47 / 142
liberty
妊婦の帰宅
しおりを挟む
「クロ…エ?」
一瞬意識が飛んでしまったようだが、それ程時間は経っていないはずだ。
呼ばれた気がして目を開ければ、治癒魔法を施されている真っ最中のフリードと目が合った。
「あぁ、フリード目が覚めたの…」
まだポヤポヤとした頭を持ち上げると、私も寝かされていた事に気付いた。
動かされても起きなかったということかと呆れるが、この位のだるさなら魔力枯渇を起こした訳ではなかったということだ。
胃袋に詰め込んだ物たちが魔力を生成してくれたのだろう。
「クロエ…その子の父親は…僕だ」
何人もの入れ替わりで治癒魔法を使っているところを見ると、相当体中がボロボロだったのだろうことが分かる。
しかしまだ大きな傷は塞がっていないし、左手は枝に拘束されたままだ。
辺りを見渡したが、忙しなく動いていた騎士はピシッと動きを止めてこちらをギョッとした目で見ているが、その子と言われるような子供は見当たらなかったし、隠し子でも居たのかと思ったが、意識が朦朧としているだけかもしれない。
「寝惚けてるの?」
プイッと目線を逸らして上半身を起こす。
葉っぱが服にたくさん付いていて邪魔だった。
「クロ…エの…お腹の子だ」
バッと下を向くと、コルセットもしていない水色の薄い生地のワンピースはお腹の丸みを拾い、さっきまで寝かされていたのだから、誰もがまん丸のお腹を見ていたことだろう。
妊婦の様だと言われればそうだ。
「何をバカなことを!!」
途端に全員が私を見ている気がする。
フリードの子がいると思われているなんて恥ずかしすぎる。
更にそれが食べ過ぎで妊婦と勘違いされているのだからもう死にたいほどの屈辱。
「愛してる…クロエ…」
お得意のうるうるの目が真っ赤になった私を映している。
その目には弱いが、とんでもないことを口走ってくれたなと恨めしい気持ちが勝る。
子供なんて出来るわけがないじゃないか!それを分かっていて子供がいるように見せかけるなんてとんでもない男だ。
治癒魔法はその瞬間に解いた。情けをかけた私が馬鹿だったのよ。
「2度と貴方に会うことはないわ」
残り少ない魔力で私はエイフィルのウラリーの家へ転移した。
きっともう魔力はしばらく使えない。
腕の一つも動かせない私はウラリーの家の庭へと転移していた。
「メイリーさん!?」
庭で剣を振っていたらしいダンが駆け寄って来る。
家の中に転移するのは憚れたので透視もせず庭に転移したが、気付かれないことも想定していた。
「ダン…砂糖水を…もらえる?」
「もちろんです。どうしたんですか!?」
ダンに抱えられウラリーの家に入ると、リビング横にあるダンが使っているという殺風景な部屋へ連れて行かれた。
「まりょく…不足な…の…」
話すことも難しい程の魔力不足で、このまま眠ってしまったら死んでしまうのではないかと思うほどだった。
頭が働かないし、段々と身体が冷えて行くのがわかる。
防御魔法と加護の魔法を使っていることを思い出して解除した頃には、意識を失っていた。
一瞬意識が飛んでしまったようだが、それ程時間は経っていないはずだ。
呼ばれた気がして目を開ければ、治癒魔法を施されている真っ最中のフリードと目が合った。
「あぁ、フリード目が覚めたの…」
まだポヤポヤとした頭を持ち上げると、私も寝かされていた事に気付いた。
動かされても起きなかったということかと呆れるが、この位のだるさなら魔力枯渇を起こした訳ではなかったということだ。
胃袋に詰め込んだ物たちが魔力を生成してくれたのだろう。
「クロエ…その子の父親は…僕だ」
何人もの入れ替わりで治癒魔法を使っているところを見ると、相当体中がボロボロだったのだろうことが分かる。
しかしまだ大きな傷は塞がっていないし、左手は枝に拘束されたままだ。
辺りを見渡したが、忙しなく動いていた騎士はピシッと動きを止めてこちらをギョッとした目で見ているが、その子と言われるような子供は見当たらなかったし、隠し子でも居たのかと思ったが、意識が朦朧としているだけかもしれない。
「寝惚けてるの?」
プイッと目線を逸らして上半身を起こす。
葉っぱが服にたくさん付いていて邪魔だった。
「クロ…エの…お腹の子だ」
バッと下を向くと、コルセットもしていない水色の薄い生地のワンピースはお腹の丸みを拾い、さっきまで寝かされていたのだから、誰もがまん丸のお腹を見ていたことだろう。
妊婦の様だと言われればそうだ。
「何をバカなことを!!」
途端に全員が私を見ている気がする。
フリードの子がいると思われているなんて恥ずかしすぎる。
更にそれが食べ過ぎで妊婦と勘違いされているのだからもう死にたいほどの屈辱。
「愛してる…クロエ…」
お得意のうるうるの目が真っ赤になった私を映している。
その目には弱いが、とんでもないことを口走ってくれたなと恨めしい気持ちが勝る。
子供なんて出来るわけがないじゃないか!それを分かっていて子供がいるように見せかけるなんてとんでもない男だ。
治癒魔法はその瞬間に解いた。情けをかけた私が馬鹿だったのよ。
「2度と貴方に会うことはないわ」
残り少ない魔力で私はエイフィルのウラリーの家へ転移した。
きっともう魔力はしばらく使えない。
腕の一つも動かせない私はウラリーの家の庭へと転移していた。
「メイリーさん!?」
庭で剣を振っていたらしいダンが駆け寄って来る。
家の中に転移するのは憚れたので透視もせず庭に転移したが、気付かれないことも想定していた。
「ダン…砂糖水を…もらえる?」
「もちろんです。どうしたんですか!?」
ダンに抱えられウラリーの家に入ると、リビング横にあるダンが使っているという殺風景な部屋へ連れて行かれた。
「まりょく…不足な…の…」
話すことも難しい程の魔力不足で、このまま眠ってしまったら死んでしまうのではないかと思うほどだった。
頭が働かないし、段々と身体が冷えて行くのがわかる。
防御魔法と加護の魔法を使っていることを思い出して解除した頃には、意識を失っていた。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
さよなら私のエーデルワイス〜侍女と騎士の初恋〜
佐原香奈
恋愛
小さな村で幼馴染として育ったエマとジャン。小さい頃からジャンは騎士を目指し、エマはそれを応援していた。
ジャンは成人する年、王都で開かれる各地の騎士団採用試験として行われるトーナメント戦に出場するため、村を出た。
一番の夢であった王立騎士団入団は叶えられなかったものの、辺境伯家の騎士団に入団することになったジャンは、胸を張ってエマを迎えに行くために日々鍛錬に励んでいた。
二年後、成人したエマは、ジャンが夢を叶える時に側にいたいと、ジャンの夢の舞台である王立騎士団で侍女として働くことになる。しかし、そこで待ち受けていたのは、美しい女性と頻繁にデートするジャンの姿だった。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる