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サハリアへの旅
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「いきなり別パーティーと組んで、サハリアに戻るって言い出したと思ったら……」
「全く、ワケアリなパーティーじゃねえか。しかも、俺たちにまで不用意にバラしやがって!」
クリフとダズが、カタリーナに詰め寄っていった。
「すみません、義父がゴリ押ししたみたいで……」
「義父って……?」
「先代魔王様だ。あたしたちに拒否権は無いよ」
「「はあっ!!?」」
ダズとクリフが驚愕の表情で、レイを見た。
「このような状況で非常に言いにくいんですが……義父のことも含めて、内緒にしていただけるとありがたいです」
「ダズ、クリフ! バラしたら、先代魔王が敵にまわるからね。注意しな!」
「カタリーナ、なぜこの話を断らなかったんだ!」
「あたしに拒否権が無かったからだよ」
「もはやお願いじゃなくて、命令だったか……」
クリフが額に手を当て、小さく首を横に振った。
「ああ、悪い、悪い。あんたたちの状況は分かるよ。剣聖を血眼になって探してるドラゴニアから一時脱出して、ほとぼりが冷めるまでサハリアに避難するってことだろ?」
ダズが胸の前に両手を出して、落ち着け、とジェスチャーをした。
「そうです」
ルーファスが神妙な顔で頷いた。
「一度は頷いた依頼だ。サハリアへ連れて行ってやるよ。これでも冒険者だ。依頼人の秘密は漏らさないから安心しな」
ダズが頼もしげに、厚い胸を叩いて約束した。
「そうしてもらえると助かります」
「よろしくお願いします」
ルーファスはこくりと頷き、レイはぺこりとお辞儀をした。
「それじゃあ、ここに集まってくれ。国境の街まで転移する」
銀の不死鳥と鉄竜の鱗の一行は、クリフの転移魔術で、ドラゴニア国境の街へと向かった。
***
「ここはドラゴニアと隣国西ロムルを繋ぐ国境の街だ。関所があるから、そこを通って隣国に入る。そこまで行けば、ドラゴニア側は手が出せなくなる」
クリフが街の入り口に着くと、眼鏡をくいっと上げて、簡単に説明をしてくれた。
「関所を通るのは初めてです。何か必要な物はあるんですか?」
レイが小首を傾げて、メンバーを見上げた。
「冒険者なら、冒険者証と通行料があれば通れるぜ。俺たちがドラゴニアに入った時は、一人二百オーロだったな。子供は半額だったか?」
「それならあります。通れそうですね」
ダズが腕を組み、思い出すように斜め上を見上げて説明した。
レイは、これなら通れそうだと、ほっと胸を撫で下ろした。
「ほら、追手が来る前にさっさと通るよ」
「カタリーナ様、僕たち、悪いことはしてないですからね。その言い方はちょっと……」
カタリーナは早くも、関所の方へ向かってズンズンと歩き出していた。
ルーファスは、逸れないようにレイの手を取ると、彼女の後を追った。
***
国境域の街フロンテラは、ドラゴニアにある街だ。
関所を挟んで、非常に高い城壁が国境に沿うように、隣国との間に築かれている。
茶色の煉瓦積みと石畳の街並みは、セルバに近いせいか、よく雰囲気が似ている。ただし、こちらの方は国境の街で行商人が多いためか、セルバではあまり見かけないカラフルな異国の商品も取り扱っているようだ。
(……ちょっとこの街も見てまわりたかったけど、今回は無理かな……)
レイは、ルーファスに手を引かれながらも、ちらちらと街中を見回していた。
「レイ、残念だけど、今日は街を見てまわれないからね。ほら、もう関所が見えてきたよ」
「わぁ! 結構、並んでますね」
レイの落ち着かない様子に、ルーファスが苦笑しながら、よりしっかりと手を引いた。
煉瓦造りの城壁には、真ん中に大きな門が開かれていて、剣や槍を手に持った兵士が二名、その横に立っていた。
門の中には関所の役人が数名いて、そこで身分証の確認や通行料の支払いをしているようだ。
行商人や旅人が、大きな荷物や馬車ごと列をなして待っていた。
「結構、早く順番が来るからな。準備はしといた方がいいぞ」
「分かりました」
ダズに言われて、レイも空間収納から冒険者証と百オーロを取り出した。
「以前のご主人様たちと一緒に関所を通ったことはありましたが、こうやって身分証を提示したりするのは初めてです……少し、むずむず? そわそわ? しますね」
「レヴィの場合はそうだよね。確かに、何か悪いことしてるわけじゃないけど、身分証を確認されるのって、落ち着かないよね」
(レヴィがこんな感覚的なこと言うのは、はじめてかも?)
レイは、珍しく落ち着かないレヴィを不思議に思って、見上げた。あまり表情には現れないようで、ぱっと見はいつものレヴィだ。
「ほら、次は僕たちの番だよ」
ルーファスに言われて、レイは前の方に向き直った。ちょうど、カタリーナが役人に身分証を見せていた。
「……えっ、Sランクパーティー、鉄竜の鱗の傭兵女王!?」
「ああ、そうさ」
カタリーナの身分証を確認した役人が、驚きすぎて裏返った声を上げた。
「傭兵女王……初めて見たな」
「Sランクパーティーだって、すげぇ……」
関所に並んでいた人々も、ざわざわと噂するように小声で囁き合った。
「ルーファス、Sランクパーティーって、そんなにすごいんですか?」
「もちろん、すごいよ。Sランクパーティーは、世界中でも七パーティーしかないんだ。カタリーナ様の鉄竜の鱗は、バックにサハリア王国があるから、その中でも特に有名かな」
「……そうだったんですね。そんな有名な方たちと一緒に旅ができるんですね」
レイはこそこそとルーファスと小声でおしゃべりすると、改めてすごい人たちと一緒にいるんだな、と目を丸くした。
***
「「「「「いってらっしゃいませ!!」」」」」
関所の兵士と役人が揃って敬礼し、カタリーナたち鉄竜の鱗と一緒に、銀の不死鳥メンバーも丁重に見送られた。
「カタリーナ、いつもこんな感じなんですか?」
「ああ、王子殿下なダズがいるからな。よくあることだよ」
「……俺は、あんまりこういうのは好きじゃないな……」
カタリーナは慣れたもので、特に何とも思っていないようだ。常に堂々としていた。
ダズの方は、逆にうんざりとした表情だ。特別扱いは好まないようだ。
「国境を越えれば、もう追っては来ないだろうが、早めに次の街に移動するか」
クリフも慣れているようで、淡々と次の行動に移っていた。
(……新しい国。何があるんだろう……すっごく、楽しみ!)
レイは期待を胸に、新天地に第一歩を踏み出した。
「全く、ワケアリなパーティーじゃねえか。しかも、俺たちにまで不用意にバラしやがって!」
クリフとダズが、カタリーナに詰め寄っていった。
「すみません、義父がゴリ押ししたみたいで……」
「義父って……?」
「先代魔王様だ。あたしたちに拒否権は無いよ」
「「はあっ!!?」」
ダズとクリフが驚愕の表情で、レイを見た。
「このような状況で非常に言いにくいんですが……義父のことも含めて、内緒にしていただけるとありがたいです」
「ダズ、クリフ! バラしたら、先代魔王が敵にまわるからね。注意しな!」
「カタリーナ、なぜこの話を断らなかったんだ!」
「あたしに拒否権が無かったからだよ」
「もはやお願いじゃなくて、命令だったか……」
クリフが額に手を当て、小さく首を横に振った。
「ああ、悪い、悪い。あんたたちの状況は分かるよ。剣聖を血眼になって探してるドラゴニアから一時脱出して、ほとぼりが冷めるまでサハリアに避難するってことだろ?」
ダズが胸の前に両手を出して、落ち着け、とジェスチャーをした。
「そうです」
ルーファスが神妙な顔で頷いた。
「一度は頷いた依頼だ。サハリアへ連れて行ってやるよ。これでも冒険者だ。依頼人の秘密は漏らさないから安心しな」
ダズが頼もしげに、厚い胸を叩いて約束した。
「そうしてもらえると助かります」
「よろしくお願いします」
ルーファスはこくりと頷き、レイはぺこりとお辞儀をした。
「それじゃあ、ここに集まってくれ。国境の街まで転移する」
銀の不死鳥と鉄竜の鱗の一行は、クリフの転移魔術で、ドラゴニア国境の街へと向かった。
***
「ここはドラゴニアと隣国西ロムルを繋ぐ国境の街だ。関所があるから、そこを通って隣国に入る。そこまで行けば、ドラゴニア側は手が出せなくなる」
クリフが街の入り口に着くと、眼鏡をくいっと上げて、簡単に説明をしてくれた。
「関所を通るのは初めてです。何か必要な物はあるんですか?」
レイが小首を傾げて、メンバーを見上げた。
「冒険者なら、冒険者証と通行料があれば通れるぜ。俺たちがドラゴニアに入った時は、一人二百オーロだったな。子供は半額だったか?」
「それならあります。通れそうですね」
ダズが腕を組み、思い出すように斜め上を見上げて説明した。
レイは、これなら通れそうだと、ほっと胸を撫で下ろした。
「ほら、追手が来る前にさっさと通るよ」
「カタリーナ様、僕たち、悪いことはしてないですからね。その言い方はちょっと……」
カタリーナは早くも、関所の方へ向かってズンズンと歩き出していた。
ルーファスは、逸れないようにレイの手を取ると、彼女の後を追った。
***
国境域の街フロンテラは、ドラゴニアにある街だ。
関所を挟んで、非常に高い城壁が国境に沿うように、隣国との間に築かれている。
茶色の煉瓦積みと石畳の街並みは、セルバに近いせいか、よく雰囲気が似ている。ただし、こちらの方は国境の街で行商人が多いためか、セルバではあまり見かけないカラフルな異国の商品も取り扱っているようだ。
(……ちょっとこの街も見てまわりたかったけど、今回は無理かな……)
レイは、ルーファスに手を引かれながらも、ちらちらと街中を見回していた。
「レイ、残念だけど、今日は街を見てまわれないからね。ほら、もう関所が見えてきたよ」
「わぁ! 結構、並んでますね」
レイの落ち着かない様子に、ルーファスが苦笑しながら、よりしっかりと手を引いた。
煉瓦造りの城壁には、真ん中に大きな門が開かれていて、剣や槍を手に持った兵士が二名、その横に立っていた。
門の中には関所の役人が数名いて、そこで身分証の確認や通行料の支払いをしているようだ。
行商人や旅人が、大きな荷物や馬車ごと列をなして待っていた。
「結構、早く順番が来るからな。準備はしといた方がいいぞ」
「分かりました」
ダズに言われて、レイも空間収納から冒険者証と百オーロを取り出した。
「以前のご主人様たちと一緒に関所を通ったことはありましたが、こうやって身分証を提示したりするのは初めてです……少し、むずむず? そわそわ? しますね」
「レヴィの場合はそうだよね。確かに、何か悪いことしてるわけじゃないけど、身分証を確認されるのって、落ち着かないよね」
(レヴィがこんな感覚的なこと言うのは、はじめてかも?)
レイは、珍しく落ち着かないレヴィを不思議に思って、見上げた。あまり表情には現れないようで、ぱっと見はいつものレヴィだ。
「ほら、次は僕たちの番だよ」
ルーファスに言われて、レイは前の方に向き直った。ちょうど、カタリーナが役人に身分証を見せていた。
「……えっ、Sランクパーティー、鉄竜の鱗の傭兵女王!?」
「ああ、そうさ」
カタリーナの身分証を確認した役人が、驚きすぎて裏返った声を上げた。
「傭兵女王……初めて見たな」
「Sランクパーティーだって、すげぇ……」
関所に並んでいた人々も、ざわざわと噂するように小声で囁き合った。
「ルーファス、Sランクパーティーって、そんなにすごいんですか?」
「もちろん、すごいよ。Sランクパーティーは、世界中でも七パーティーしかないんだ。カタリーナ様の鉄竜の鱗は、バックにサハリア王国があるから、その中でも特に有名かな」
「……そうだったんですね。そんな有名な方たちと一緒に旅ができるんですね」
レイはこそこそとルーファスと小声でおしゃべりすると、改めてすごい人たちと一緒にいるんだな、と目を丸くした。
***
「「「「「いってらっしゃいませ!!」」」」」
関所の兵士と役人が揃って敬礼し、カタリーナたち鉄竜の鱗と一緒に、銀の不死鳥メンバーも丁重に見送られた。
「カタリーナ、いつもこんな感じなんですか?」
「ああ、王子殿下なダズがいるからな。よくあることだよ」
「……俺は、あんまりこういうのは好きじゃないな……」
カタリーナは慣れたもので、特に何とも思っていないようだ。常に堂々としていた。
ダズの方は、逆にうんざりとした表情だ。特別扱いは好まないようだ。
「国境を越えれば、もう追っては来ないだろうが、早めに次の街に移動するか」
クリフも慣れているようで、淡々と次の行動に移っていた。
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