上 下
23 / 39

五十階層〜謎の声〜

しおりを挟む
 朝早くから、ギルドに来るのも久しぶりな気がする。

「おはようございます」
「あ、おはよう。シャル」
「今日はどうしました?」
「今日から、ダンジョンに泊りがけで攻略するつもりなので、それの報告です」
「……マジですか?」
「そうですけど?」
「……わかりました。では、行ってらっしゃい」
「はい。行ってきます」

 それからすぐに、ダンジョンの中に入った。
 そのころギルドマスター室では。

「それ、まじでいってる?」
「マジです。ギルドマスター」
「あいつは、なんてことを考えるんだよ……。ダンジョン内で野営するつもりだろうが、安全地帯なんてないに等しいダンジョン内で野営するなんてな」
「モンスタートラップを攻略したところなら、安全に野営できますが、そんなところできちんと寝れるとは思いませんが。大丈夫ですかね?」
「算段があっての野営なんだろうな。今回はあいつを信じることにするか」
「そうですね。カレンさんの無事を祈りましょう」

 そして、五十一層。

「さて、今日から三日で百層攻略するぞ~」

 今回の泊りがけのダンジョン攻略は、五十層~百層までの攻略をしようとしている。いつもは、十層を一日で攻略しているが、一日二十層を目標に攻略していくつもりだ。いつもの倍の速さで攻略していくことになるので、滅茶苦茶大変だ。だが、五十層から下は、すべての階層が入り組んでいる道になっているので、攻略自体は簡単だと思う。
 なので今は、全力疾走してダンジョン内を奔走している。カレンの道にいる奴らは、問答無用で切り伏せられている。

「おりゃ、でりゃ、おりゃ、せりゃ!!!」

 変な掛け声をしながら走っているカレンは、はたから見たら変な人だろう。
 そして今は、最初に会ったゴブリンよりも、二回りほど大きいゴブリン七体と対峙していた。

「またまたゴブリンさんですか。今回は、簡単にやられないでくださいね」

 カレンの言葉が分かったのか、杖を持ったゴブリンが、何か言葉を発しし始めた。

「あれは。魔法詠唱か。てことは、ゴブリンメイジと、剣を持ってるのは、ゴブリンソードか。ワクワクしてきたよ」

 ゴブリンメイジの詠唱が終わり、二体が火魔法「フレイム」、もう一体が風魔法「トルネード」を唱えて、火と風の合成魔法「|火炎竜巻(フレイムトルネード)」を放ってきた。前方にいたゴブリンセイバーは、それを、左右によけた。カレンは、刀を構え、六割程の力で振り下ろした。すると、ゴブリンメイジが放った魔法は掻き消された。それを見たゴブリンメイジは硬直していた。が、ゴブリンソードは目を見開いただけで、こちらに左右二体ずついる中で前から二体、後ろから二体、全方向から向かってくる。カレンはそれを7割ほど力を入れた足で、後ろに跳んだ。それをゴブリンセイバーは目で追うことはできなかった。カレンはその後も、ゴブリンが目で追うことができない速度で動き回り、ゴブリンソードの剣を片っ端から折っていった。自分の得物をなくしたゴブリンソードは、その後動くことはなかった。なので、ゴブリンメイジを簡単に倒すことができた。それも、さっきゴブリンメイジが放ってきた「|火炎竜巻(フレイムトルネード)」を打ち返した。あとは、ゴブリンソードを倒してこの戦いは幕を閉じた。

「案外時間かかったな。まだまだ修行不足かな」

 この後も、効率重視で戦っていたので、それといった戦いは行われずに、60層のボス部屋にはお昼前につくことができた。

「お昼は、ボスを倒してからでいいかな。今回は何のボスが出て来るかな」

 カレンがボス部屋の扉を開けると、そこには何もいなかった。いや、いるにはいるが、気配がつかみにくいところにいるのだ。そう、地中に。
 魔物が土魔法「ランドフォーム」を使って、カレンを攻撃し始めた。この魔法は、地面を自分の好きな形に突出させる魔法だ。今回は、針のような形をした土で攻撃を仕掛けてきた。カレンがその魔法を軽々とよけて、蹴り壊していった。

「そんな魔法は、魔力の強さで見抜けるんだよ!」

 もう、探知魔法と呼ぼう。
 探知魔法は、二話前にでできたもので、相手の気配をわかるが、それを突き詰めると相手の魔力も同時に見ているのだ。それを今回も使っているので、相手の魔法に注ぐ魔力の強さも見て、どんな魔法を使おうとしているのかが、カレンにはわかったのだ。

「次はこっちから行かせてもらうよ! 地中から出で来い!」

 カレンが地中に向かって放ったのは、雷魔法「ライジングショック」だ。この雷を受けると、魔法に注いだ魔力の量にもよるが、丸焦げになることがある。が、今回は地表に相手を出すためなので、そこまでの威力は出ないように調整はした。
 やはり、カレンの攻撃がちょうど良い力加減だったので、相手は地表に姿を現した。今回のボスは、砂漠の天敵ワームだ。
 だが、出てきたところ悪いが、カレンが刀を構え、待ち構えていた。

「ばいばい。てりゃ」

 カレンの可愛い掛け声とともに、ワームの頭と体は別れを告げた。

「ふー。終わったかな」『まだ!』
「え?」

 何か声が聞こえてワームのほうを向くと、顔を失ってもこちらに攻撃を仕掛けようとしていたワームが、そこにはいた。
 とっさに反応が間に合わず、氷魔法「ブリザード」を結構の威力で放ってしまい、ワームは氷漬けになってしまった。足止めをするつもりが、魔力制御を誤ってしまった。ブリザードは、俗にいう中級魔法で、範囲内に吹雪を吹かせる魔法だ。洞窟内や室内で使うと滅茶苦茶寒くなる。と、言うことでワームを完璧に多をした。

「にしても、さっきの声は何だったんだろう。お姉さんみたいな声が聞こえたけど。まぁ、気にしても今はしょうがないか」

 何気に切り替えが早いカレンだ。
 倒し終えたので階段の方まで行き、昨日作っておいた料理を食べることにした。今回は、サンドイッチを出して昼食にした。
 昼食を食べ終えたカレンは、下の階層に足を踏み入れた。
-----
 そのころ、あるところでは。

「あやつが、やられました」
「ほう、あいつがやられたか。モンスターを召喚していたやつだよな」
「はい。ですが、あの量の魔物を大量に倒すやつは、化け物です」
「ならば、次はどうするか」
「では、次は私にやらせてください」
「ほう、何か策があるのか?」
「はい。私にお任せください」
「ならば、任せるぞ」
「御意!」
-----
 また狙われているとも知らずに、カレンは意気揚々とダンジョンの攻略を続けていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢だったので、悪役になる覚悟ですが、王子様の溺愛が世界を破滅させてしまいそうです

葵川真衣
恋愛
公爵令嬢シャロンは王宮で婚約者の王子と過ごしていて、突如前世の記憶を思い出してしまう。 前世プレイしていた乙女ゲームの令嬢に転生している。しかも悪役だ。 初恋相手の婚約者には今後、無惨に婚約破棄される。 ショックで突っ伏したシャロンだが、ハッピーエンドを目指して国外追放され、平穏に暮らそうと決心。 他ルートなら暗殺される。世界滅亡の危機もある。国外追放は生きている……! 武闘派悪役令嬢シャロンは日々励む! しかしゲームに登場しない人物が現れたり、いろいろ様子がおかしい……!? シャロンは世界を救い、ゲームのハッピーエンドを無事迎えることができるのか……!? 将来に備えがんばる悪役令嬢と、そんな令嬢を溺愛する腹黒王子の甘々ラブコメディ。 ☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、追加予定です。

【完結】婚約破棄だと殿下が仰いますが、私が次期皇太子妃です。そこのところお間違いなきよう!

つくも茄子
恋愛
カロリーナは『皇太子妃』になると定められた少女であった。 そのため、日夜、辛く悲しい過酷な教育を施され、ついには『完璧な姫君』と謳われるまでになった。 ところが、ある日、婚約者であるヨーゼフ殿下に婚約破棄を宣言されてします。 ヨーゼフ殿下の傍らには綿菓子のような愛らしい少女と、背後に控える側近達。 彼らはカロリーナがヨーゼフ殿下が寵愛する少女を故意に虐めたとまで宣う。這いつくばって謝罪しろとまで言い放つ始末だ。 会場にいる帝国人は困惑を隠せずにおり、側近達の婚約者は慌てたように各家に報告に向かう。 どうやら、彼らは勘違いをしているよう。 カロリーナは、勘違いが過ぎるヨーゼフ殿下達に言う。 「ヨーゼフ殿下、貴男は皇帝にはなれません」 意味が分からず騒ぎ立てるヨーゼフ殿下達に、カロリーナは、複雑な皇位継承権の説明をすることになる。 帝国の子供でも知っている事実を、何故、成人間近の者達の説明をしなければならないのかと、辟易するカロリーナであった。 彼らは、御国許で説明を受けていないのかしら? 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

私はガチファンなので!!

itoma
恋愛
商人から成り上がったシュレフタ子爵家の次女、モニカには推しがいる。それは皇室騎士団の団長、ラドミール・クリスト。無口でクールなイケメンだった。 前世で日本の男性アイドルを推していたモニカは、異世界に転生してからも推しから日々の活力を貰っていた。 ある日、モニカは意図せず推しに認知されてしまう。 ガチファンとして一定の距離を保ちたいのに、何故かグイグイ来るラドミール。 なんだかんだ一緒に過ごすうちに彼のプライベートや意外な一面を知ることになり、モニカは彼にどんどん惹かれていった。 ……もちろん、ファンとして。 ガチファンだからと一線を引く子爵令嬢と、その一線を超えたい騎士団長のお話。

こんなとき何て言う?

遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー

光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。 誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。 私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。 えぇ?! 私、仙人になれるの?! 異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。 それなら、仙人になりまーす。 だって、その方が楽しそうじゃない? 辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。 ケセラセラだ。 私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。 まぁ、何とかなるよ。 貴方のこと、忘れたりしないから 一緒に、生きていこう。 表紙はAIによる作成です。

とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side

ぷっちょ
ファンタジー
5歳で前世の記憶を取り戻した『悪役令嬢』は、素直に破滅いたしません! 自分と、周囲の女の子たちを、守りきってみせます! ~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~ 拙作『とあるヒロインと悪役令嬢の顛末』の、悪役令嬢視点です。 皆さまに、少しでも楽しんで頂ければ幸いです^_^

ソーダの魔法〜ヘタレな溺愛初彼氏は炭酸飲んだら人格変わってドSになっちゃうやつでした〜

緒形 海
BL
真野深月(まの・みつき)20歳、最近自分がゲイであることを自覚し始めた大学生。 ある日のバイト帰り、深月は居酒屋ホールスタッフ仲間・篠原蒼太(しのはら・そうた)から突然の愛の告白を受けてしまう。 デカい図体に似合わず気弱で優しすぎるヘタレ気味な蒼太。はっきり言ってあまり好みのタイプではなく……考えた末、深月はお試しとして1週間の期間限定で交際okの返事をすることに。 ただ、実は…蒼太にはある秘密があった。 彼は炭酸の飲み物がめちゃくちゃ苦手で、一口でも飲んでしまうと人格がチェンジしてしまうという謎体質の持ち主だったのである…。 受け⚪︎真野 深月 まの みつき MM 攻め⚫︎篠原 蒼太 しのはら そうた SS 人格豹変もの&ソフトSMチックな話が書きたくて生まれた作品です。 R18指定。過激描写のシーンがあるエピソードには▽マークが入ります。背後にご注意くださいませ。 いろんな炭酸が出てくる予定…です。 ヘタレでドSでヤンデレ気味な溺愛攻めに愛されるといういろいろてんこもりのよくばりセット☺︎ハピエン保証♡

処理中です...