地の底から這い上がる

海月 結城

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四人の勇者のダンジョン攻略“前”

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勇者編これを入れて後五話続きます。
ーーーーー
 勇者達四人は初めてのダンジョンに少し興奮していた。

「ここが、ダンジョンか」
「楽しくなって来たな!」
「大ちゃん、あんまりはしゃがないでよ」
「分かってるよ」
「ほら、師匠達が待ってるよー」
「雪菜の言う通りだ、早く来い」

 勇者四人はダンジョンに入ってすぐの広間に集められた。

「さて、勇者諸君。今からダンジョンに挑むが、ダンジョンの注意点は知っているか?」
「え、知らないっす」
「雪菜分かる?」
「分かんない」
「注意点って何ですか?」
「やはり、知らなかったか。少し長くなるが、これを知らなかったら死ぬからな、ちゃんと聞いてくれよ」

 俺の死ぬかもしれないと言う言葉にあまり怖さは感じていない様子だった。

「それじゃ、聞けよ。まずダンジョンとは何かからだ」
「はぁ? 何で今そんな事を説明されなきゃならないんですか? もっと他にあるでしょう?」
「大海、文句の前にまず聞け。でだ、ダンジョンは地下や森、池や海といった、魔力が溜まりやすい場所に出来るんだ。そして、それらには一つ一つ個性がある。地下は迷路のようになっていて、森は霧が濃く、三メートル先はもう見えない。池と海は似ていて、見つけにくいってのと、地面が滑り過ぎてまともに立っていられないって感じで、色々と個性がある。で、今回行くのが地下のダンジョンだ」
「ってことは、迷路みたいになってるんですね」
「南、正解だ。で、今回行くダンジョンは全十階層で出来ており、出てくる魔物も限られてくる。スライムとゴブリンとバット系の魔物だ。どれも、初心者が狩る魔物だ。だが、油断するなよ? 死ぬぞ?」

 俺がそれなりの迫力を持って「死ぬ」と言うが、二人の勇者には軽い感じで受け流されてしまう。

「だから、大丈夫だって、俺たち勇者なんですよ?」
「アーリーさん、僕たちを信じてください!」
「ちょっと、本気でそうなこと言ってんの?」

 そこに口を出したのはミラー術長だ。
「何すか? ミラーさんまで俺たちが死ぬと思ってるんですか?」
「えぇ、思ってるわよ。だって、勇者の前にあなたは一人の人間よ。人間なんて簡単な出来事で死ぬのよ」

 大海は、ミラー術長の言葉に昔のことを思い出していた。

「そう、ですね。すみません、調子乗ってました」
「そ、分かってくれたらいいわ。何たって、このダンジョンには私たちを殺そうとしてくる魔物がわんさかいるんだもの」
「そうなんすね、それが、ダンジョン。強丞、俺……」
「分かってるよ」

 それを南だけが、いい笑顔で見ていた。

「あー、私が友達になる前の話か、知りたいなー」
「ダメだよ、これだけは雪菜には教えられないの」
「ぶー」

 雪菜は頬を膨らませて、ジト目で南を見ていた。

「まぁ、しょうがないよね、誰にだって知られたくないことあるよね」
「よし、お前らそろそろ次の説明をしたいんだが、いいか?」
「はい!」

 大海は何かが吹っ切れたのか、いい返事をしていた。

「それぞれの対処法はそれが出てきたときに簡単に説明する、それをどう生かすかはお前たち次第だぞ。で、魔物を倒すとダンジョンのみ魔物の肉体は残らない、魔石だけを落とすからな」
「それは、魔物に実態が無いってことですか?」

 すかさず、南が質問してきた。

「そうだな、ダンジョンの魔物は倒されると魔力の粒子になってダンジョンの次の糧に変わる。その時に、生まれてそのダンジョンで生きた時間だけ溜まった魔力が結晶化したものが魔石となり魔物が倒された時に落とすと言われている。で、あるから、ダンジョンの魔物は実態は無いだろうな。だが、死ぬまでは本当に生きているから、魔物から血が出るからな」
「それ、今回のダンジョンとあまり関係ないわよね?」
「あ、すまん。ちょいと研究家の血が騒いでしまったよ。ハハハ」
「アーリーさんって研究家なんですね」
「その通りだ雪菜。まぁ、今は関係ないがな。で、今日は三階層まで降りるから、気合い入れていけよ」
「「「「はい!」」」」
「あー、大声は止めろよ。魔物は音に敏感だからな」
「「「「は、はい」」」」
「指示は最小限で行く。お前たち、死ぬなよ?」

 そして、勇者たちのダンジョン攻略が始まった。

「一階層目に出るのはスライムだけだ。スライムは物理攻撃は強い耐性を持っている、スライムの中心にある魔石を砕けば簡単に死ぬ。スライムからは魔石は落ちないいいな?」

 俺の指示に勇者たちは頷いた。

「じゃ、進むぞ」

 俺が一番前、その後ろに勇者四人が、剣の強丞、槍の大海、弓の南、杖の雪菜の順、最後尾にミラー術長の順番でゆっくりと進んでいた。

「お、四匹か、丁度いいな」
「アーリーさん、どうしました?」
「スライムが四匹こっちに来ている。一人一匹で戦ってくれ」
「わ、分かりました。みんなに伝えてきますね」

 強丞が後ろを振り返り、ちょっと来てと、合図を送った。

「みんな聞いてくれ。今四匹のスライムがこっちに来ているらしい。それを、一人一匹倒して欲しいとアーリーさんからの課題だ」
「分かって。スライムか、やってやるさ!」
「えぇ、大丈夫。分かったわ」
「うん! 頑張るよ!!」

 四人の覚悟が決まった時、スライムが姿を現した。

「よし、ミラー術長」
「えぇ、分かってるわ。「シールド」」

 ミラー術長は俺の言いたいことが直ぐに分かったようで、スライム一体を三体から引き離した。

「まずは、強丞。お前からだ」
「分かりました」

 強丞は、腰から剣を抜き出し、それを上段に構えた。

「行きます」

 強丞がスライムに向かって一歩踏み出した時、スライムも強丞に向かって動き出した。

「っふ!!」

 強丞は、スライムに向かって剣を振り下ろした。だが、スライムはそれを少しの移動だけで避けた。それに、強丞は驚き、振り下ろしから剣を戻すのが少し遅れた。その隙をスライムは見逃さず、強丞にタックルをお見舞いした。

「ッカハ!」

スライムは意外に体積があるようで、強丞は、お腹を抑えて膝をついた。

「ちっくしょう!」

 スライムは再びタックルを強丞にしようとしたが、強丞は薙ぎ払いを行い、偶々スライムの魔石を斬り裂き、スライムは二つに割れた魔石を残して消えていった。

「はぁ、はぁ、スライムにこんなに手こずるなんて、俺は……」
「強丞、反省は後でまとめてやる、今は一旦下がれ」
「……はい」

 強丞は、あまり納得出来ずに後ろに引いていった。

「よし、次は大海だ」
「よし、いっちょやりますか!」

 大海は、背中にある槍を抜き、構えた。
 ミラー術長は、器用に「シールド」に穴を開け一匹のスライムだけを外に出した。
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