上 下
13 / 24
第1章 テールマルク編

第12話 決闘ー2

しおりを挟む
 『ペインスロード』の全団員達は俺を囲むように位置についた。そして、その中の1人が口を開いた。

「ギルドマスター。こんなやつ1人をこの人数でやっちゃって良いんすか?」
「あぁ、大丈夫だ。俺が許可しよう」
「この都市の領主の息子がそう言ったんだ。なら、好きにやらせて貰らもうか」

 その『ペインスロード』のやり方を観客達は反抗出来ずに見守る事しか出来なかった。

「なら、俺だって容赦しなくて良いよな?」
「もちろんだ」
「だったら。スキル:制限リミッター解除」

 そして、俺は瞑想中に自分に掛けておいた制御リミッターを解除した。その瞬間、自分を中心に風が発生した。いや、それは、魔力の波だ。
 それのせいで、5/1の『ペインスロード』の団員が吹き飛ばされてしまった。

「お前は一体何者だ!?!?!?」

 『ペインスロード』のギルドマスターは椅子から立ち上がり大声で叫んでいた。

「何って、この街の救世主に決まってるだろ」
「そんな訳ないだろ!! なんだその魔力は!! 人間な訳ないだろ!!」
「いやいや、人間だよ。だって、獣人は人間と同じ言葉は喋れないんだから。人間以外はあり得ないだろ」
「ま、まぁ、そうだが。お前は化け物かって聞いてるんだよ!?!?」

 そんな、酷い。

「化け物じゃないさ。只の人間だよ」
「そんな魔力は人間じゃない!!」
「ったく、何回繰り返すんだよ。俺は人間だ!!」
「周りを見ろ!!」

 周りを見渡すと、決闘場の舞台に立ってる人達は俺の魔力に怯えていた。が、観客達はキラキラした目で俺のことを見ていた。

「おー、なんか凄い反応だな。ちょっと照れるな」
「ちっがーう!!! 照れろって言ってるんじゃない!! 怯えてる人を見て、自分が化け物である事を認識しろって事だ!!」
「分かった。俺は化け物だ。ま、だからって手加減なんてしないぞ」
「え、いや、ちょっと待っt」

 俺は、とある物を呼び出した。

「来てくれ、ライナ」

 そして、空中に魔力が集まり魔法陣が生成されそこから1匹の羽を生やした小さい精霊がやって来た。

「あら、また転生したの?」
「あぁ、転生は今回で最後だけどな」
「そうですか。で、この状況は??」
「決闘中だ」

 俺が精霊を呼び出すと、『ペインスロード』の連中は顔を真っ青にしていた。

「こ、ここ、古代、魔法」

 精霊を使った魔法は古代魔法と言われ、失われた魔法と呼ばれているのだ。ま、いつかの前世で【精霊使い】になった時に契約した精霊なのだがな。転生しても何故か契約しっぱなしになってるんだよ。不思議でしょうがない。

「って事で、軽ーくやって良いぞ。ライナ」
「わっかりましたー!! ほーー、やっ!」

 ライナが魔力を集めて魔法を放った。それは、雷魔法だった。バチバチと雷が集まり頭の上で集めた。それを天に向かって放った。すると、会場の上に大きな雷雲が集まった。そして、大きな音を立てて地面に雷が落ちた。

「後はお前だけだな。ギルドマスター」
「ば、馬鹿な。俺のギルドが一瞬で消えただと」
「さ、早く言え」
「っく、しょうがない。まさか、これを使う事になるとわな」
「? 何をする気だ?」

 そう言って、『ペインスロード』のギルドマスターは禍々しい魔石を取り出した。

「さぁ、出て来い。ふっふっふっ、何故俺があのダンジョンを封鎖していたのか分かるか?」
「いや、分からんが」
「それはな、こいつを取り出すためだよ。来い!!!」

 すると、その魔石が砕け中から出て来たのは、子供の女の子だった。

「あれは、テールマルクの魔神」
「ほう、よく分かったな。そうだ。このダンジョンのボスだ。まだ力が弱いが、時間は掛かったが、とある方法で力をつけたんだ。そのお陰で、フェアルゲンが同じぐらいの強さを身に付けたんだよ。さあ、やっちまえ、リンリ!!」
「っう! あ、ああああああああああ!!!!」

 リンリは抵抗をしているのか、周りに黒い物がバチバチとしていた。だが、その抵抗も意味を成さなかった。

「あ、ああ、あああああああ!!!」
「やばい。お前ら、逃げろ!!!!! 早く、にげろおおおおおおおお!!!」

 観客達は腰が抜けているのか、誰も逃げる事が出来なかった。

「クッソ!! スキル:洗脳!! 退避!!!!」

 すると、観客も『ペインスロード』の団員も全員が決闘場から逃げていった。
 そして、リンリのほうを見据えると、真っ黒なビームが飛んできた。

「危な! ったく、やばい物を連れて来やがって。ライナ、お前はあいつを頼む」
「分かりました。殺しておきますね」
「殺すな。半殺しで頼む」
「はーい」

 ライナは、ギルドマスターの所に向かっていった。

「さて、俺はこいつをどうにかしないとな」

 そう言っている間にも、リンリは四方八方にビームを出している。

「スキル:魔法障壁・物理障壁」

 スキルを発動すると決闘場を囲むように障壁が完成した。四方八方に飛んで行ったビームは障壁に弾かれ、外に出る事無かった。

「た、、、す。う、うう、ああああああああ!!!」
「了解した。直ぐに助かるぞ、リンリ」

 こっちに来たビームを掴んで、投げ返した!

「これで、相殺は出来るんだがな、どうにも、反撃が出来ない」

 リンリの攻撃は絶え間なく続いており、攻撃する隙が無いのだ。

「殺すことは簡単だけどな、ダンジョンの外で殺すと再生しないんだよな。無力化しないといけないのか」

 前世でやった事があったが、それはそれは大変な目にあった。もう、あんな事は懲り懲りだ。

「って、マジでどうしようかな。っぶな!」
「はや、く。た、すけ、、、て」
「やばっ! 侵食してる!!」

 リンリの理性が消えかけている。

「まずは、気絶させてからだな」

 俺は、剣を構えた。そして、ビームを消し斬りながら進んでいく。

「こっからリンリのところまで40mってところか」
「あ、ご主人様。こっちは終わりましたよ」

 ライナは、ギルドマスターを雷で気絶させながらこっちに手を振っていた。

「分かった。こっちもすぐに終わらせる。ちょっと待ってろ」
「はーい」
「こっからは本気でいくぞ」

 40mの距離を全力で走りながら近づいていく。すると、後ろからビームが迫って来た。

「まさか、反射したのか!?」

 それは一本のビームだけでは無い。今まで出しては障壁に当たって消えていたビーム全てが反射し出したのだ。

「ライナ! 危ないから逃げるか避けろ!!」
「分かった!!」
「クソ! 全方位からの攻撃は消しきれない!! スキル:時間操作タイムジャック

 俺がスキルを使うと、ビームの動きが遅くなった。そして、俺の動きは早くなった。
 そのお陰で、ビームを避けながら進んでいく。だが、それも10秒だけだ。

「それだけの時間があれば十分だ!!」

 そして、地面を思いっきり踏みつけ粉々にした。それを蹴り上げた。残り8秒。
 それを足場にしてどんどん空中に上がっていく。残り6秒。
 そして、残り3秒。

「お疲れさん」

 そして、脳天から拳を振り下ろした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

処理中です...