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異世界転生
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俺は辻坂陽。サラリーマンだ。今の状況を簡単に説明する。
道路に飛び出した子供を助けたら、代わりにトラックに轢かれた。
気づいたら真っ白な雲の上。
俺の目の前には女神様がいる、っていう状況だ。
胸元がガッツリ開いた白いドレスを着た女神様だ。
ウェーブがかった長い金髪に、青い瞳。ぷっくりと厚めな唇に、口元には小さな黒子——あらゆるセクシーを詰め込んだ、ヴィーナスというか、モンローといった感じの女神様だ。
女神様が、ゴテ盛りネイルの人差しをピンッと上げて、説明を始めた。
「あなたは子供を助けて、身代わりに亡くなりました」
「あ、やっぱりそうなんですね」
「その慈愛溢れる清らかな心を見込んで、あなたにお願いがあります。私の世界で生まれ変わってもらいたいのです」
おっ。これが噂の異世界転生ですか? 俺TUEEEですか? 最強ものですか? チートはありますか? ハーレムは?
「ハーレムはありませんけど、チートはありますよ。最強は何を基準にするかで変わりますし、イキって俺TUEEEするかどうかはお任せします」
女神様は、にこやかに微笑まれた。
……こっちの考えがバレてるぅ! しかも、大人の対応で流されてるし!! めっちゃ恥ずかしいやつ!!!
俺は頬をひくつかせながら、女神様の話の続きを聴いた。
「代わりにあなたには、こちらの世界で出来うる限り高位の身分と最良のスキルを授けましょう」
「えっ? スキルは選べたり……」
「しません」
俺がどんなスキルをもらえるのかワクワクして尋ねると、女神様は笑顔でキッパリと却下した。
ゆ、夢がねぇ……!!!
「……それで俺は何をすれば? 何か目的はあるんですか?」
「目的ですか…………ダイジョーブ。流れに任せてくれれば」
女神様はにっこりと笑った。誤魔化すように甘い声で囁くように言う。
……なんか「大丈夫」が軽くね? 全然大丈夫じゃないんだけど!? 笑顔なんかじゃ騙されねぇぞ!!
「あなたなら私の目的にも合致しそうですし、何とかなるでしょう」
女神様は白い手を頬に寄せて、何やらサラッと呟いた。
「へ? だからその目的は? それに何とかって……」
俺がさらに尋ねようとすると、
「それでは、現世へ行ってらっしゃ~い!」
女神様がバイバイと小さく手を振ると、俺の下にあった雲がパッと消えた。
「ふざっけんなぁあぁあぁぁああ……!!!」
俺は下界に落とされながら、叫びまくった。
道路に飛び出した子供を助けたら、代わりにトラックに轢かれた。
気づいたら真っ白な雲の上。
俺の目の前には女神様がいる、っていう状況だ。
胸元がガッツリ開いた白いドレスを着た女神様だ。
ウェーブがかった長い金髪に、青い瞳。ぷっくりと厚めな唇に、口元には小さな黒子——あらゆるセクシーを詰め込んだ、ヴィーナスというか、モンローといった感じの女神様だ。
女神様が、ゴテ盛りネイルの人差しをピンッと上げて、説明を始めた。
「あなたは子供を助けて、身代わりに亡くなりました」
「あ、やっぱりそうなんですね」
「その慈愛溢れる清らかな心を見込んで、あなたにお願いがあります。私の世界で生まれ変わってもらいたいのです」
おっ。これが噂の異世界転生ですか? 俺TUEEEですか? 最強ものですか? チートはありますか? ハーレムは?
「ハーレムはありませんけど、チートはありますよ。最強は何を基準にするかで変わりますし、イキって俺TUEEEするかどうかはお任せします」
女神様は、にこやかに微笑まれた。
……こっちの考えがバレてるぅ! しかも、大人の対応で流されてるし!! めっちゃ恥ずかしいやつ!!!
俺は頬をひくつかせながら、女神様の話の続きを聴いた。
「代わりにあなたには、こちらの世界で出来うる限り高位の身分と最良のスキルを授けましょう」
「えっ? スキルは選べたり……」
「しません」
俺がどんなスキルをもらえるのかワクワクして尋ねると、女神様は笑顔でキッパリと却下した。
ゆ、夢がねぇ……!!!
「……それで俺は何をすれば? 何か目的はあるんですか?」
「目的ですか…………ダイジョーブ。流れに任せてくれれば」
女神様はにっこりと笑った。誤魔化すように甘い声で囁くように言う。
……なんか「大丈夫」が軽くね? 全然大丈夫じゃないんだけど!? 笑顔なんかじゃ騙されねぇぞ!!
「あなたなら私の目的にも合致しそうですし、何とかなるでしょう」
女神様は白い手を頬に寄せて、何やらサラッと呟いた。
「へ? だからその目的は? それに何とかって……」
俺がさらに尋ねようとすると、
「それでは、現世へ行ってらっしゃ~い!」
女神様がバイバイと小さく手を振ると、俺の下にあった雲がパッと消えた。
「ふざっけんなぁあぁあぁぁああ……!!!」
俺は下界に落とされながら、叫びまくった。
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