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liberty
お土産の確保
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暖かいポトフは何度食べても美味しいのは事実だが、お腹の限界というものはある。
そろそろ美味しい料理を美味しく食べられる量を超えて来ている。
「クロエ様、葡萄ジュースの味はどうですか?」
甘くて濃厚で香りも豊かで、一杯目はすぐに無くなってしまったのだが、すぐ様店主により注がれた2杯目はボディブローのように身体に重くダメージを与える。
魔力回復を考えれば、効率の良い飲み物である。
しかし、満腹中枢を刺激し過ぎるのが問題だ。
「とても美味しいわ。数本持って帰りたいのだけど、用意出来るかしら?ワインも持ち帰るわ」
「かしこまりました」
一口目を飲んだ時、このジュースを飲んでキリアンが溢れるように笑う姿が浮かんだ。
ウラリーとダンはお酒も飲める年齢。
クロエも学園を卒業すればお酒が飲めるようになるが、もう少しの辛抱だ。
「そんなに持って帰っていただけるの?」
クスリとサリーが笑う。
息が漏れるように控えめに笑う彼女が私は好きだった。
だけど、友人だと思っていたのは私だけだったみたい。
「えぇ。美味しいものは一緒に共感してもらいたいものですもの」
「もう、惚気ですか?そういえば、記事も色々と出ていますけど、フリードリヒ殿下とはいつ頃ご結婚されるのですか?私、クロエ様の結婚式が楽しみで」
そりゃあ楽しみだろう。
フリードが伯爵家に下れば、一緒にいられるのだから。
「サリー、貴女もみんなに祝われながら結婚式をしたいと思わないの?」
ポトフのお肉を頬張りながらぽわりとし始めたサリーに、もう少し詰め寄ることにする。
私を利用するのはやめて、何かもっと良い案がないかと相談してくれれば、私だって彼女を責める事はしないのに。
「クロエ様、もしかして私の心配をしてくださっているのですか?そ、そうですよね。プロムのドレスも殿下からいただいているんですもの。でも…その…殿下のおかげで私も小さな教会でドレス位は着られそうなんです。ドレスのお礼を買いに今日は参りましたの。卒業したら彼と一緒に住むことになっていて。是非プロムでは殿下も一緒にご挨拶させてくださいね」
殿下も一緒にご挨拶?正気なの?
サリーとフリードがプロムに一緒に参加する時点で、私がプロポーズを受けるわけがないし、世間の目も厳しいものになると思うけど、プロムの前にプロポーズだけして了承をもらおうってことなの?その後シレッとプロムでエスコートされようとしているというの?あまりの身勝手さに頭が痛い。
「サリー、私フリードとは結婚しないわ」
「え!?どどどどどうしてですか!」
サリーは慌てふためいているし、なんなら護衛も驚いた顔をしている。
でも、今の会話で結婚するわけがないのがどうして分からないのだろう。
「他の女と一緒になる為の結婚に同意出来るわけないと思いません?」
「ど、どういうことです!?」
「殿下には私以外にプロムに誘われている方がいらっしゃるようですし、私も態々殿下を婿にする理由はありませんし…それに…」
「そ、それに、なんなんですか!」
「サリー、どうしてそんなに怒っていらっしゃるの?」
立ち上がって大きな声を出すサリーを見たのはこれが初めてだった。
いつも柔らかく微笑んでいる彼女が、こんなにも声を荒立てるのを見れば、クラスメイトは驚愕する事だろう。
「失礼しました。コホンッでも殿下とよく話し合われた方が良いかと思います。よく考えて下さい。フリードリヒ殿下がクロエ様以外に懸想するなんてあると思いますか?」
態とらしく咳払いをして水を飲むと、サリーは再び席に座った。
ガタリとも音も立てず立ち上がったのは淑女教育の賜物なのかもしれない。
「フリードが私以外を好きになるなんていくらでも考えられるし、私を好きだと言う事が信じられないのだけど?」
「クロエ様…結婚を前にしてあまりにもフリードリヒ殿下がお可哀想です…」
何故私がその懸想の相手に非難されているのか、全く腑に落ちない。
「ねえサリー、貴女はプロムにエスコートしない婚約者と結婚出来るの?」
「出来るわけないじゃないですか!でもきっと誤解です。領地からここまで転移して来られたなら、まだ帰宅予定はありませんよね?小さいところですが、ミルハナンの葡萄畑が一望できる屋敷がありますの。ゆっくり話を聞かせて下さい」
まだ魔力が回復できていないことは見抜かれていたか。
どう丸め込むつもりかわからないけど、絶対言わせてみせる。
私が間違いだったと!
そろそろ美味しい料理を美味しく食べられる量を超えて来ている。
「クロエ様、葡萄ジュースの味はどうですか?」
甘くて濃厚で香りも豊かで、一杯目はすぐに無くなってしまったのだが、すぐ様店主により注がれた2杯目はボディブローのように身体に重くダメージを与える。
魔力回復を考えれば、効率の良い飲み物である。
しかし、満腹中枢を刺激し過ぎるのが問題だ。
「とても美味しいわ。数本持って帰りたいのだけど、用意出来るかしら?ワインも持ち帰るわ」
「かしこまりました」
一口目を飲んだ時、このジュースを飲んでキリアンが溢れるように笑う姿が浮かんだ。
ウラリーとダンはお酒も飲める年齢。
クロエも学園を卒業すればお酒が飲めるようになるが、もう少しの辛抱だ。
「そんなに持って帰っていただけるの?」
クスリとサリーが笑う。
息が漏れるように控えめに笑う彼女が私は好きだった。
だけど、友人だと思っていたのは私だけだったみたい。
「えぇ。美味しいものは一緒に共感してもらいたいものですもの」
「もう、惚気ですか?そういえば、記事も色々と出ていますけど、フリードリヒ殿下とはいつ頃ご結婚されるのですか?私、クロエ様の結婚式が楽しみで」
そりゃあ楽しみだろう。
フリードが伯爵家に下れば、一緒にいられるのだから。
「サリー、貴女もみんなに祝われながら結婚式をしたいと思わないの?」
ポトフのお肉を頬張りながらぽわりとし始めたサリーに、もう少し詰め寄ることにする。
私を利用するのはやめて、何かもっと良い案がないかと相談してくれれば、私だって彼女を責める事はしないのに。
「クロエ様、もしかして私の心配をしてくださっているのですか?そ、そうですよね。プロムのドレスも殿下からいただいているんですもの。でも…その…殿下のおかげで私も小さな教会でドレス位は着られそうなんです。ドレスのお礼を買いに今日は参りましたの。卒業したら彼と一緒に住むことになっていて。是非プロムでは殿下も一緒にご挨拶させてくださいね」
殿下も一緒にご挨拶?正気なの?
サリーとフリードがプロムに一緒に参加する時点で、私がプロポーズを受けるわけがないし、世間の目も厳しいものになると思うけど、プロムの前にプロポーズだけして了承をもらおうってことなの?その後シレッとプロムでエスコートされようとしているというの?あまりの身勝手さに頭が痛い。
「サリー、私フリードとは結婚しないわ」
「え!?どどどどどうしてですか!」
サリーは慌てふためいているし、なんなら護衛も驚いた顔をしている。
でも、今の会話で結婚するわけがないのがどうして分からないのだろう。
「他の女と一緒になる為の結婚に同意出来るわけないと思いません?」
「ど、どういうことです!?」
「殿下には私以外にプロムに誘われている方がいらっしゃるようですし、私も態々殿下を婿にする理由はありませんし…それに…」
「そ、それに、なんなんですか!」
「サリー、どうしてそんなに怒っていらっしゃるの?」
立ち上がって大きな声を出すサリーを見たのはこれが初めてだった。
いつも柔らかく微笑んでいる彼女が、こんなにも声を荒立てるのを見れば、クラスメイトは驚愕する事だろう。
「失礼しました。コホンッでも殿下とよく話し合われた方が良いかと思います。よく考えて下さい。フリードリヒ殿下がクロエ様以外に懸想するなんてあると思いますか?」
態とらしく咳払いをして水を飲むと、サリーは再び席に座った。
ガタリとも音も立てず立ち上がったのは淑女教育の賜物なのかもしれない。
「フリードが私以外を好きになるなんていくらでも考えられるし、私を好きだと言う事が信じられないのだけど?」
「クロエ様…結婚を前にしてあまりにもフリードリヒ殿下がお可哀想です…」
何故私がその懸想の相手に非難されているのか、全く腑に落ちない。
「ねえサリー、貴女はプロムにエスコートしない婚約者と結婚出来るの?」
「出来るわけないじゃないですか!でもきっと誤解です。領地からここまで転移して来られたなら、まだ帰宅予定はありませんよね?小さいところですが、ミルハナンの葡萄畑が一望できる屋敷がありますの。ゆっくり話を聞かせて下さい」
まだ魔力が回復できていないことは見抜かれていたか。
どう丸め込むつもりかわからないけど、絶対言わせてみせる。
私が間違いだったと!
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