルト様の妻にするつもりじゃありませんよね?そんなことの為に私を利用するなら今すぐ婚約はなかったことにしてください。私は道具ではなく、女性として扱ってくれる人でないと嫌ですわ」
「見せつけはするさ。クロッカは私のものだと知る必要はあるだろう。元々、シュゼインとは真逆な君ならぴったりだと見染めたのは私だ。その責任は取る。しかしまだクロッカは16歳になったばかり。これから娘ではなく女性として見るにはどうしても時間だけは必要だよ。君はまだシュゼインの天使ちゃんなんだ。君も流石に36のおじ様から好意を向けられたら気持ち悪いだろう。婚約期間は私が試される期間。君を全力で口説くと言ったのは嘘ではないよ」
アルベルトはクロッカの頭をポンポンと撫でた。
彼は婚約してからもクロッカを甘い言葉で口説くこともなかった。
いつものように娘を甘やかすだけの時間を過ごしてた。
それにホッとしているクロッカに恋をしろと言っても無理な話だった。
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