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魔王軍襲来⑤
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エルフの森居住区
リルーゼ率いるエルフvs魔王軍兵士
「急いで、我! 足をもっと速く動かすの!」
リルーゼはフォレスと別れて急いで前線まで戻ってきていた。
エルフの森自体そこまで広い場所ではないので、三分ほど全力で走ったら前線に戻ることが出来た。
「!! リルーゼ様!」
「長よ!」
「状況を報告いたします!」
現在、エルフの民たちの状況は酷いものだった。
何百年と戦ってこなかったエルフの民たちがいきなり、弓を持ちナイフを持って敵と戦えるかと問われれば首を横に振るしかない。
そして、今の今まで指揮官が居なかった。
居ないわけではないが、誰も年老いていて上から降りることすら出来ない。
「敵の数は一万と予想。こちらは三百、その内、一割が重症、二割が軽症。敵は居住区前まで敵は攻めてきています」
「そうか、分かった。回復魔法を使えるものは負傷者の手当てに回れ! それ以外は我に付いてこい!」
今全線で戦っている者たち以外に後方で待機してくれていた民を連れて前線に向かった。その間に、戦闘の指示を出す。
「オドント隊とグロッサム隊に別れて、左右からの攻撃をお願い。アヤメとアルメリヤは我に付いてこい」
「「はい!!」」
エルフの居住区前では激しい戦闘が行われていた。
エルフたちはその長い耳の特徴である聴覚でリルーゼたちが応援に来たことを理解していた。
まだ、リルーゼたちが到着したことに気が付いていない魔王軍は入り口を突破するのに必死だった。
「行けーーー!! エルフの森を焼き尽くすのだ!!!」
敵の指揮官がそう叫ぶと、士気を上げた魔王軍との混戦が激化した。
その時、リルーゼは腕を振り上げて思いっきり振り下ろした。
左右に展開していたエルフたちが矢を放った。
エルフたちは綺麗な身のこなしで飛んできた矢を避けるが、魔王軍はいきなり放たれた矢に驚き次々と倒れて行く。
「弓兵だと!?!? 今まで、何処に隠れていた!!」
「アヤメ、アルメリヤ、出番だよ。敵の指揮官を打ち取りな!!」
「「はい!!」」
「第二射用意!! 放て!!!」
第二射が放たれると同時にアヤメとアルメリヤが走り出した。
飛んでくる矢を避けながら敵の首をナイフで切り落とす。そんな離れ技を行いながら指揮官に近づいていく。
「く、来るな!! あ、あの二人を止めろ!!」
「第三射用意!! 放て!!」
「「「う、うわあああああああ」」」
そして、アヤメとアルメリヤは同時に指揮官まで辿り着き、首を刎ねた。
「無念」
そう言って、敵の指揮官は死んでいった。
「想像以上だな。負傷者を集めて後ろに運べ!! 生き残りは捕らえろ」
その時だった。リルーゼが懐かしいと同時に憎悪を沸き上がらせる魔力がエルフの森を覆いだした。
「この魔力……!? まさか、姿が変わって分からなかったが、あいつだったのか!?!?」
遥か昔、リルーゼが産まれたままの体を媒体に使っていた時のこと……。
「こ、こ、が、も、り……も、や、す」
まだ、言葉もまともに喋れない『ヘルヘイム』が攻めてきたことがあった。
あの時は、魔王に忠誠を誓い、命令によっては命を捧げる命令にただ従う精霊だった。
それが、自分の意志でこの森を燃やしに来るなんて……あの時の失敗を今でも覚えているのか。
リルーゼが勇者であるカリーナが戦っている場所に向かう途中、見てはいけないものを見た。
「!?!? ……うそ、森が燃えてる」
そこには、赤黒い炎が燃え広がっている森の光景だった。
近くには、若いエルフたちが水魔法で消火作業に入っているが、水を掛けると一瞬で蒸発して消火作業など無意味だった。
「お前たち!!」
「お、長!!」
「ここで、何している、早く非難しろ!」
「し、しかし、この火を止めなければ、私たちの森が燃えてしまいます!」
「そうですよ、僕たちがこの森を護るんです!!」
若いエルフたちのその言葉に、リルーゼは涙腺が緩んでいた。
「お前たちみたいな若い奴らは、外に出たがっているとばかり思っていたが、ちゃんとこの森を愛していたんだな」
「当たり前ですよ」
「だってここは、唯一無二の僕たちの故郷ですから。無くすわけにはいきません」
「そうか……だが、お前たちは一刻も早く非難しろ。この炎は普通の炎じゃない。地獄の精霊『ヘルヘイム』の炎だ。奴を倒さない限りはこの炎は消すことが出来ない。安心しろ、レイを含む勇者たちが『ヘルヘイム』と対峙している筈だ」
「勇者様が……分かりました」
「長は、何処に行くんですか?」
「我も、あいつを倒すためにひと肌脱ごうかと思ってな、お前たち、気を付けて行くんだぞ、捕らえきれていない魔族が居る可能性があるからな」
そこで消火作業を行っていたエルフたちを後ろに逃がして、リルーゼは『ヘルヘイム』の元に向かった。
リルーゼ率いるエルフvs魔王軍兵士
「急いで、我! 足をもっと速く動かすの!」
リルーゼはフォレスと別れて急いで前線まで戻ってきていた。
エルフの森自体そこまで広い場所ではないので、三分ほど全力で走ったら前線に戻ることが出来た。
「!! リルーゼ様!」
「長よ!」
「状況を報告いたします!」
現在、エルフの民たちの状況は酷いものだった。
何百年と戦ってこなかったエルフの民たちがいきなり、弓を持ちナイフを持って敵と戦えるかと問われれば首を横に振るしかない。
そして、今の今まで指揮官が居なかった。
居ないわけではないが、誰も年老いていて上から降りることすら出来ない。
「敵の数は一万と予想。こちらは三百、その内、一割が重症、二割が軽症。敵は居住区前まで敵は攻めてきています」
「そうか、分かった。回復魔法を使えるものは負傷者の手当てに回れ! それ以外は我に付いてこい!」
今全線で戦っている者たち以外に後方で待機してくれていた民を連れて前線に向かった。その間に、戦闘の指示を出す。
「オドント隊とグロッサム隊に別れて、左右からの攻撃をお願い。アヤメとアルメリヤは我に付いてこい」
「「はい!!」」
エルフの居住区前では激しい戦闘が行われていた。
エルフたちはその長い耳の特徴である聴覚でリルーゼたちが応援に来たことを理解していた。
まだ、リルーゼたちが到着したことに気が付いていない魔王軍は入り口を突破するのに必死だった。
「行けーーー!! エルフの森を焼き尽くすのだ!!!」
敵の指揮官がそう叫ぶと、士気を上げた魔王軍との混戦が激化した。
その時、リルーゼは腕を振り上げて思いっきり振り下ろした。
左右に展開していたエルフたちが矢を放った。
エルフたちは綺麗な身のこなしで飛んできた矢を避けるが、魔王軍はいきなり放たれた矢に驚き次々と倒れて行く。
「弓兵だと!?!? 今まで、何処に隠れていた!!」
「アヤメ、アルメリヤ、出番だよ。敵の指揮官を打ち取りな!!」
「「はい!!」」
「第二射用意!! 放て!!!」
第二射が放たれると同時にアヤメとアルメリヤが走り出した。
飛んでくる矢を避けながら敵の首をナイフで切り落とす。そんな離れ技を行いながら指揮官に近づいていく。
「く、来るな!! あ、あの二人を止めろ!!」
「第三射用意!! 放て!!」
「「「う、うわあああああああ」」」
そして、アヤメとアルメリヤは同時に指揮官まで辿り着き、首を刎ねた。
「無念」
そう言って、敵の指揮官は死んでいった。
「想像以上だな。負傷者を集めて後ろに運べ!! 生き残りは捕らえろ」
その時だった。リルーゼが懐かしいと同時に憎悪を沸き上がらせる魔力がエルフの森を覆いだした。
「この魔力……!? まさか、姿が変わって分からなかったが、あいつだったのか!?!?」
遥か昔、リルーゼが産まれたままの体を媒体に使っていた時のこと……。
「こ、こ、が、も、り……も、や、す」
まだ、言葉もまともに喋れない『ヘルヘイム』が攻めてきたことがあった。
あの時は、魔王に忠誠を誓い、命令によっては命を捧げる命令にただ従う精霊だった。
それが、自分の意志でこの森を燃やしに来るなんて……あの時の失敗を今でも覚えているのか。
リルーゼが勇者であるカリーナが戦っている場所に向かう途中、見てはいけないものを見た。
「!?!? ……うそ、森が燃えてる」
そこには、赤黒い炎が燃え広がっている森の光景だった。
近くには、若いエルフたちが水魔法で消火作業に入っているが、水を掛けると一瞬で蒸発して消火作業など無意味だった。
「お前たち!!」
「お、長!!」
「ここで、何している、早く非難しろ!」
「し、しかし、この火を止めなければ、私たちの森が燃えてしまいます!」
「そうですよ、僕たちがこの森を護るんです!!」
若いエルフたちのその言葉に、リルーゼは涙腺が緩んでいた。
「お前たちみたいな若い奴らは、外に出たがっているとばかり思っていたが、ちゃんとこの森を愛していたんだな」
「当たり前ですよ」
「だってここは、唯一無二の僕たちの故郷ですから。無くすわけにはいきません」
「そうか……だが、お前たちは一刻も早く非難しろ。この炎は普通の炎じゃない。地獄の精霊『ヘルヘイム』の炎だ。奴を倒さない限りはこの炎は消すことが出来ない。安心しろ、レイを含む勇者たちが『ヘルヘイム』と対峙している筈だ」
「勇者様が……分かりました」
「長は、何処に行くんですか?」
「我も、あいつを倒すためにひと肌脱ごうかと思ってな、お前たち、気を付けて行くんだぞ、捕らえきれていない魔族が居る可能性があるからな」
そこで消火作業を行っていたエルフたちを後ろに逃がして、リルーゼは『ヘルヘイム』の元に向かった。
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