上 下
32 / 39

魔力の解放

しおりを挟む
 亀の甲羅を背負ったクマ。略してカマは、こちら見ると、手足を引っ込め頭も引っ込め回転し始めた。

「あれは、受け止めるのは難しいね。ヒューは、地面を凍らせて!」
『任せなさい!』

 ヒューは地面に向けて氷のブレスを放った。地面が瞬く間に青く広がっていく。
 カマはこちらに突撃してきていた。が、止まることは叶わず、そのままずっと回っている。

「これで、目でも回してくれたらいいんだけどな」

 カレンの願いは簡単に破られた。カマが頭の穴から炎を出して氷を溶かしていく。あっという間にカマの周りの氷は溶けて回転は止まった。

「まるで、あれだな。海からやってきたでかい奴」

 カレンはなにかを思い出していたが、ヒューには分からなかった。

『それで、これからどうするの?』
「う~ん。どうしよう。あの回転を止めるのは至難の技だよ。ってか、今の私には止めることが出来ないよ」

 どうしようかと考えていたが、カマは待ってくれない。尻尾だけを出してまた甲羅に閉じこもり回転攻撃を仕掛けてきた。尻尾は鞭のようにしなり、ブンブン音を鳴らしている。
 カマはカレンに突っ込んでいく。それを剣で受け止めるが、勢いは殺すことが出来なかった。壁まで吹き飛ばされてしまった。

「グハァッ! はぁはぁ、いって~」
『カレン!? 大丈夫!!??』
「まぁ、なんとかね。はぁ、魔法が使えたらこんな奴一捻りなのにな~」

 カレンは物理攻撃しか今は使えない。魔法攻撃は未だ未熟のヒューのみ。流石に死ぬかもしれないと、カレンは生きる為の方法を考え出す。

「何か、何かないか? この状況を打破する方法。考えろ、考えろ。あるはずだよ」

 その後も、攻撃を受けては吹き飛ばされ、計五回もやられてしまった。

『カレン! もう逃げましょう! 強くなってからまたここに来たらいいじゃない!?』

 ここ最近|魔力(・・)も体力も飛ぶ力も急上昇したヒューがそう言った。

「魔力が急上昇? 確か、あのトリ公を食べた時だったよね。もしかして!!??」

 カレンは、自分の魔力を解き放った。
 すると、カレンの周りから風が発生し、竜巻となり、雷がバチバチと起き、そこはまさに、その島で二番目に危険な地域になった。カマも巻き込まれてしまった。

『ちょっと、カレン!』
「あ、ごめんごめん。もう終わるよ」

 そして、竜巻はどんどん小さくなり、そこに残ったのは、黒焦げになったカマといまだ魔力を放出しているカレンだった。

『か、カレン? なんか、変だよ?』
「ん? 変? 私が? 何言ってんのヒュー。私は普通だよ?」

 カレンがそう言うと、言葉の波がヒューを襲った。

『ひっ!? か、カレン? だよね。お願い、やめて......』

 カレンは、元の魔力に上乗せ、いや、掛け合わされ、数倍、数十倍に膨れ上がった。その魔力は今までカレンが抑え込んでいた。それが、今、解放された為、あんな現象が起きてしまった。
 そして、カレンが今使ってしまった言葉に魔力を乗せる技。これは、それを使う人の感情が物凄く影響される。怒りの感情を乗せれば相手を死にいたしめる。そんな魔法だ。今のカレンは、それを制御できていない。
 今までの魔力の使い方ではもう使えなくなってしまったのだ。きっと、カレンの出力の十分の一でやっと、宮廷魔術師と同じだろう。

「あ、ごめん。けど、制御出来ない見たい」

 カレンは、魔力を抑えてそう言った。

『あ、良かった~。あれの練習は私がいない所でやってほしいな』
「分かってるよ。じゃ、行こっか」

 そして、三つ目の部屋にカレンたちは入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界で黒猫君とマッタリ行きたい

こみあ
ファンタジー
始発電車で運命の恋が始まるかと思ったら、なぜか異世界に飛ばされました。 世界は甘くないし、状況は行き詰ってるし。自分自身も結構酷いことになってるんですけど。 それでも人生、生きてさえいればなんとかなる、らしい。 マッタリ行きたいのに行けない私と黒猫君の、ほぼ底辺からの異世界サバイバル・ライフ。 注)途中から黒猫君視点が増えます。 ----- 不定期更新中。 登場人物等はフッターから行けるブログページに収まっています。 100話程度、きりのいい場所ごとに「*」で始まるまとめ話を追加しました。 それではどうぞよろしくお願いいたします。

~前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚~

あおいろ
ファンタジー
 その少女の名前はサーラ。前世の記憶を持っている。    今から百年近くも昔の事だ。家族の様に親しい使用人達や子供達との、楽しい日々と美味しい料理の思い出だった。  月日は遥か遠く流れて過ぎさり、ー  現代も果てない困難が待ち受けるものの、ー  彼らの思い出の続きは、人知れずに紡がれていく。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

処理中です...