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第1章 テールマルク編

第18話 狙われた命

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 俺は、1人で3階層を攻略していた。3階層にはコボルト、スライムに加えポイズンバットが生まれる。
 ポイズンバット、身体が黒く、紫色の点々が付いているのが特徴の1つだ。そして、影があるところや、兎に角暗いところに居るので、奇襲には気を付けないといけない。

「さて、久し振りの1人攻略だからな。出来れば5階層までは到達したいんだよな。そろそろ、お金も欲しくなって来たからな」

 1階層から3階層は余りお金になるようなドロップ品は無い。そして、5階層からはゴブリンが発生するので、お金になる物がドロップするのだ。それは、ドロップした時に話そう。
 それからも、何度も魔物との戦闘をこなしていると、目の前に赤黒い魔法陣が現れた。

「これは、転移魔法陣?」

 魔法陣が現れてから数秒後。1人の男性が現れた。

「お初にお目にかかります。わたくしーー様の配下のーーと申します」

 そいつは、光を吸い込む闇の髪色に赤黒い服を纏っていた。

「なぁ、先ずは隠蔽を解いてくれないか? お前の名前すら聞き取れないんだが?」
「おっと、これは失礼致しました。私、ジェルマイルと申します」
「よろしくな。俺はレイクだ」
「えぇ、存じていますよ。この世界のイレギュラーですから」
「俺は、普通だぞ」
「ふっ、何が普通ですか? 貴方のステータスを一度確認してみたんですよ」 
「俺の、ステータス? なるほどな」
「そしたら、貴方のスキルは何一つ見れなかったんです。これは、異常事態ですよ」

 いきなり、ジェルマイルの雰囲気が変わった。

「なので、貴方をここで始末します」

 ジェルマイルの地面からこっちに向かって、地面が針山のようになってこっちに向かって来た。
 それを左に飛んで避ける。

「ふっ!」

 ジェルマイルはもう一度足元を叩くと、こちらに方向転換して来た。

「面倒だな」

 俺はその針山に向かって魔力を放った。

「何!? 止められた?!」
「それでも、お前は神の配下か?」
「な、なぜ動かない!」
「知らないのか? そういう魔法は奪える・・・んだぞ」
「そんな事知らない!」
「ま、お前には出来ないけどな」
「うるさい!」
「おいおい、さっきまでの喋り方はどうした?」

 その言葉に、ジェルマイルは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「次は俺の番だ」

 俺は、火魔法と風魔法混合魔法を放った。それは、竜巻の形を成して、ジェルマイルを包み込んだ。

「ふっ、ふははははははは!!! この程度か。お前の実力はこの程度か?!」
「んな訳ないだろ。おら」
「え? うぎゃゃゃゃゃゃ!!」
「スキル:収束」

 その竜巻は、収束のスキルで範囲がどんどん小さくなり、ジェルマイルは息をするのも辛くなっていた。
 そして、その魔法を解除した。

「はぁ、はぁ、はぁ」
「殺しはしない。もう俺に関わるなと、お前の上司に言ってこい」
「はぁ、そんな事、はぁ、出来るわけないだろ!!!」
「はぁ、じゃあどうする?」
「帰ったところで俺は殺されるだけだ」
「なぁ、お前の上司は俗に言う神か?」
「……そうだ」
「はぁ、なるほどな」

 俺は少し考えた。

「だからと言って、俺を殺そうとしてきた奴に容赦なんてしないからな」
「……殺せ」
「ふぅ。スキル:洗脳」

 俺は、何時ぞやに使ったスキルを使った。

「これで、俺を殺したことにして。えっと、よし、これでいいかな。後は、お前を中心に300m離れたら、帰って、報告して来い」

 俺が、ジェルマイルの300m以上離れた後、ジェルマイルの意識は回復した。

「ふぅ、奴は殺した・・・天界に帰るか」

 俺は、天界に帰り事の顛末てんまつを上司に報告した。

「それ、本当に言っているのか?」
「え? も、もちろんです」
「お前、ふむ。なるほどな」
「ユウト様、ど、どうしました?」

 俺の報告は俺の記憶・・・の通り語っただけだ。それが、何か間違っていたのだろうか?

「奴め。めんどくさい事をしてくれおって。ほれ」

 ユウト様は俺に向かって、掌を向け、一振りした。その時、俺は思い出した。

「これは一体……?」
「思い出したか? お前は、記憶を改竄されて虚偽の報告をしたんだよ」
「……そんな、嘘だ……」
「これは、手強い相手になりそうだな」

 この世界では、洗脳スキルはたしかにあるが、そこまで強いものは少ない。記憶を改竄され思い出した時に、改竄された方を嘘だと普通は思うが、レイクのそれは、改竄されは方を本当の記憶だと勘違いさせるほどに、強力なのだ。

「お前は、一度部屋で休んでろ」
「……俺が負けた? いや、そんな筈は……」
「おい、聞いているのか?」
「俺は……一体どうすれば……」
「おい!!! 聞いているのか!!!!」

 ユウト様の怒号に俺は、身体をビクッと震わせた。

「ッッッ!! も、申し訳ございません!!」
「よい、もう下がれ」
「……はっ」

 ユウトは、こめかみを抑えていた。

「俺は、部屋に行ってる。何かあったら、いつも通り頼んだ」

 近くにいた部下に頼んで俺は部屋に戻った。

「はぁ、ックソ! あいつは一体何者なんだ? せっかく神になったのにあんな奴の邪魔を受けたら堪ったもんじゃない! どうにかして殺さないと……」

 奴を殺す為の策を練っていると、部屋のドアがノックされた。

「誰だ?」
「私よ」
「なんだ。サキか」
「なんだとは、失礼な。心配して来てあげたのに」
「そっか。ありがとうな」
「いつも、そんなに素直だったら良かったのに。それで、何かあった?」
「俺が神になって、下界の方はまぁ、良くなったと思ってる。だが、それを壊す奴が出て来たんだよ」
「どういう意味?」
「これを見てくれ」
「え、何、これ。あり得ないわ」
「そうだろう。だから、俺はこいつを抹殺する為に刺客を放ったんだが、ことごとく破れて来たんだよ」
「なるほどね。だったら、神言を使ったらいいじゃない。そうすれば、あいつは世界の敵になるわ」
「いや、それは最後の手段だ。なるべく、誰にも知られる事なく殺す。それが、最善手だ」
「ま、何かあったら言って。相談に乗るわ」
「あぁ、助かる」

 そして、サキは俺の部屋を出て行った。

「はぁ、どうやって殺すのか。彼が一番考えないといけないな」

 そして、ユウトはまた1人で考え出した。
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