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just married

有益な条件

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魔獣達は、しばらく要塞であるイシュトハン邸で管理することになった。
捕まえた魔導士達は大陸の離れ小島であるミーリン島の者で、違法に作られた魔獣達を保護する施設があるのだという。
フリードが調べた所、周辺国3カ国の監視の元で厳重な管理をしており、彼らはそれぞれの国から派遣された魔導士であり、保護対象となった魔獣を移送途中だったらしい。
縦断することになる往路の国で、魔獣の存在がバレないようにすることも、魔獣を巡る無駄な争いを避けるためであり、決して混乱させるためではなかったようだ。


ミーリン島へ問い合わせると、女王自ら謝罪に訪れるということで、魔導士達の引き渡しも決まった。
行方不明となっているのは狼一匹で間違いないらしく、その捜索協力も改めて依頼された。
複数の転移装置を経由してイシュトハンへ来るということで、準備も含めて時間がかかり、2週間後の到着に合わせて晩餐会を開くことになっている。


「それにしても私には全く懐かないわね」


クロエはフリードに引っ付く猫を掬い上げるようにして持ち上げると、シャーシャーと猫であることを思い出したかのように威嚇してくる。


「ステラも引っ掻かれていたし、魔力が強いことが関係しているのかもしれないね」

「あぁ、オーラが強すぎて魔物にでも見えているのかもしれないわね」


猫の黄色い目はフリードを思い起こさせる。
この三日間、夜は相変わらず王都の屋敷で寝ているが、客室のベッドを当主の間に転移させている。
初夜も終わったのだから使用人の目を気にして一緒に寝る必要もない。


「それだけ辛い思いをしたと思えば、それも仕方のないことだ」


「そうね。貴族の家にペットがいるだなんて、それだけで貴重な経験をさせてもらっているわ。懐かなくても安全な場所だけは提供しなきゃ」


猫をフリードに返すと、クロエは執務室から当主の間へと続く扉に手をかけた。
子供の頃に魔力が暴走しがちな貴族は、ペットを飼わない。
平民の富裕層がステイタスとしてペットを飼う程度だ。


「夜の間はこのフロアに結界を張っておくわ。貴方の執事にも伝えておいてね」

「今日も1人で寝るつもり?」


引こうとしたドアを後ろから押さえつけられて、クロエは後ろを向いた。
2日目から夜着はいつものシルクのワンピースに変えた。
あんなものは2度と着る機会はないだろう。


「私が泣いて縋るまで手を出さないのでしょう?どこで寝ようと私の勝手だわ」

「泣いて縋ってくれるなんて夢のようだけど、僕はそんなことを言った覚えはないよ。君が受け入れてくれるまで無理強いはしたくないと言ったんだ」

「なら勝手に私に触れないでくれる?」


肩にかかる髪を掬い取られ、反対側の手で腰に手を回されたら、身動きは取れない。


「一緒に寝る位夫婦になったのだからいいだろう?」

「いいえ、私は1人でゆっくりと寝たいのよ」

「僕は縛られたっていいよ。そうしたら君の好きなように出来る」


縛られたっていいと言われても、こちらにはそんな趣味はない。
クロエは考えるまでもなく無視を決め込む。


「クロエが僕に触るのは問題ないんだから、腹筋だって触りたい放題。どう?顔もいくらでも触っていいよ」


触りたい放題という言葉に、クロエはピクリと反応した。


「フリードを動けなくすればいいってことね…」


拘束した腕の中に拘束されてしまった過ちを2度と起こさなければ腹筋を撫で回せる。
悪魔の囁きのようだった。
そのチャンスを自ら潰すのは気が引ける。


「そうだよ。隣で寝るだけで希望が叶うよ。僕の顔も身体も好きだろう?」

「うっ…何故それを…」


フリードの顔が好きだとか、腹筋が好きだとか言ったことがあっただろうか。
身長の大きい人の方が好みだと言った覚えはあるが、それはフリードは小さいと侮辱したようなものだ。


「この間馬車で撫で回されたしね。腹筋を近くで見たくない?」


クロエの手を取ってフリードは夜着の上から腹筋を触らせる。


「うぅ…」


こうして誘惑に負けたクロエは、夫婦の寝室へと呆気なく連れ込まれ、喜んでベッドに拘束されたフリードの腹筋に抱きついて頬擦りをしながら眠った。


もちろん、朝には拘束魔法を解いたフリードに抱え込まれていたが、腹筋を堪能したお陰で怒りは込み上げず、クロエはそのことに目を瞑った。


それから1週間経ってもフリードは毎夜拘束されていると猫は証言している。
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