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7.女神VS吸血鬼
⑱
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「赤獅子団というのは元々地元住人の協力を得て出来た自警団みたいなものなのですわ」とアンナは言った。
時刻は午後の3時過ぎの穏やかな昼下がり、おやつの時間に当たり前のように混ぜてもらい、莉々子はお茶に息を吹きかけて冷ましながら首をひねる。
「それって青鷹団とどう違うんですか?」
確かあれも自警団のようなものだと言われた気がする。
莉々子のその質問にアンナは深く頷くと「出来た経緯が違いますわ」とゆっくりと告げた。
「確かに二つとも目的は同じ……、この街に住む人間を守り支えることにありますわ。でも青鷲団はユーゴ様がこちらにいらしてから多少の援助を行って出来た団体ですの。それに対して赤獅子団はユーゴ様がいらっしゃる前、つまり、この地に昔からあった自警団ですの」
つまり赤獅子団というのは極めて自然発生的に地元の青年団として形ができ、その後権力者の横暴と戦うために武装などを始めた天然物の自警団だということだ。
ユーゴが養殖的に作った青鷲団とは異なるいわゆる叩き上げ集団である。
また、アンナが言うには更に違う点としては青鷲団が普段は別の仕事をしているが、赤獅子団は赤獅子団としての自警活動自体が仕事であるという点だ。地元の住人から資金援助を受ける代わりに様々な依頼をこなす団体である。その仕事は簡単な買い物の手伝いから権力者との交渉、または抗争まで多岐にわたるらしい。
いわゆるやくざ者やマフィアのようなものと言っても良いかもしれない。
彼らは地元住人からの支持も厚いため、ユーゴも無下には出来ない存在なのだ。
「彼らは自分達が街を守ってきた、という自負があるから、後からいらっしゃったユーゴ様とは折り合いが悪いのですわ。当初は青鷲団と戦争でも起きるかと心配したのですが、さすがにそこまで感情的でも幼稚でもありませんでしたわね。地元住民を守るという同じ志を元にしているという以上、そのような大人げのないことはしませんでしたわ。でも……」
そこでアンナは表情を曇らせると、悲しげに目を伏せた。
「出来れば仲良くしていただきたいですが、それはなかなか難しいようですわね」
「なるほど……」
なんとなくそれぞれの関係性が見えてきた。
つまり赤獅子団という組織は、
(まぁ、ユーゴと対立した際に味方になってくれるかも知れない組織なわけだ)
敵の敵は味方的なあれだ。
とはいえ、その場合には莉々子をユーゴから守ることがこの街の住人の利益に繋がっていないといけないだろう。
あるいは、ユーゴを追い詰めることが彼らの利益であれば、協力関係は築けるはずだ。
(異世界人を国に黙って保護するというのはこの国の規律上良くないことのはずだ)
ユーゴを転落させたい人間にとっては、莉々子の存在は突くべき弱点だ。
莉々子が協力者を得るためにするべきことは、そういう人間にユーゴのその弱みをそっと囁くことか、あるいは純粋に莉々子に同情してくれそうな人間に事情を涙ながらに訴えることだ。
(まぁ、後者の可能性は極めて低いけれど……)
そこでなんとなく莉々子の目はイーハの姿を捕らえてしまった。
彼はすぐに莉々子の視線に気づいて微笑み返してくれる。
「…………っ」
なんとなく気まずい気持ちになって、莉々子は目をそらした。
(別に、イーハには私を助ける理由も能力もないし……)
何か打算があって彼の前で泣いたわけではない、と必死に言い訳をしていること自体がなんとなく後ろめたい。
リアリストでありたいと思う意思とは裏腹に、莉々子の中のロマンチストは白馬に乗った王子様が助けにきてくれるのを望んでいるのかも知れなかった。
時刻は午後の3時過ぎの穏やかな昼下がり、おやつの時間に当たり前のように混ぜてもらい、莉々子はお茶に息を吹きかけて冷ましながら首をひねる。
「それって青鷹団とどう違うんですか?」
確かあれも自警団のようなものだと言われた気がする。
莉々子のその質問にアンナは深く頷くと「出来た経緯が違いますわ」とゆっくりと告げた。
「確かに二つとも目的は同じ……、この街に住む人間を守り支えることにありますわ。でも青鷲団はユーゴ様がこちらにいらしてから多少の援助を行って出来た団体ですの。それに対して赤獅子団はユーゴ様がいらっしゃる前、つまり、この地に昔からあった自警団ですの」
つまり赤獅子団というのは極めて自然発生的に地元の青年団として形ができ、その後権力者の横暴と戦うために武装などを始めた天然物の自警団だということだ。
ユーゴが養殖的に作った青鷲団とは異なるいわゆる叩き上げ集団である。
また、アンナが言うには更に違う点としては青鷲団が普段は別の仕事をしているが、赤獅子団は赤獅子団としての自警活動自体が仕事であるという点だ。地元の住人から資金援助を受ける代わりに様々な依頼をこなす団体である。その仕事は簡単な買い物の手伝いから権力者との交渉、または抗争まで多岐にわたるらしい。
いわゆるやくざ者やマフィアのようなものと言っても良いかもしれない。
彼らは地元住人からの支持も厚いため、ユーゴも無下には出来ない存在なのだ。
「彼らは自分達が街を守ってきた、という自負があるから、後からいらっしゃったユーゴ様とは折り合いが悪いのですわ。当初は青鷲団と戦争でも起きるかと心配したのですが、さすがにそこまで感情的でも幼稚でもありませんでしたわね。地元住民を守るという同じ志を元にしているという以上、そのような大人げのないことはしませんでしたわ。でも……」
そこでアンナは表情を曇らせると、悲しげに目を伏せた。
「出来れば仲良くしていただきたいですが、それはなかなか難しいようですわね」
「なるほど……」
なんとなくそれぞれの関係性が見えてきた。
つまり赤獅子団という組織は、
(まぁ、ユーゴと対立した際に味方になってくれるかも知れない組織なわけだ)
敵の敵は味方的なあれだ。
とはいえ、その場合には莉々子をユーゴから守ることがこの街の住人の利益に繋がっていないといけないだろう。
あるいは、ユーゴを追い詰めることが彼らの利益であれば、協力関係は築けるはずだ。
(異世界人を国に黙って保護するというのはこの国の規律上良くないことのはずだ)
ユーゴを転落させたい人間にとっては、莉々子の存在は突くべき弱点だ。
莉々子が協力者を得るためにするべきことは、そういう人間にユーゴのその弱みをそっと囁くことか、あるいは純粋に莉々子に同情してくれそうな人間に事情を涙ながらに訴えることだ。
(まぁ、後者の可能性は極めて低いけれど……)
そこでなんとなく莉々子の目はイーハの姿を捕らえてしまった。
彼はすぐに莉々子の視線に気づいて微笑み返してくれる。
「…………っ」
なんとなく気まずい気持ちになって、莉々子は目をそらした。
(別に、イーハには私を助ける理由も能力もないし……)
何か打算があって彼の前で泣いたわけではない、と必死に言い訳をしていること自体がなんとなく後ろめたい。
リアリストでありたいと思う意思とは裏腹に、莉々子の中のロマンチストは白馬に乗った王子様が助けにきてくれるのを望んでいるのかも知れなかった。
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