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liberty
アンジャッシュ
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彼女の連れていた護衛の1人が部屋の内部に立ち、残りの2人はドアの外で仕事を全うするようだった。
「クロエ様、よかったら名産の葡萄ジュースも飲んでいかれませんか?」
「そういえば、ワインだけじゃなくてジュースも力を入れ始めたのでしたね」
ワイン用の葡萄は甘味を抑えた品種で皮も厚い。
ジュースにするには適さない為、食用の葡萄をジュースにする事が多い。
「そうなのです!既にいくつかは品質も高いと認められてきています。2年前の嵐の日、我が領は1夜で多くのものを失いました。ここ数年は苦労も多かったのですが、今年は今までで一番の出来なんです」
「あの嵐は王都の被害も大きかったものね」
学園にいた私も覚えている。
遠くで雷が鳴り始めたと思っていたら、急に窓の外が暗くなり、大きな雷がすぐ近くで聞こえるようになったのと同時に、校庭の木は大きく揺れ、何度も窓の割れる音がしたあと、校内に派遣されている魔術師により結界が張られたが、暫く悲鳴が止むことはなかった。
その嵐は王都を駆け抜けた後、隣接するコーンウォリス男爵領へと進んでいった。
元々降水量の少ない地だったミルハナンは日照りや大雨の被害を毎年のように受けている苦労していた時期で、そこに大きな嵐が駆け抜けるように領土を縦断したことで、何とか凌いでいたところに一夜で多大な損害を受けた。
コーンウォリス男爵は私財から領地に還元して建て直しを図ったはずだ。
ワインを主力産業としていたので、まだその影響は残っているだろう。
「はい。でも今年は天候も良く、自信を持って勧められる味です。ハミル、私は葡萄ジュースとポトフをいただくわ。ジュースはボトルでオーダーしてちょうだい」
サリーは護衛に声をかけると、そのままメニューを渡した。
一階で食べていた食事はそのまま置いて来たので、今テーブルにはミントの浮かんだ水差しと、2人分のグラスが乗っているだけ。
いつ話を切り出すか、そればかりが頭に浮かんでいた。
「そういえば、クロエ様はプロムのドレスは何色にされたんですか?」
そっちからプロムの話をしてくるとは肝が据わっている。
「ドレスは当日まで秘密にしているの」
ドレスは頼んでいないし、プロムに出る予定も無い。
「フリードリヒ殿下から贈られたのなら、きっとクロエ様にもとても似合うドレスを贈られているのでしょうね」
何か思い出すようにうっとりしているサリーはミスに気付いていない。
'クロエ様にも'サリーと同じように素敵なドレスを贈ったのだろうとそう言ったのだ。
「あぁそういえば、サリーも殿下からドレスを贈られたのでしたね」
カーーーーンと頭の中でゴングが鳴った。
嫌味には嫌味で返す。食われる前に食う。それが私たち貴族の常識だ!
私にはドレスの一つも届いていないんだよ!!しかしそんな事を言えるわけがないだろう!
「ヤダ!婚約者なら、そう言った話も聞かされていて当然ですよね。お恥ずかしい話ですが、すごく素敵なドレスをいただきましたの!私には勿体ないくらい高価なドレスでした」
「そう…良かったわね。プロムのエスコートの相手もそんな素敵なドレスを着たらそれはそれは褒めてくださるでしょうね」
フリードとプロムに出るのによくも私にプロムの話を振ったなと暗に秘めたつもりだったが、サリーは頬を染めてクネクネとしている。
戦いのゴングが鳴ったというのに、余裕な顔が悔しい。
「そうなのです。早く見てもらいたいのと恥ずかしいのとでドレスを見てからドキドキしてしまって。クロエ様も一生に一度のプロムですもの、ドキドキして眠れないのではないですか?」
プロムのことなんて忘れて昨日は風呂も入らずベッドで寝ていた。
「私は毎日熟睡してます」
「まぁ!流石クロエ様!学園みんなの弟とも言われたフリードリヒ殿下を射止めただけありますわ!見習わなくては」
本当、そのクロエ様を出し抜いてフリードとイチャコラ過ごそうと計画したサリー様はすごいよ。
こうして堂々と利用しようとしている友人に惚気られるんだから。
「お待たせいたしました」
キーッと歯軋りし始める直前、タイミングを見計らったかのように料理が運び込まれた。
先程食べかけだった料理は、作り直されたようで、クロエの分も新たに運び込まれる。
魔力を回復しないと夕方までに帰れないし、また胃袋の限界への挑戦が始まる予感に、戦意は喪失し始めていた。
「クロエ様、よかったら名産の葡萄ジュースも飲んでいかれませんか?」
「そういえば、ワインだけじゃなくてジュースも力を入れ始めたのでしたね」
ワイン用の葡萄は甘味を抑えた品種で皮も厚い。
ジュースにするには適さない為、食用の葡萄をジュースにする事が多い。
「そうなのです!既にいくつかは品質も高いと認められてきています。2年前の嵐の日、我が領は1夜で多くのものを失いました。ここ数年は苦労も多かったのですが、今年は今までで一番の出来なんです」
「あの嵐は王都の被害も大きかったものね」
学園にいた私も覚えている。
遠くで雷が鳴り始めたと思っていたら、急に窓の外が暗くなり、大きな雷がすぐ近くで聞こえるようになったのと同時に、校庭の木は大きく揺れ、何度も窓の割れる音がしたあと、校内に派遣されている魔術師により結界が張られたが、暫く悲鳴が止むことはなかった。
その嵐は王都を駆け抜けた後、隣接するコーンウォリス男爵領へと進んでいった。
元々降水量の少ない地だったミルハナンは日照りや大雨の被害を毎年のように受けている苦労していた時期で、そこに大きな嵐が駆け抜けるように領土を縦断したことで、何とか凌いでいたところに一夜で多大な損害を受けた。
コーンウォリス男爵は私財から領地に還元して建て直しを図ったはずだ。
ワインを主力産業としていたので、まだその影響は残っているだろう。
「はい。でも今年は天候も良く、自信を持って勧められる味です。ハミル、私は葡萄ジュースとポトフをいただくわ。ジュースはボトルでオーダーしてちょうだい」
サリーは護衛に声をかけると、そのままメニューを渡した。
一階で食べていた食事はそのまま置いて来たので、今テーブルにはミントの浮かんだ水差しと、2人分のグラスが乗っているだけ。
いつ話を切り出すか、そればかりが頭に浮かんでいた。
「そういえば、クロエ様はプロムのドレスは何色にされたんですか?」
そっちからプロムの話をしてくるとは肝が据わっている。
「ドレスは当日まで秘密にしているの」
ドレスは頼んでいないし、プロムに出る予定も無い。
「フリードリヒ殿下から贈られたのなら、きっとクロエ様にもとても似合うドレスを贈られているのでしょうね」
何か思い出すようにうっとりしているサリーはミスに気付いていない。
'クロエ様にも'サリーと同じように素敵なドレスを贈ったのだろうとそう言ったのだ。
「あぁそういえば、サリーも殿下からドレスを贈られたのでしたね」
カーーーーンと頭の中でゴングが鳴った。
嫌味には嫌味で返す。食われる前に食う。それが私たち貴族の常識だ!
私にはドレスの一つも届いていないんだよ!!しかしそんな事を言えるわけがないだろう!
「ヤダ!婚約者なら、そう言った話も聞かされていて当然ですよね。お恥ずかしい話ですが、すごく素敵なドレスをいただきましたの!私には勿体ないくらい高価なドレスでした」
「そう…良かったわね。プロムのエスコートの相手もそんな素敵なドレスを着たらそれはそれは褒めてくださるでしょうね」
フリードとプロムに出るのによくも私にプロムの話を振ったなと暗に秘めたつもりだったが、サリーは頬を染めてクネクネとしている。
戦いのゴングが鳴ったというのに、余裕な顔が悔しい。
「そうなのです。早く見てもらいたいのと恥ずかしいのとでドレスを見てからドキドキしてしまって。クロエ様も一生に一度のプロムですもの、ドキドキして眠れないのではないですか?」
プロムのことなんて忘れて昨日は風呂も入らずベッドで寝ていた。
「私は毎日熟睡してます」
「まぁ!流石クロエ様!学園みんなの弟とも言われたフリードリヒ殿下を射止めただけありますわ!見習わなくては」
本当、そのクロエ様を出し抜いてフリードとイチャコラ過ごそうと計画したサリー様はすごいよ。
こうして堂々と利用しようとしている友人に惚気られるんだから。
「お待たせいたしました」
キーッと歯軋りし始める直前、タイミングを見計らったかのように料理が運び込まれた。
先程食べかけだった料理は、作り直されたようで、クロエの分も新たに運び込まれる。
魔力を回復しないと夕方までに帰れないし、また胃袋の限界への挑戦が始まる予感に、戦意は喪失し始めていた。
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