上 下
14 / 147

遺跡の探索②

しおりを挟む
 カリーナと遺跡の入り口付近ではぐれてしまった。

「リュクス、灯をお願い。それと、カリーナの足跡を探して」
「分かった」

 扉が閉じて光が届かなくなった遺跡の中は真っ暗で何も見えない状況だ。
 そこでリュクスが火魔法を指先に灯した。
 壁際を伝いながらカリーナの足跡を探すと、入ってきた扉の前で一つだけ見つけた。

「って事は、この先でカリーナが消えたのか」
「だろうね。リュクス、ちょっと離れてて」
「? 分かった」

 リュクスを少し遠ざけて、カリーナの足跡がある所から一歩足を前に出すが、何も起こらない。

「何か条件があるのか?」

 そう思い、足で2回3回とタップするようにやってみる。
 下に落下するトラップでも起きるのかと思ったが、そう言う訳ではないようだ。

「そう簡単には行かないか」
「カリーナ、何処にいったんだよ。これじゃあ……」
「リュクス? これじゃあ、なんだ……え? リュクス? 何処いった?」

 壁際にいたリュクスが今の一瞬で消えてしまった。
 光が消えて真っ暗な状況になったが、さっきまでリュクスが居た場所は覚えていたので、そこに向かって歩き出した。

「確か、この辺だったよな」

 リュクスが今さっきまでいた壁際まで行き、もたれかかっていた壁のレンガを叩いていく。

「お、ここのレンガ押せるな」

 そのレンガを押してみると、壁が回るわけではなく。地面がクルッと回転した。
 いきなりのことで声が出ずに、そのまま落下していく。しかし、浮遊感はすぐに消えお尻から地面に落ちた。

「いってぇ」
「フォレス!!!」
「うぐぇっ!? ひ、久しぶりカリーナ」
「うん!! 久しぶり!!!」

 カリーナは数分の別れでも寂しかったようでギュッと抱きしめて来た。その先にはリュクスがジト目で見て来ている。

「フォレスも来たか」
「うん」

 落ちた先も遺跡のようで壁は肌色のレンガで出来ていて、地面にも砂が積もっている。

「何か見つけた?」
「うん。2人が来る前に少し調べたんだけど、後ろは壁。前に部屋が2つあるんだ。一つは宝箱が置いてあってもう一部屋には壁画が前面に描かれてたよ」
「成る程。それじゃ、先に宝箱の方行こうよ」
「気を付けろよ」
「罠でしょ? 分かってる」

 カリーナに案内してもらい宝箱の部屋に行くと、多目的ホールぐらいの大きさの部屋にポツンと一つ。銀色の宝箱が置いてあった。

「リュクスとカリーナのどっちか、罠解除のスキルとか持ってない?」

 2人に聞いてみるが2人とも首を横に振った。

「そっかー。それじゃ、罠は気をつけるしか無いな。2人とも罠発動するかも知れないから一応武器の準備と心の準備しておいて」
「「分かった」」

 魔力で剣と槍を作り背中合わせに構えた。僕は全身に魔力を纏い鎧のように変えた。

「それじゃ、開けるよ」

 宝箱を開けると。その中には古びた本が一冊入っていた。

「何これ?」

 罠の発動は無かったので、みんな武装を解除して宝箱の中身を覗きだした。

「見せてよ」
「私にも見せて」
「はい」

 2人に見せるとカリーナは知らないと首を振ったが、リュクスが知っているという事だ。

「それは、魔導書だと思う」
「魔導書? 何それ?」

 リュクスの説明で分かった事は、この魔導書はゴミだと言うことだ。
 昔、魔法を使う時は詠唱というものが必要で、それを覚えて唱えて魔法を発動する。それが昔の魔法だ。そして、魔導書はその詠唱を頭に強制的に焼き付けるための物だった。しかし、今は詠唱の必要が無いので、魔導書はゴミでしか無いのだ。

「まじか。いやまぁ、昔の遺跡だしな。しょうがないよな」
「うん。あ、でも、売ると高いよ」
「そうなの?」
「うん。魔導書の内容はゴミでも物自体が高価なんだよ。コレクションとしてだけどね」
「それじゃ、カリーナ。『収納』に入れておいて」
「はーい」

 実際のところ、お金は魔物を倒してその毛皮や肉を売ったら足りるので、これがゴミには変わりない。
 それをカリーナの『収納』に放り込んで、壁画のある部屋に向かった。
 壁画のある部屋に着くと、確かに前面に絵が描かれていたが、両サイドと出入り口の上にも壁画があった痕があった。

「って事は、後3つはこんな遺跡があるって事だよな」
「そうだね」
「それで、この壁画なんだけどフォレスとリュクスは分かる?」

 壁画の絵を解説すると、天から差し込む2本の光。光の先にいる男女とその前にいる羽の生えた人? これだけだった。

「うーん。あの男女が魔王と勇者で、男女の前にいる人が、神か、天使かだよね」
「神? 天使? 何それ?」
「俺も分からない」

 そうだ。俺は異世界に何を求めていた? 神? 地球にすら居るかも分からない、唯の偶像に過ぎないのに。異世界に夢を見過ぎていたかも知れない。
 これが、本当に神か天使かはそのうち分かる筈だ。

「ごめん。何でもない。2人はあれが何に見える?」
「さぁ?」
「ね。フォレスが分からないなら私たちには分からないよ」

 そこで、2人が本などを読んでいない事を思い出した。

「そっかー。それじゃ、この壁画を模写してからこの遺跡出るよ。2人は出口探しておいてよ」
「「分かった」」

 模写を終えた僕は2人と合流して地上に戻った。地上に戻る方法には驚いた。砂の滑り台を滑っていくと近くの木の中から出て来たのだ。
 魔法のある異世界なんだなと再認識した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...